対戦開始ぃ!ですわ!!
わたくしと同じ金髪に赤衣装のカラーをピックし、読み込みが終わる。
(うげっ!重量キャラですの……!?)
対面のキャラを確認して、最初の言葉はそれだった。
こちらは胴着キャラ……基本に忠実な、大体のことができるのがわたくしのキャラクターであり、わたくし自身の強みを最も発揮できる選択ですわ。ハイスタンダートこそが最良の選択肢であると考えるわたくしにとって、対面のアマネ様のキャラは少々……いや、かなり嫌な相手と言わざるを得ませんわね……。
ROUND ONE! Fight!
一般的に、重量級キャラは胴着キャラクターに対して不利を背負う部分が多いですわ。しかし、強みである近距離戦に持ち込んだときの爆発力は、そりゃあもうイカれてるとしか言いようがない程。
下がりつつ弾で出方を伺うと決め、一瞬下がりつつ弾を
その瞬間、わたくしの脳裏に|飛びを通されフルコンボから壁端《最悪の光景》が!
辛うじて出かかっていたコマンドを止め、その予想通りに飛び上がったお相手のキャラに辛うじて対空を決める。
(っぶね~~~~~!!今のはマジでヤバかったですわ!!!)
冷や汗を流しつつも、再びお相手の出方を伺いますわ。
今度こそ距離が離れ、安全に弾を撃てるようになったところから弾撃ちを続けますわ。
お相手も考えながら弾を飛んでいるらしく、なかなか派手な動きを見せて来ませんわね……。
この状況の硬直は、こちらにとって有利。
そんな思考の隙間を縫うように、次の飛びで弾撃ちを咎められる距離まで近寄られる。
―――動いたッ!
相手のキャラクターの動きに合わせて、対空の準備を……!?
(飛んでない、しゃがんだだけのフェイク!?しまった、最初の飛びがよぎって釣られましたわ……!!)
そんな思考の中で、対空の硬直をしっかりと咎められて自キャラのHPが半分近く吹き飛ぶ。
相手のキャラは序盤の対空と弾で削れているとはいえ、八割近くHPが残っている。
(~~~してやられましたわ!最初のこれ見よがしな飛びは、こちらへの誘導ということですわね……!)
最初の最初に危険な可能性を見せられては、それ以外の選択を咄嗟に取れなくなってしまう。完全に誘発させられたミスだ。
再び距離は離れたものの、安全に弾を撃てる距離ではない。格ゲーにおいて差し合いと呼ばれる、お互いに射程が長い技をどちらが当てるかというターンとなっている。
しかし、この部分では胴着キャラの強みが生きる。スタンダードとは、相手より得意な部分が多いという点において、試合時間の多くで有利を取りやすいという意味でもある。
(……得意分野においては協力な性能を発揮する、キャラクターもそうですが、プレイヤー自身も近いタイプのようですわね)
ここでの動きを見る限り、この距離での行動は苦手のようだ。
相手の大ぶりの技に差し返し、一気にダメージを奪う。
(……壁端まで運べればこちらが有利ですが、最初のやり取りで押され過ぎましたわね
ダメージ重視のコンボで行きましょう、多少押し返せれば十分ですわ)
相手の体力を四割ほどまで削り、中央よりやや相手側へ押し込む。これで、状況で言えばこちらの方が有利……。
(……しかし、半分程度しかない体力ではかなり不安ですわね。痛いコンボを食らえばそのままやられかねませんわ)
これが火力のある重量級キャラの怖いところだ。ダメージの高いコンボを受けた場合、半分程度のHPでは保険にならない可能性がある。
(さて、もう一つきっかけが欲しいところですわね……)
重量キャラ:デカいキャラクターの呼称。大体が癖がありつつも火力があるキャラクターになっている。
弾で出方を伺う:マッチの最初に弾(遠距離攻撃)を撃ち、相手の動きを見る。ただし飛び(前へジャンプすること)に弱く、じゃんけんの不利な関係と言える。
対空:ジャンプへの対処。基本は上へ判定の強い技で相手を落とすことを指す。
弾撃ちを咎められる距離:ジャンプ一回で攻撃が届く距離。
差し合い:ちょっと射程の長い技を相手に当てることを狙うシーン。ガードされると不利になることも多いため、慎重な行動が要求される。
壁端:格ゲーにおける重要な要素の一つ。2Dのフィールドは両側に端があり、それ以上後ろへ行くことができない。つまり、相手の攻撃を受ける機会が増えるということで、必然的にダメージを貰いやすくなる。相手を押し込めば有利、押し込まれれば不利。
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