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婚約破棄された弱小令嬢の仕返し  作者: 碧井 汐桜香


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「ライマー、大丈夫?」


「ルリアーナ様! 俺のせいで、俺のせいで、ぐず、ごめんなさい!」


 マットに連れられたライマーが顔を曇らせて謝りに来た。


「いいのよ。ただ、ここはダンテ伯爵家であなたは使用人。フィラルディーア様に逆らうことはやめた方がいいわ。わたくしも貴族だけれど、末端の末端なの。今回はフィラルディーア様があなたから興味を失ったからよかったけれど、あなたを庇いきれないわ」


「ぐず、本当にごめんなさい」


「でも、大切なお師匠様の畑を荒らされて悲しかったのね。その気持ちは大切にしていいと思うの。そんなときは、お師匠様があなたが傷つくことを喜ぶか考えなさい」


「う、ぐず、はい……」


 ルリアーナの手がライマーの頭を優しく撫でる。ライマーのふわっとした毛が撫でられるたびにくすぐったそうに動く。それに合わせたかのようにルリアーナの手から小さな光る粉が優しく降り注いだのだった。







⭐︎⭐︎⭐︎

 それからルリアーナは、フィラルディーアによって食事を抜かれるだけでなく、定期的に畑を荒らされたり、本邸に近づくと頭上から汚水をかけられるようになった。


「あんまりです、ルリアーナ様!」


「これでフィラルディーア様の気が済むなら、仕方ないわ」


「でも!」


 ミイアとマットがそう話していると、ルリアーナは笑って着替えに向かった。フィラルディーアから受けた暴行の怪我が落ち着いてきたため、久しぶりに登校する予定なのだ。すると、ドアが控えめに何度かノックされ、人目を忍んだ執事が現れた。


「これ、食べ物ないんだって聞いたから……」


「え、あの、」


 ミイアが執事の手に持った麻袋を思わず受け取り、声をかけようとすると、執事はすぐに後ろを向いて駆け出した。


「あら、ミイア。どなたかいらしたの?」


「ルリアーナ様。執事が……」


「あら。美味しそうなお野菜にソーセージ。それにふかふかのパンまで!」


 ルリアーナは嬉しそうに袋を覗くが、ミイアは心配そうに言った。


「これ、毒とか下剤とか入ってないですよね?」


「……変な臭いはしないわよ? 心配なら、今日わたくしがマルシュア様に、毒入りか見分ける方法を聞いてくるわ。高位貴族の方はそういう教育も受けていらっしゃるだろうから」


 それまで取っておいてね、と笑って小屋を出たルリアーナは、すぐに戻ってくることになったのだった。一着しかない制服なのに、泥水をかけられたのだ。登校しないのか聞きにきた執事に、フィラルディーアとシジャールに先に行ってもらうように伝え、仕方なく普段着に着替えた。


「これで行くわけにはいかないわよね?」


 悲しげに服を見下ろすルリアーナに、ミイアが口を開いた。


「学校のどこかで予備の制服を借りられないでしょうか? 以前、次期当主様が学校で服を汚した時に、借りていらした制服を洗ったことがある気がします」


「……そういえば、救護室で制服を貸そうかと聞かれたことがあるわ。ミイアには仕事を増やして申し訳ないけれど、汚れた制服を洗ってもらっていいかしら?」


「もちろんです。綺麗にしておきますから」


「マット。執事さんを……」


「馬車の準備はできているから、ルリアーナ様はこっちから」


 執事がドアを開けてそう言った。いつの間にか準備していてくれたらしい。


「ありがとうございます」


 ルリアーナが笑ってそう言うと、執事は困ったように後ろを向いて頭を掻いて言った。


「……はやくいきますよ」


 道中、何人かのメイドはルリアーナを睨みつけていたが、一部の使用人たちは同情したような目を向けて、たまに隠れて差し入れを持ってきてくれる人も増えたのだった。





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