24 番外編 ライマーの畑
「おう! ライマー。今日も精が出るな!」
「マット! ……でも、やっぱりルリアーナ様がいた頃より植物たちが元気がなくて……」
「ルリアーナ様は聖女様だぞ!? そんな特別な力をお持ちの方と自分を比べるな。俺から見ると、ライマーはしっかり植物たちの世話をしているように見えるぞ。毎日仕事終わりに水をやって、草を抜いて……。俺には真似できねー。すぐに飽きちまう」
「ははは! マットくらい面倒くさがりだったらそうかもしれない!」
マットに励まされたライマーが思わずお腹を抱えて笑うと、それに釣られたように植物たちも風に揺れた。
「ほれみろ。こいつらもライマーにありがとうって言ってるぞ。ライマーが笑顔でいることがこいつらにとって一番の栄養なんじゃないのか?」
「……確かに、お師匠様もルリアーナ様もいつもニコニコして植物たちに接していました!」
「それでも元気が出なかったら、ミイアに聞いといてやるよ。ルリアーナ様おすすめの肥料の作り方をな」
「そういえば、一緒に暮らしているんでしたっけ?」
「……、なんで知っている?!」
「メイドたちが噂していましたよ。聖女ルリアーナ様の覚えがめでたくて、当主様にも一目置かれているから狙ってたのに、って」
「……子供に変なこと聞かせやがって」
「子供って。マット、俺も彼女くらいいるんだけど?」
「!? お前、今いくつだ!?」
「今年で十四だ!」
「お前……もう十四なのか? この間まで子供だったのに……」
衝撃のあまり動けなくなったマットに、ライマーは付け加えた。
「マット。早くミイアにプロポーズしてあげないと可哀想だよ」
「……うっせぇ!」
「確かに、聖女ルリアーナ様のお気に入りの侍女ミイアに、ただの門兵のマットがプロポーズってハードルが高いか。じゃあ、この間当主様に推薦されてた、執事の登用試験、受けてみたら? ルリアーナ様に会う機会もできるかもしれないし、ミイアに相応しい男になれるよ?」
首を傾げるライマーに、頭をがしがしと掻いているマットが、床に座り込んで言った。
「……俺にそんな難しいことできると思うか?」
「……できるできないじゃなくて、挑戦するかしないかじゃない?」
飄々とそう言ったライマーに、マットが舌打ちをする。
「くっそ。他人事だと思って無茶言いやがって」
「……私も受ける予定ですけど? 今の彼女、上級メイド見習いだから。相応しい男になりたいからね」
口調を整えて執事らしい言葉を使ったライマーにマットが驚いた瞬間、ライマーはいつも通りの話し方に戻した。
「まだ練習中だけど、マットと一緒に練習できたら、心強いな」
「……俺もやってやる。ミイアとルリアーナ様のためだ。お前のためじゃねぇからな!?」
「わかってますよ、マットさん」
笑ったライマーはそう言って、雑草をぶちりと抜いた。
「では、ライバル同士、執事の座を目指して頑張りましょうね?」
何歩も先をいっていそうなライマーの言葉に、気合いを入れるために顔を叩いたマットも立ち上がり、雑草抜きを手伝うのだった。




