格付けの時間でございますわ!!
実力伯仲。お互いがお互いに、打倒するチャンスとリスクを天秤に掛けた読み合いが続く。
一旦相手を押し込みつつも、状況はほとんど五分。双方一度攻撃をヒットさせればそのまま倒しきれる状態である以上、迂闊な行動を取れずにじりじりとした中距離戦が続いていた。
(中々隙を見せませんわね、こうなればこちらから何か起こしたいところではありますが……)
相手の行動に合わせつつ前後にせわしなく動いている自分のキャラを、一瞬足を止めさせる。
殆ど次の瞬間には、合わせたように相手も動きを止めた。
(し~っかりこっちの動きを見てますわね、何かやればカウンターを合わせるつもりで待ちの姿勢ですわね……!)
待ちは格ゲーにおいてかなり強い手段だ。相手が触りに来たりほかの手段を取ってから的確な返しができれば、ほとんど決着を付けることのできるダメージを叩き出せる。
こういう時に有効な手は……
思考を止めないまま、僅かに相手のキャラクターへ近寄る。相手はその分だけ、半歩程下がった。
作戦通り……!
ニヤリと、お嬢様らしからぬ笑顔を浮かべて有利に立ったことを確信する。
待ちは強力な分、相手との距離を必要とする。相手から距離があれば、その分だけ自分にとって有利に働くからだ。
(つまり、こちらが前へ進めば進んだだけ、あちらは後ろに下がらざるを得ませんわ!そして格ゲーにおいて後ろに下がり続けるということは、壁端という最悪のポジションに押し込まれることを意味しますの……っ!)
少しづつ距離を詰め、その分だけ下がる。数回繰り返したあたりで相手がその意図に気づいたようだが、もう十分に壁に近づいていた。技を出さないままに圧を掛け続け、精神的に後ろへ無理やり追い込んでいく。
(……壁端、着ましたわね!ここまでくればこちらが有利、更に前に詰めつつ相手から行動を起こさせられますわ!)
壁端に追い詰められた側としては、なにがなんでも脱出したいところだ。壁がある分些細な技から手痛いコンボを食らうこともあるし、なにより相手にとって有利な射程を常に維持されてしまうという点がかなりきつい。
ここから脱出する手段は二つ、相手を投げることで逆に壁端を押し付けるか……
(来ましたわね!前飛びッ!)
瞬間的に対空を選択し、相手を壁に押し付けながらコンボを続ける。
3割ほど会ったHPは瞬く間に減っていき、コンボ完走の最後の大技で完全に0になった。
(っしゃぁ!やってやりましたわよ!!私の勝ちですわぁ~~~!!!)
会心の笑顔で両手を上げる。格ゲーでは(滅多にない引き分けを除き)必ず決着が着き、勝者と敗者が決定する、そこが格ゲーの良いところですわね!
同格を相手に、そのやり取りを勝ち抜けた快感は、富士山を登り切った感動に匹敵しますわ!
壁端:押し込まれれば地獄、押し込めば天国のエリア端。見えない壁が存在しており、相手を壁に押し付けて下がれないようにできる分だけ圧倒的な有利を実現できる。
前飛び:文字通り前へジャンプする事。相手の上を超えて壁端から脱出したり、攪乱して有利に立ち回りたいときなどに使われる。