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第25話 発電施設を造ろう

 ドラゴンをペットにした。正確には協力関係のようなものだが、口臭が根本的に解決しない限り俺から離れられないのだからペットと言っても差し支えないだろう。


 禿山での鉱石採掘は順調だ。マリーちゃんに協力してもらって大量の岩を掘り起こしてみると、かなりの量の鉄鉱石が手に入った。それどころか、魔石も水と木の魔石以外は潤沢に採れて、結果は予想よりかなり良い。


 コンクリートの材料も、途中の森で入手することが出来たし、これでテーマパークの建設材料には困らないだろう。あとはあのバス狂い親父どもをうまく制御するだけだ。


「なあカイララ。我の口臭がこれで良くなっているって本当か? 我自身ではまったく実感が無いのだ」


「ああ、本当だよ。群生してたミントで作った大量の口臭カプセルを飲んだんだぞ。これで改善してなかったら嘘だよ。ガッケノに確認してみな。あいつは嘘つかないから正直な感想をくれるぞ」


「そうか! では行ってくる!」


「おー。城を壊すなよー」


 ドラゴンの事は村の皆にも話して容認してもらった。まあ、ガッケノが許可すれば村の人間は許さないことはないし、それにあのドラゴンの様子を見て危険とは思えないだろうしな。


 あいつ、俺以外の前でも病みモードを見せて、村の人たちに同情を誘いやがったんだ。しかも、俺がその問題を解決してくれるのだとキラキラした目で言うものだから、俺が関わっているなら仕方ないと何故か簡単に納得されていた。


 それで納得されると、まるで俺が問題児みたいじゃないか。

 まあ、騒ぎになって拒絶されるよりはずっと良いけど。


 それからドラゴンは名前をリクセンと名乗って、今はテーマパーク建設地の横に住んでもらってる。野ざらしも気分が悪いので、家は俺があいつの要望を聞いて建ててやった。


 今日はリクセンと出会ってちょうど1ヶ月の日だ。あいつには口臭ケアのミントカプセルが完成するまで大きなマスクで口を塞いでもらっていた。でも今しがたカプセルが完成して大量に飲ませたから、今日からはマスクなしで自由に空を飛び回れるだろう。


「まあ、ガッケノがOKを出せばだけど。……あいつの口臭、本当に大丈夫だよな?」


 俺はちょっと体調があれだったんで、口臭の確認はガッケノに丸投げしたんだよね。 


 うん……まあ、大丈夫っしょ。ガッケノならもし駄目でもいい感じに言ってくれるさ。




 さて、リクセンの事は置いておくとして、今一番大事なのはテーマパークのアトラクション制作だ。


 鉄とコンクリート、おまけに銅も大量に手に入ったおかげで観覧車もメリーゴーランドも形は完成した。けど、まだ一番大事な問題が1つ残っている。


 それは、アトラクションを動かすのに必要な電気が無いということ。


 当初は魔力を電気に変換して蓄電しておいて、その電力でアトラクションを動かそうと考えていた。


 だけど、それには雷属性の魔法を使用できる魔法使いが必要で、しかも変換効率はかなり悪い。もしこの方法でアトラクションを動かす電力を賄うなら、その魔法使いたちには毎日かなりの負担がかかってしまう。


 そもそも、態々魔力を電気に変換せずに、雷魔法を直接使えばいいじゃんと思うだろう? 俺もそう思った。


 それで実際にやってみて分かったんだけど、雷魔法って電圧の変動が大きいんだよ。だからあんなもんを使って蓄電しようものなら、最悪蓄電器が爆発なんて事もあり得るんだよね。それは流石に駄目でしょ。資源がもったいない。


 だから、雷魔法じゃなくて雷魔法を使える魔法使いの魔力を徐々に電気に変換していくしかない。


 って話だったんだけど。実はこの魔力から電気に変換する作業、この村での第一人者が俺なんだよね。俺が一番この村で雷魔法をうまく扱えるんだ。


 でも、俺だって暇じゃないし、他にやりたいことが沢山ある。だからなるべく別の方法で電気を作り出したいと思っていたんだけど、そんな時、禿山に向かう旅の途中で良いアイデアを思いついたんだ。


 それは、川の流れを利用した水車発電。


 ただ、あの川は水量はあるが流れは緩やかだから、多少工夫してやる必要がある。


 落差を意図的に作り出して、そこに水車を設置。水車が回る事で軸に取り付けた発電機構が電力を生み出す。というのが今のところ考えられる現実的な構造かな。


「問題は水か、そのまま川に流すのはちょいと作りが面倒になりそうだし、どうするかな」


 水と言えば、村で使っている水は現状、中央広場の井戸水か、村の外から持ってきた水の魔石で確保してる。水の魔石はそれなりに水を排出してくれるので現在の村の規模なら問題ないんだけど、今後の事を考えると井戸水と水の魔石だけというのは不安がある。


