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第33話 領都に電波塔を建てたい

何か注目度ランキングに載ってたみたいですね。


なので記念に一話更新しておきます。

 ラジオ局を作る。それにはまず電波を送信するためのアンテナと、受信するための受信機が必要になる。


 テレビやラジオ、そういった離れた所に音や映像を送るのは高い電波塔から特定の周波数の電波に乗せて元情報を送り出し、受信側で変換して音を出したり、あるいは映像を映したりしている。


 そのため、まず第一に造るべきなのは、最も時間がかかるであろう電波塔だ。


 じゃあ、電波塔を作るとして最適な場所はどこなのか。それは、電波を届かせたい範囲によって変わってくる。


 たとえば村内だけに届けばいいなら、村の中心に小さな塔を建てれば十分だ。しかし、辺境伯領全体に電波を届けたい場合は、やはり中心地である領都が候補となる。


 辺境伯領全体で最も高い建物は領主城だ。

 領主城の高さは見た所、だいたい50メートル前後だろうか。これでもかなりの高さだが、その上、もともと少しだけ高地になっている場所に建てられているから、平地から見ると80メートルぐらいはあるかもしれない。


 問題は電波塔を建てる際、城よりも高くしてしまって良いのかどうかになる。


 街の景観的にも、やはり一番高い建物は真ん中にある方が見栄えが良い。今回造る電波塔は1つで広範囲をカバーしようと考えているので、100メートルは優に越してしまうだろう。そうなれば、領主城より高い建物ができてしまうため、領主様を始め街の住民にも反対されるかもしれない。


「ガッケノ、ちょっと領主様に相談したいことがあるんだけど、俺1人で会いに行くことって出来るかな?」


「それは難しいだろうな。正確には今のカイララでは難しいという意味だが」


「ああ、ダンゴか。あいつを連れて領主様に会う訳にはいかないもんな。だとすると、どうしたものか……」


 各地に小さな電波塔を建てるのは元々考えていたけど、だとしても領都に大きな電波塔を造るのは必須になる。領主様の許可が得られないと電波塔は建てられないし、そもそもこのラジオ自体が情報の伝達を早めるという点で領主様に許可を取らなければならないレベルの話だ。


 王都との兼ね合いや敵に技術が渡らないようにするための対策立てなど、領主様がいなければ話が進まないことは多い。


「ならば私から父上に話を通してみよう。その間、君は村で小規模な電波塔を建てて、実際にそのラジオを試してみたらどうだろうか?」


「うーん、まあそれしかないか」


「では決まりだな。君の提案だし早ければ来週には返事が届くと思う。そこで領都に行くことになったとしても、向こうも万全の準備は整えているだろう。その時は気にせず行くと良い」


「わかった。ところで、いい機会だからついでに聞きたいんだけど、ダンゴから何か情報引き出せたりしてるのか?」


「いや、今のところは全然だ。記憶も全く戻っている気配もない」


「そうか。まあ、どっちにしろ俺はあいつを贅沢漬けにしてやるだけだけどな」


 ダンゴの生活は、ハッキリ言って今の所この村の誰よりも良いと言えるかもしれない。毎日ダラダラと食っちゃ寝をして過ごしているし、テーマパークでは目いっぱい遊んでいる。子供達とも友達になったようで、ちょっとトランプを作って渡してみたら、オババの家に子供達が遊びに来ることもあった。もちろん俺も混ざったよ。俺も子供だし。


 今後はトレーディングカードゲームを作って広めたり、携帯ゲーム機を作って遊ばせたりして、さらに村から出られなくしていく予定だ。


 城からの帰り、遠くから久々に見る顔が近づいて来た。


 1年前から禿山に採掘に行って戻って来ていなかったマリーちゃんだ。マリーちゃんは禿山での穴掘りが楽し過ぎて、俺たちの制止も聞かず鉱山労働に勤しんでいたはず。もしかして、たまの里帰りだろうか?


「カイララ!」


「おお、マリーちゃん久しぶり。元気だった?」


「うん、元気。カイララも元気そうだね。相変わらず小さいし」


「一言余計だよ。それにしても君は、随分と大きくなったなぁ」


 マリーちゃんは1年前に見た時よりも背がかなり伸びていた。たぶん、20センチぐらい伸びているんじゃないだろうか。


 俺だってこの1年で10センチ伸びたのに、マリーちゃんはその倍だ。元々同じぐらいの身長だったのに、10センチ違えば目線がだいぶ変わってくる。


 ただ、マリーちゃんが変わっているのは身長だけじゃなかった。なにか見た目がガッチリしてきた印象を受けたのだ。


 見れば上半身はわかりづらいが足はハッキリと筋肉が浮き出ていて、ふくらはぎが少し盛り上がっている。


「ず、随分と頑張ったんだね」


「うん? ああ、筋肉? ぐっ! ほら、どうかな?」


 マリーちゃんが二の腕で力こぶを作って見せてくる。やっぱりこっちも凄い筋肉だ。とても9歳とは思えない。


「凄すぎる。まさに芸術的な筋肉だね」


 にしても、君は一体どこを目指しているんだ……?


