23 番外編 お茶会
「ルリアーナ。シャンディーアリス殿下はとても優秀で素晴らしいお方なの。だけれども、唯一の問題点があってね……想いを寄せた男性に対しての行動が、その、少し激しくて……。もしも、あのクソ男がルリアーナに婚約破棄を叩きつけてきたら、その時がチャンスよ。今のうちにシャンディーアリス殿下にあの男を売り込むの!」
「しかし、シャンディーアリス殿下に申し訳ありませんわ……」
ルリアーナがそう言うと、マルシュアが優しく笑っていった。
「シャンディーアリス殿下は顔が良くて性格の悪い男……そう、あのクソ男みたいな男がタイプなのよ。ルリアーナはなにも考えずに、あの男に言われた言葉をシャンディーアリス殿下にお伝えすればいいの」
「王国の光たる、シャンディーアリス殿下にお会いする名誉を授けていただき、ありがたく存じます」
「よいよい。今日はそなたの婚約者についての話を聞きたいと思ってきたのじゃ。詳しく話せ」
事前にマルシュアからルリアーナの婚約者についての相談と聞かされていたシャンディーアリス王女は、ルリアーナに説明するように言った。
「そもそものきっかけは、ダンテ伯爵家から婚約打診がきたことが始まりでした。断ることもできず、顔合わせに行った先で……」
「ほう」
ルリアーナの話を聞けば聞くほど、シャンディーアリス王女の瞳は輝いた。
「ダンテ伯爵令息がそのような男とは……見逃しておったわい。顔は好みだと思っていつも見ておったのにのぅ……」
ため息を吐いたシャンディーアリス王女に、ルリアーナは心配そうにいった。
「わたくしが婚約破棄される流れはアストライオス様が説明してくれて把握しておりますが、その、よろしいのでしょうか? 他の女性に想いを抱いている男性と結婚して、シャンディーアリス王女は幸せになれますでしょうか?」
心配そうに揺れるルリアーナの瞳を見て、シャンディーアリス王女はにったりと笑っていった。
「心配するでない。他に想う者がいる男は壊れにくくてちょうど良い。それに、先ほどルリアーナに習って簡単な治癒魔法を習得したからのぅ。一安心じゃ」
「壊れ……? 治癒魔法では、シャンディーアリス王女の傷ついた心を癒すことはできません」
「心配するでない。妾は問題ないのじゃ。これで伯爵家がうるさく言うこともなく、あんなにも美しいシジャールをかわいがることができるのぅ。あれほど顔のいい男に労働を科すなどもったいないからのぅ」
にまりと笑ったシャンディーアリス王女に首を傾げたルリアーナは、王女が満足げな表情を浮かべているのを見て、安心したのだった。
「心の傷に効果があるかわかりませんが、わたくしの作った薬草でお薬も作ることができました。ご入用ですか?」
「もちろんじゃ! 大量に納めておくのじゃ! 金はもちろん払うぞ。ピンパール、契約書を作ってはよ持ってまいれ!!」
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