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第22話 スキル進化

 領都でバスを造って、アニメ上映会場の前に集まっていた路上生活者たちを村に連れて来た。


 勿論、100人以上の人をバスの移動1回で連れてくる事なんて不可能だから、最初の1回目以降は騎士の人に変わってもらって、俺は村に帰ってきた感じだ。


 しかし、バスの製造には本当に苦労した。スキルのおかげで製造はスムーズだったのだが、何かよく分からない連中があの手この手でうちの持っている情報を聞き出そうとしてくる。


 俺たちが協力してもらった大商会のピランティス商会の人たちには、サスペンションの技術を提供することになったから、あれ以上の情報を抜こうとしてくるとは思いたくないが、とはいえあの場所で俺たちが何かを造ってるってことがあっさりバレてたのが解せないんだよなぁ。


 あと、あの小隊長のおっちゃんの知り合いとかいう協力を約束してくれたおじさん。あの人なんか胡散臭いんだよ。雰囲気というか、話し方というか。


 まあ、あんな胡散臭そうな雰囲気出してることが逆に怪しくない気もするっちゃするけど……うーん、わからん。

 

 とにかく、色々と面倒事がありながらも、優秀な職人と潤沢な素材のおかげで、ある程度は動くバスが出来上がった。


 バスの外観はよくある長方形で、少し大きめにしたから最大乗車人数は40人ぐらい。

 

 車体が揺れないようにサスペンションを作って取り付け、モンスターから採れた油で油圧系統もバッチリだ。


 あとは肝心かなめのエンジンも造ったけど、これには少しばかり細工を施した。商会に雇われている職人の人たちは優秀だったし、作り方を全部覚えてるかもしれないけど、あの細工をしたうえで動かすところには立ち会わせなかったから、造れても簡単には動かせないだろう。


 いくら初期型で性能が低いバスだと言っても、すぐに真似されて数ヶ月後には普通に領都を走ってます何てなるのは御免だからね。


 ま、うちで造ったバスがもっと性能アップしたら、前のタイプの作り方とか動かし方は教えてやるさ。


 ああ、そう言えばバスの運転については、試乗の時と領都から帰る時のどっちも小隊長のおっちゃんに頼んだ。本当は俺が運転したかったんだけど、設計図で造ったから運転席の規格が大人用にしか出来なかったんだよね。


 だから、帰りの時の運転には結構冷や冷やさせられたよ。ハンドル操作も雑だし、アクセル全開に吹かすんだもんあの人。絶対、速い車とか乗せちゃダメなタイプだねありゃあ。


「さてと、ガッケノにハニートラップの警告もしたし、次は連れて来た人たちの寝床とか仕事を決めないとな」


 やる事はまだまだ山積みだ。今日も張り切って頑張りますか!





 ◆◇◆





 建設の材料が足りない。その問題に直面したのは、領都から帰って来て2か月後の事だった。


 森を切り開いて広大なスペースを確保し、必要な建物を建て終わった後、いよいよアトラクションを造っていくという段階で、コンクリートの材料と、鉄がかなり足りないことに気がついたのだ。


 正確には、元々あった分で足りる筈だったものが、他に使われて足りなくなったという具合だが、そこは計画性の無さを悔やむほかない。


 まさか連れて来た人たちの中にドワーフが混じってて、鍛冶屋のゴランさんと意気投合した挙句、バスづくりに熱を上げるなんて思わないって。


 前に俺が言った、エンジンへの細工ってやつ。あれは、エンジン内部でのスパークプラグへ送る電気を魔力を変換することで賄ってて、あの時点だと結構変換効率悪いし、デカいエンジンなのに空冷方式だけに頼ってるからすぐにオーバーヒートしそうになってた。


 あの時は時間も無かったし、その辺りの事も魔力で空気をなるべく冷気に変換するという荒業をやってたけど、正直あんなことはせめて俺ぐらいの魔力が無いと無理だった。


 だから俺はゴランさんとドワーフのゴスペルさんに、エンジンも含めたバス全体の改良を依頼したんだけど……加減ってものを知らないんだよあの人たち。


 次から次に試作品を作っては、ここが駄目だから次。あそこが上手く行ってないから次。もう少し速くなりそうだから次。次、次、次。


 そんな事やってたからあっという間に鉄がなくなった。おまけに耐久テストだとか言ってコンクリートの壁に突っ込ませるなんてこともやってたから、コンクリートの素材も底をつきかけてる。