「ふふん。頑張った!」


「それでマリーちゃん。今日はおじさんたちに顔を見せに帰ってきたの? すぐに山に戻っちゃう感じ?」


「違う。今日はカイララに会いにきた」


 「俺に?」 


 マリーちゃんが俺に会いに来るような用事があったかな?

 しばらく穴を掘るような事もなかったし、こっちらか連絡してないからこれからの予定だって分からないはずなんだけど。


 まさか遊びに来たってことかな?


「オババに聞いたんだけど、カイララ、オババ以外の女の人と暮らしてるって本当?」


「女の人? ……あー、もしかしてこいつのことかな? 駄猫のダンゴ。うん、一緒に住んでるよ。けど、こいつはオババと同じで女の人というか、世話しなきゃならないペットみたいなもんさ。確かに見た目だけでいえば女の人だけど」


「そう、本当なんだ……だったら、私も今日から一緒に住む」


「えっ? な、なに? どういうこと?」


「どいうことも何も、そのままだよ。オババには許可を取った。今日からよろしく」


 なっ、なんなんだ? 一体何が起きてるんだ?


 わからない。わからないけど、取り敢えず何故かマリーちゃんが一緒にオババの家に住むことになったらしい。オババが許可しているなら俺に拒否権は無いし、別に拒否する理由もないからいいけど、何でこうなったの?


 マリーちゃんは早速オババの家に行くというので、俺とダンゴはマリーちゃんの後を追う。そうして、家にたどり着いて中に入ると、途端にマリーちゃんはダンゴの体をまさぐりだした。


「にゃー!? やめるにゃ! くすぐったいにゃー!」


 俺はその姿が見ていられなくて、目を逸らした。別に〇ロかったからとかそんなんじゃない。ただ、マリーちゃんまでヤバいやつになってしまったという事実から目をそらしたかったんだ。


 マリーちゃんは一通りダンゴの体を触ったあと、一言だけ漏らした。


「これは危険」


 なにが?




 


 翌日、俺は本当にオババの家に泊まったマリーちゃんとダンゴと一緒にマリーちゃんの実家へと向かった。そして、ちょうど家に居たご両親に事の経緯を話したのだが、何故かマリーちゃんに帰って来いというのではなく、よくやったと言っていた。もう、どうなってるのか。俺わかんないよ。


 仕方がないので、そのままガッケノが言っていたように試作の電波塔づくりに向かう。材料は最近廃車になった旧型のバスから拝借した。


 駄猫はいつも通り団子を食って木陰でゴロゴロしているだけだし、マリーちゃんは穴は掘れてもそれ以外は並みだ。実質、凡人2人での作業になるので、大したものは造れないと察した俺は、結局かなり小規模な実験程度の物を作ることにした。


 3メートルぐらいの電波塔に送信用簡易アンテナを取り付け、アニメーション放送時に使用しているレコード盤を使って電波として送り出し、これまた簡易的に造った受信機で受信できるかどうか試してみる。


 結果はまあまあ成功かな。

 音質はかなり悪く雑音だらけだったが、5メートル離れた受信機からは、しっかりとレコードに刻まれた音楽が流れていた。


 ただ、これによって課題も見えてくる。それは、マイクとスピーカーの性能不足だ。これまで手作業で部品を作っていくには無理があるということで高性能なものはの制作は見送って簡素なものを使用してきたが、そろそろもう1段階か2段階グレードアップをする必要があるだろう。


 材料も禿山の採掘で大量に入手していることだし、暇な人を使って試作品を大量に作ってみるのもありかもしれない。


 領主様から返信が来るとしても最短で1週間はかかるという話だったし、その1週間のうちにどれだけマイクとスピーカーを改良できるか、そんなチャレンジをしてみるのも楽しそうだ。


「よし、やってみるか」


 俺はダンゴとマリーちゃんを連れて、テーマパークの掲示板へと求人の貼り紙をしに向かった。


 給料はひとまず日給1万円にしておくか。

 大人でも子供でも誰でも歓迎。

 期間はひとまず1週間っと。


 書けた。たくさん応募が来ると良いなぁ。


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