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第2話 この村について

俺が住むこの村は、人口100人程度の小さな村だ。

 

 村の名前はよくよくしっかり聞いたら『開拓村』というらしい。なんじゃそりゃ。村の名前付けるのテキトーすぎでしょ。


 村は柵で囲まれていて周りはほぼ森。唯一の道も整備が行き届いていないからか、あんまり平らじゃない。


 俺の見立てでは多分どこかの国の辺境にある、森の中の開拓村と言ったところだろう。


 入り口から村に入ると中央に馬車がやっと通れるぐらいの広さの通りがあって、中心にはちょっとした広場、そして通りと広場を囲むように家が幾つか建っている。そして広場の中には共用の井戸。


 外観はどうみてもRPGとかでありきたりな“THE・村”だな。


 父さんに聞いたところ、うちの村では狩りを生業とする人がほとんどで、次に木こり、農家、鍛冶屋、薬師の順に少なくなっていくとか。


 特に薬師は魔法使いのオババ一人だから、次の薬師が現れるのを毎年期待してるんだと。


 今年の子供たちの中からも薬師関係のスキル持ってた子は居ないみたいだし、これからどうすんのかねぇ。

 

 てか、オババ魔法使いなんだからスキル関係ないじゃん。オババが弟子をとれば済む話じゃね?


 とまあ、そんな感じだから村の住人はどこもそんなに良い暮らしはしてない。


 村長ぐらいは良い暮らししてて欲しかったけど、ちょっと大きいだけでボロが目立つ家だからなぁ。やっぱり貧乏なんだろう。


「あーあ。やっぱり詰んでるよ、この村じゃさぁ」


「何か言った? カイララ?」


「あ、いや何も言ってないよ母さん。美味しいお野菜ができると良いね」


「そうねぇ。小さな家庭菜園だけど、うちでは貴重なお野菜だもの。頑張らなくちゃ。カイララもお手伝いありがとうね」


「うん」


 自己紹介がまだだったな。俺の名前は『カイララ』。『カイル』でも『カイラ』でもなく、『カイララ』だ。


 変な名前だろ? けどまあ滅茶苦茶おかしい名前でもないし、呼びづらい事もないからいいけどね。


 さて、いま俺は母さんのお手伝いとして家庭菜園の土いじりをしている。土を柔らかくして夏に向けて野菜を植える準備中だ。


 6歳になって初めてお手伝いらしいことをさせてもらえているわけだけど、ここでまさかの事実が見つかった。


 木の板だ。土を掘るのに木の板を使ってやがる。


 嘘だろ、なんだこれ? と、その板を手にしたまま戦慄したのは言うまでもないだろう。

 木の板って、スコップすらこの村にはないのか?


 おかげでいちいち掘った土を手で移動させなきゃならなくて、手がボロボロだ。母さんの手を見てりゃ分かる。これはいかん。


(こんな事毎日続けてられねぇ)


 そう思った俺はその日の夜、父さんに太めの木の棒をいくつか持って帰ってくれるよう頼んだ。


 結果は了承。俺のスキルが設計図という事も知っているから「何か作るのか?」と笑顔でOKされた。


 しかも、おまけに明後日はそんなに忙しくないとかで、兄ちゃんが手伝ってくれるらしい。これは有り難い。


 翌日、父さんは約束どおり太めの木の棒をいくつか持ってきてくれた。そしてさらに次の日、俺と兄ちゃんは庭の一角で作業を始める。作るのはもちろん『スコップ』だ。


 まずこの父さんの腕より二回りぐらい大きい木の棒をスコップっぽい形に整形していきたいんだけど、俺にはナイフを使う権限がない。(使ったら怒られる)


 だからここは狩人見習いとして既に活躍している兄ちゃんが代わりにやってくれる事になった。


「兄ちゃん、こんな感じにしたいんだけど出来る?」


「んー、どれどれ。お、これなら出来るぞ。何となくしっかりした完成形まで頭に浮かんだ。これもカイララのスキルの影響か?」


「そうなのかな? うーん、分かんないけどそうだったら嬉しいな」


 地面に石で形を描いてみただけでそこまでしっかりした形は伝えられてないから、ある程度出来上がったら何回か修正が必要かなと思っていたのだが、どうやらスキルの影響で指示を出した相手の頭に正確な形とやり方まで浮かぶようになるらしい。


 おかげで夕方になる前に設計図通りの完璧な木のスコップ(小)が3本も出来上がった。


「あ、頭の中でハッキリしてたスコップの作り方が消えた。やっぱスキルの効果だったのか。それで、カイララ。これ何に使うんだ?」


 おや、作り方は分かっても使い方は分からないのか。


「うん、これはねこうやって土を掘るのに使うんだ。今は木の板でほぐした土を手で捨ててるけど、これがあれば母さんも少しは楽になると思うよ」


「そうなのか。良かった。母さんに見せたら喜ぶかな?」


「もちろんだよ。後で一緒に母さんに見せよう、マルス兄ちゃん」


「おう!」


 その日の晩、綺麗に洗ったスコップを両親に見せて使い方を説明すると、俺たちは両親に褒め倒された。


 兄ちゃんは褒められたのがめちゃくちゃ嬉しかったようで、また今度作りたいものがあったら俺を手伝ってくれると言ってくれた。


 翌日、俺と兄ちゃんと母さんの三人で家庭菜園での作業をしてみたら、その効果をみた母さんに俺たち2人はまた褒められた。


「凄いわこれ。お陰で『家庭菜園』のスキルレベルが2も上がっちゃった」


「え、スキルレベル!? な、何それ!?」


「あれ、カイララに言ってなかったっけ? スキルにはレベルがあるんだよ」


 な、何だって!?


 そんな重要な事、もっと早くに言っといてよ兄ちゃん!?


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