「自重してくれよ、2人とも!」


「いやあ、すまんすまん。しかし困ったのう、鉄が無いんじゃあバスが造れんぞ」


「そうだなあ。まだ耐久試験も全然やり足りんし、カイララが言っていたコンクリートの道路も走らせてないし。何とか城主様に材料用意してもらえんもんか」


「無理に決まってんでしょ。材料だってお金出して買ってんだから。そんな予算はもう残ってないっての。というか、テーマパークの分の鉄まで使うんじゃないよ!」


 それに、お金があったとしても鉄には購入制限がかけられている。今の段階でうちの村で買える鉄の量はもうギリギリなのだ。買えてもあとバス1台ぶんもないだろう。


「どうしたもんかなぁ…‥」


 そう嘆いていたところで、後ろから声がかかった。


「だったら、自分たちで取りに行けばいいのではないか?」


「ガッケノ。自分たちでって、あの山にか? でも、あっちの方はまだゴブリンの時の調査をしてるんじゃ」


「いつの話をしているんだ。そんなもの、とっくに終わっているぞ。結局ゴブリンキングの死体も見つからなかったし、ゴブリンたちがどこから来たのかも、そもそも分からなかったらしいがな」


「なんだそれ。じゃあ調査は打ち切られたってこと?」


「そういうことだ。だから、あの禿山に行くならもういつでも構わないぞ」


 城の展望台から見えたあの禿山。俺の見立てではあそこは絶対色んな素材が眠ってる。鉄なんてもうわんさかあるに違いないよ。たぶん。


 よし、それじゃあ準備して行きますか。


「って、そうじゃん! もう鉄が無いから採掘道具作れないじゃんか!?」


 鉄鉱石を採ろうにも、ピッケルがなきゃ硬い岩を掘れない。前に石垣を岩から切り出したときの道具はまだ残ってはいるけど長くはもたないだろうし、これじゃあ頑張って山にたどり着いても何も出来ないぞ。


「それなら、壊れたバスから鉄を取って作ればいいんじゃいのか?」


「いや、それがこのおっさん2人が無茶苦茶やったせいで鉄の品質がすごく悪くなってて再利用は出来そうにないんだ。耐水性のテストだとか言って水もぶっかけてたし……」


「錆びだらけというわけか」


 マジでどうしよう。今から買える分の鉄を買って来てそいつで作るか? 

 

 いや、鉄が届くまで時間がかかり過ぎる。それに今までの爆買いのせいで審査が厳しくなってるから、思ってるよりずっと遅く届くことになるかもしれない。そんなの待ってたら、テーマパークの完成が数ヶ月も遅れてしまう。


 アニメ上映が上手くいってテーマパークの建設も順調だったから、もうオープンする時期の宣伝をしてしまった。だから数ヶ月も遅らせることは出来ないんだ。


 マジで恨むぞおっさんたち!?


「あー! もうどうしよう! どうすりゃいいんだ!」


「カイララ!」


「ん? ああ、マリーちゃんか。どうかした?」


「カイララ、困ってるみたいだったから声かけた。穴掘りなら私、やれる!」


「あー、ありがとう。だけど、今度は土じゃなくて岩を掘らなきゃならないんだ。いくら穴掘りが得意なマリーちゃんでも、それはちょっと無理だよ」


 厳しいけど、家庭菜園スキルの穴掘りでは土しか掘れないのはわかりきっている。もしかしたら、マリーちゃんはこれで落ち込んじゃうかもしれないけど、こういう事はハッキリ言ってあげないと……って、あれ? マリーちゃん全然落ち込んでる様子じゃないぞ?


「大丈夫。私のスキル、進化した!」


「えっ?」


「『家庭菜園』から進化して『穴掘り名人』になった! これなら、硬い岩でも余裕。むふん」


「はあッ!?」


 マジかよ!?


 普通のなら下級から中級に上がるのに40年くらいかかるんだよ? それが俺のスキルの影響で早くなったとしても、あなたまだ8歳ですよね?


 流石にスキル進化早すぎだろ!?

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