33・仲間達との愛しい日々
「せいっ!」
森の中にて。ライラはリュミエールで魔獣を浄化してゆく。
最初は魔獣のことを少し怖いと思っていたライラだが、最近ではもうすっかり浄化にも慣れ、光の剣の持ち主らしくなってきた。ただでさえ光の加護で能力向上しているうえ、レベルアップによって更なる力を得て、今では「英雄」と呼ばれるのに相応しい強さを誇っている。
(……私は運よくリュミエールに選ばれただけで、英雄なんて呼ばれ方は過分だと、最初は思っていたけど)
だがライラは既に、火の魔王と水の魔王を討った――四属性の魔王のうち、二体を倒したのだ。それが英雄ではなくてなんだというのだろう。
リリアナから、傀儡化されていた人々を解放した後。行方不明になっていた人々をエルゼンヌへ連れ帰ると、家族の人達は涙を流して喜んだ。ジャック君もステラちゃんも、父親の無事を笑顔で喜んで。エマさんも、夫との再会に温かな涙を浮かべたのだった。エルゼンヌでは大きな宴が開かれ、ライラは人々から称えられた。傀儡化されていた人々も、まるで女神を拝むかのような目でライラを見ていた。
「ライラ様、私達が生きて家族のもとへ戻れたのは、全てあなた様のおかげです」
「我々を救っていただき、誠にありがとうございます!」
以前の――フレッグと結婚していた頃のライラには、自信がなかった。
自分の力だけで生きてゆくなどできないだろうと思っていたし、フレッグや義両親によって、そう思わされていたのだ。たとえ理不尽でも、耐えてゆかねばならないのだ、と。
そして英雄と呼ばれるようになった、少し前までのライラは、不安だった。自分は誰かのためになれているのだろうか、と。光の剣を使えるといったって、それはリュミエールの力であって「私」の力ではないんじゃないか、と――
……だけど、今は。
「ライラ様、お食事ができましたよ! 本日は俺が作りました」
そう呼びに来て、笑顔を浮かべてくれたのは、アランズだ。今夜も野営だが、テーブルの上には、今日狩ったばかりの魔獣が美味しそうに料理され綺麗に並べられていた。
「ありがとうございます。わあ、美味しそうですね」
「ライラ様に食べていただくものですから。腕によりをかけて作りました」
「ふふ。なんだかアランズと話していると、自分がすごい人間になったような気がします」
「ライラ様は、すごい御方ですよ。……俺を正してくださった御方ですから」
「え?」
アランズはふと真剣な表情を浮かべ、口を開く。
「以前の俺は、王国騎士団第三部隊の隊長ということで、驕っていたのだと思います。初対面の、光の剣の所有者であるあなたに、無礼な口をきくほど。……ライラ様はそんな俺を倒し、仲間にしてくださいました。共に旅をして、一緒の時間を過ごすほど、ライラ様は、強いだけでなく誰より心優しい御方なのだと身に染みて。以前の自分は間違っていたのだと……真の英雄とは、あなたのような人のことなのだと、はっきりわかりました」
アランズはまっすぐにライラを見て、微笑みを浮かべる。
「今の俺があるのは、あなたのおかげです。ありがとうございます、ライラ様」
「アランズ……。私こそ、お礼を言わせてください。そりゃあ、初対面のときのあなたには、びっくりしましたが。今のあなたは、いつも私に敬意をもって接してくれて、笑顔を向けてくれて。あなたが仲間でいてくれて、嬉しいです」
ライラとアランズが、笑顔を交わしていると。ぱたぱたと小さな翼を羽ばたかせ、マレディクシオが飛んできた。
「なんだよ、二人ばっかり仲良しな感じで! オレだって、ライラのこと大好きだぞ!」
「ありがとうございます。私も、マレちゃんのこと大好きですよ」
「へへ。アランズだけじゃなくてさ。オレだって、今があるのは、ライラのおかげなんだ。苦しんでいたオレを、ライラが救ってくれて、仲間にしてくれた。オレ、ライラと出会えてなかったら、今頃どーなってたかわかんないぜ!」
そう言ってマレディクシオはライラの肩にとまり、すりすりと頬ずりする。まるでライオンのぬいぐるみのようなマレちゃんにすりすりされると、もふもふがとても気持ちよくて、思わずライラの顔がとろけた。
(ああ……私、幸せだなあ)
夫や義両親に罵られていた頃とは、比べ物にならない。
ライラは何者にも縛られず、自由に生きる喜びを知ったのだ――
読んでくださってありがとうございます!
次回で最終回なので、★★★★★をいただけるとめちゃくちゃ嬉しいです!




