第1話 俺のスキルは設計図
転生した。そのことに気づいたのは母親の乳を吸っている時のことだった。
俺はトラックに轢かれて死んだ。
マジでこんな事あるのかよというのが最後に思った事だった。
ただ青信号の横断歩道を渡っていただけだ。それで居眠りのトラックにぶっ飛ばされた。
で、目が覚めたと思ったら病院のベッドじゃなくてこれだった。
しかし、転生なんて本当にあるんだな。
もしかしてこれは異世界転生というやつなのだろうか? それともまた元の地球?
目が見えない今のままではまだわからない。しばらくはおとなしくベイビーに徹するとしよう。
一ヶ月後、目が見えるようになった。
そのおかげで分かったのは、ここは間違いなく日本ではないと言う事だ。
まずうちの両親、両方とも金髪で彫りの深い顔をしていた。これだけではまだ日本の可能性はあるけど、流石に現代日本でこんなボロい小屋みたいな家に住んでるなんてことはないだろう。ベッドのシーツもいたる所に縫った跡があって薄汚れている。
じゃあどこか別の国かと両親の会話から聞き取ろうとした。しかしまあこれがまた訳のわからない聞いたこともない言葉で、聞き取るどころか頭痛がしてくる始末。
取り敢えずは、この言語を習得することに全力を注がなければならないだろう。
一年が経ち、言語については辿々しくはあるものの少し話せるぐらいにはなった。
そのおかげでここがどこなのか分かった。『村』だそうだ。
いや、村ってどこの村だよと言う話だが、この村について両親からは『村』としか聞き取れなかった。
もしかしてヨーロッパのかなり山奥にある田舎の村とか? 疑問は尽きないが、まだ外に出ることは許されていない。せめて3歳ぐらいにならないと駄目なんだと。
今日は2歳年上の兄が家の中で遊んでくれるらしい。これが中々体力を使う遊びで、この体の成長に良い影響を与えてくれている。
兄は弟の俺を可愛がってくれて、俺はそんな兄に目一杯甘えてる。
俺が両親よりも兄にべったりで、両親の愛情もしっかり兄と俺に分散してる。これが前世で学んだ幼児期に兄弟仲良くする秘訣だ。
三歳になった。俺は母と一緒の時だけ少しのあいだ外に出ることを許された。
そして、この外出でついにこの世界が元の世界なのか異世界なのかの判断がついた。
太陽が二つあったのだ。
異世界キターッ!
異世界と言えば魔法。剣術なんかを練習している年上の子供たちもいて、この世界が本当に異世界だと実感させてくれる。だが、やっぱり俺は魔法を使いたい!
魔法を使う人は今のところ見た事はないけど。多分いるはずだ。
もしかして、父や母も見せてくれないだけで魔法が使えたりしないだろうか? そう思って聞いてみたら、スキルが魔法向きじゃなかったから使えないわ。だとさ。
スキルってなんだ……?
皆で夕食を食べている時に父に聞いてみたら、俺にはまだ早いから5歳になったら教えてやると言われた。
俺はまだ退屈な時間を過ごさなければならないらしい。
と思いきや、兄がその後こっそり教えてくれた。
ありがとう兄ちゃん!
兄によるとスキルは皆が生まれた時から体に宿っていて、6歳になると使うことを神様に許されるのだそうだ。
なるほどなるほど、スキルはすでに俺の中にあったのか。
しかし神様め、勿体ぶりやがる。俺がスキルを使える様になるのにあと3年もあるじゃないか!
くそっ、魔力とかあれば小さいうちからこっそり使って将来最強ムーブが出来たのに。
今のところ俺には自分の中に流れる不思議パワーなんか感じることができない。てか、魔力なんてあるのかよ。
仕方ない、明日からちょくちょく両親にスキルについて教えてもらえるようおねだりしてみるか。お手伝いとかすればワンチャンあるかも知れない。
ついに5歳になった!
3歳のあの時から2年、お手伝いとおねだりに屈しなかった両親は頭が硬いのかスルースキルが高いのか。その頑固さには感心するね。
しかし、ついに俺はスキルについて教えてもらえる。兄ちゃんのスキルは狩人とか言うスキルでそれについては詳しくなったけど、その他のスキルについて何にも分からないのは結構もどかしかったのだ。
さあ、教えてくれ父母よ!
特に魔法系スキルについて詳しく!
……ふーん、なるほど。魔法系は平民からは中々現れないレアで、この村で持つものは100歳のオババだけなのか。
しかも家系によってどんなスキルが出やすいとかもあると。
うちは父さんが『狩人』で、母さんが『家庭菜園』というスキルを持っているらしい。
じゃあ俺もそっち系ってこと?
えー、やだぁ。
神様お願いします。会ったことはないけど、チートスキルをくれてますように!
そして6歳、ついに俺は自分のスキルの詳細を知り、使用する許可も貰えた。
それで、何が出たかって?
『設計図』だってさ。
はぁー、おわた。
……と思ったけど、ちょっと待てよ。これって。
スキルを使うと現れるクソでかい半透明の設計図の本。それをパラパラとめくり、あるページで手を止める。
「う、うおおおお! 戦闘機の設計図まであるやんけ! うっひょー! チート万歳! チート万歳! チート万歳!」
ん? 製造に必要な施設?
兵器製造工場(大)×2?
何これ? じゃあこれはどうやって。
防音素材、鋼鉄、超高性能パソコン、セメント、特殊合金、発電所?
は? 無理じゃん。
この村、木の枝ぐらいしかないんですが。