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『はじめまして。キミがマデリア嬢だね』
セルバス王国国王は、柔らかな優しい笑みでその身一つで王国にやってきたマデリアを迎え入れてくれた。
とても思慮深く、広い視野を持ち、それでいて何処までも国民の事を思ってくれている"賢王"と呼ぶに相応しい方だった。
マデリアをセルバスに送ってくれた王妃とは、友人らしく。セルバス国王と亡き王妃との仲を取り持ってくれたのも、彼女なのだそうだ。
『キミの話は聞いているよ。大変だったね。
ここではキミは自由だ。キミはキミの好きなように過ごしなさい。』
その時の国王の温かい言葉は十年たった今でも忘れてはいない。
マデリアは"世話になりっぱなしではならない。"と、早々に働くことを決意し、悩んだ末、王宮に奉仕する侍女になった。
数年後、第二王子のもとに王女·ユルベールが生まれ、マデリアは彼女の専属侍女に選ばれる。
そして、第二王子に仕えていた公爵家の次男と婚姻を結んだ。
子供にも恵まれ、優しい夫とそして敬愛する国王やユルベール王女に囲まれながら、この十年幸せに暮らしていた。
暮らしていたのだった。