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「お祖父様!!お父様!!!」
ユルベールの声が跪かされた国王とその隣の第二王子に聞こえたのか彼等は此方を向いて。
そして可愛い孫娘が、我が子が、"これから起こること"に恐怖を抱かないように満面の笑みで笑いかけたのだ。
その瞬間。
ザシュッと音を立てて、身体から首が離れ地に落ちた。
その衝撃的な出来事に、ユールベルは"いやぁぁぁ!!"と大きな悲鳴をあげて暴れた。
子供特有の甲高い叫び声が癇に障ったのか、アルタロッサ公爵は舌打ちをして、そばにいた騎士の剣を取り上げてそして。
ザシュッ。
ユールベルの首を戸惑いなく跳ねたのだ。
コロコロと地を転がった小さな首。その光景に、マデリアの頭は真っ白になった。
マデリアだけでなくその場にいた女性陣全員の思考が停止したであろう。
一番最初に正気に戻ったのは、ユルベールの母親である第二王子妃のレイシェルだった。
目の前で義父と夫と娘を殺された彼女は、狂気じみた奇声をあげながらアルタロッサ公爵めがけて突撃した。
アルタロッサ公爵は、そんな彼女も煩わしげに首を跳ねたのだ。
「レイシェル様!!!」
いやだ。何で、こんな事に。
皆、マデリアにとっては大切な人だった。
むしろ、この"セルバス王国"で大切じゃない人などいない。
それくらい、温かいこの国が大好きだった。
「············続けろ」
アルタロッサ公爵の声に周りの騎士達連れてきた男性人の中から、皇太子の息子と第三皇子を跪かせて。
躊躇もなく首を跳ねる。
そして、次に跪かされたのは-----------。
「··········ベルナード······」
第二王子の秘書、ベルナード·ウィンドガルム伯爵。マデリアの夫だ。
彼はマデリアをじっと見据えて、そしてニッコリと満面の笑みを浮かべる。
そして。
『愛してる』
その瞬間、ベルナードの首が宙を舞う。
"愛してる"。口を動かしただけだが、確かにそう言った。
ベルナードは、よくマデリアにそうやって愛を囁いていたから。声を聞かなくても口の動きでわかる。