 発電に使った水をパイプで村に送れればいいんだけど、ちょっと距離が遠すぎるのが引っかかるんだよね。


「流石にマリーちゃんに川から村までの穴を掘ってもらうのはなぁ」

 

 マリーちゃんはスキルが進化して『穴掘り名人』になったけど、最近は鉱石採掘でも毎回作業してもらってるから、これまでやってもらったら流石に働かせ過ぎになる。


 本人は穴を掘ることが好きすぎてもっとやりたいと言うけど、いくら好きでもやり過ぎれば嫌になるものだ。


「使い終わった水の魔石に水を入れられたら、一番よかったのに」


 水の魔石はエンジンにも組み込むので、今後の需要拡大は必至。だから、使い終わったものに水を入れて再使用できれば一番良いんだけど、なぜかそれは出来ないらしい。


 こりゃあいずれ設計図で魔石についての本を作ってみる必要がありそうですな。


 「やっぱり、ちょっとこの件については、俺1人では判断できそうにないわ。仕方ない、一旦ガッケノやオババに相談して解決の糸口を探ってみるとしますか」




 ◆◇◆




 俺がテーマパークの方から城へと向かうと、城の外で何やら人だかりが出来ていた。


 何事かと思って走って近づいてみれば、中心に居たのはガッケノとドラゴンのリクセン。こいつら一体こんな所で何をやっているんだ?


「おーい、ガッケノ。こんな所で何やってんだ?」


「うん? カイララか、実はこれからリクセンが私を乗せて空を飛んでくれることになってな。皆も聞きつけてこうして見に来たのだ」


「何それ俺も空飛びたい! おいリクセン、何で俺より先にガッケノを乗せることになってんだよ。一応俺がお前の問題を解決に導いてやってるのにさあ」


「いや、我はお前が飛びたかったなんて聞いてないし。それに、ガッケノは私の口臭が爽やかな良い香りだと言ってくれたのだぞ! これは最大級の礼をせねばならないではないか!」


 そう言われると、ガッケノに口臭の確認を押し付けた負い目が出てくる。クッ、ここはガッケノに譲るしかないか。


「まあ待て。それならカイララも私と一緒に乗せてもらえばいいじゃないか。私以外にも護衛として騎士が2人乗る事になっている。あと1人子供が増えたところで、リクセンには何の問題もないだろう?」


「もちろん余裕だ。我はレッドドラゴンの中でも大型で力強いからな。あと10人だっていけるぞ」


「えっ! マジで!?」

 

 ひゃっほー! 異世界に来て初めての空の旅だ!



 それから俺たちは、村の皆に見守られながらリクセンの背に乗り込んだ。そして、リクセンが強く地面を蹴ったと思うと、大きく翼を羽ばたかせ、ぐんぐん空へと昇っていく。


「うおー! スゲー! 城がもうあんなにちっちゃいぞ!」


「確かに、これは凄い。思っていたよりも風が穏やかで気持ちが良い」


「そう言えば、こんな空の上に上がったのに風がないな。リクセン、お前何かしてんの?」


「当たり前だ。我はできるドラゴンだからな! 乗っている者が快適に空を楽しめるようにするぐらい、魔法で簡単にやってのけるのだ!」


 魔法か、ならこれは風魔法の応用とかかな? そう言えばドラゴンの使う魔法ってどんなのがあるんだろう? 後でリクセンに聞いてみるか。


「そう言えば、カイララはどうして城の方に来たのだ? 君はあまり野次馬に入ってくるタイプじゃないだろう?」


「あっ、そうだった! 俺、ちょっとガッケノとオババに相談したいことがあって……うん?」


 ガッケノに話している途中で、俺は一瞬見えた景色に疑問を抱いた。見えたのは川、たぶん俺が水車を作ろうと考えているあの川の上流だろう。


 川の先にある黒い壁みたいなのはなんなんだ?


「なあ、リクセン。ちょっと遠くて悪いんだけど、あの川を上流にたどっていった先の黒い壁みたいなものがある所まで行ってくれないか?」


「ふっ、我にかかればあの距離など遠い内に入らん。すぐに連れて行ってやる!」


 俺が言いかけたことを止めてリクセンに行き先を頼んだ事で、ガッケノが何かを察して聞いてくる。


「何か見つけたのか?」


「まだ分からない。けど、ちょっと嫌な予感がしたんだよね」


「そうか」


 ガッケノはそれ以上は何も言わなかった。

 そして十数分後、俺たちは巨大な黒い壁の様な何かの塊を越えた先で、驚きの光景を目撃することとなる。


 それは、低い山のカルデラに蓄えられた大量の水と、それをせき止めている明らかに何者かの手によって作られたであろう、巨木を編み込んだダムだった。

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