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VOICE  作者: coriko
6/8

06.変質者

3時間ほどカラオケで過ごし、

まだ17時だったけど、危ないからと先輩たちが家まで送ってくれた。



また学校で、と言い別れたはずが

次の日からは、先輩たちに会うことはなかった。

ただ、先輩たちが体育でバスケをしていてかっこよかった、教室のドアを開けてくれた、等の情報だけは入ってくる。



そして、1週間も経てばクラスでもそれぞれグループみたいなのが出来上がった。

私は基本美香と一緒にいるが、クラスの女子たちとも普通に喋る。それは美香も同じ。中学の時みたいなことにはしない。男子たちは話しかけて来た時は喋るけど、必要最低限ってくらいにしてる。





今日も授業が終わり、美香に声をかける。

「やっと終わったね。帰ろっ」


「そうだね」


バッグを持ち教室を出る。


「やっぱり先輩たちとは会わないね」


「うん……まあ1年と3年で、教室も遠いしね」


「だよね……」


なんとなく先輩たちの話題になる。


別に会いたいわけじゃないけど……


なんか、モヤモヤする……


「亜希?どした?」


「……ううん。なんでもない。


あ!今日お姉ちゃん彼氏のところに泊まるらしくて1人なんだけど、家くる?」


「行く行く!じゃあコンビニでデザート買って帰ろうよ」


「いいね〜」



今更だけど、私の両親は研究職でほぼ家にいない。

ご飯とか洗濯とかはいつもお姉ちゃんがしてくれていた。お姉ちゃんは中学生のときから付き合ってる彼氏がいるけど、私のために時間を使ってくれていたから、私が中学3年生になった頃には、たまには彼氏のところに行っていいんだよって言った。私のことが心配だからと渋っていたけど、何とか説得し今では週末は彼氏の家に泊まりに行っている。

だからここ1年くらいは、美香が土日に泊まりに来てくれるようになった。


今日も美香が泊まりに来てくれたので、昨日作ったカレーを2人で食べる。


「あ、これお母さんから。デザートにケーキ持ってきたよ」


「わ!凄い!ありがとう!」


「さっきコンビニで買ったプリンもあるしね」


「だね!夜更かししていっぱい食べよう」


カレーを食べながら学校の話をして盛り上がる。お風呂に入って、ケーキとプリンを食べた。


深夜1時になり、

「やばい、炭酸飲みたくなってきた」


「わかる。甘いもの続いたもんね。でももう時間も遅いしどうしよっか」


「ん〜、まあ2人だし大丈夫じゃない?サッと行ってこようよ」


「そうだね。じゃあ早く行こっか」



私たちは部屋着のスウェットのまま歩いて5分のコンビニへ向かった。


「暗いと思ったけど、街灯が多いし思ったより明るいね」


「だねぇ。あ、ついたよ。


……あ、」



サクッと買って帰ろうとしていたがコンビニの前にヤンキーっぽい見た目の人たちが数人いる。



「なんか入りにくいね……」


「うん……

向こうのコンビニにする?すぐだし……」


「ん、そうしよ……」


ここから少し歩いたところにもう1ヶ所コンビニがあるのでそっちに行くことにした。


「なんかこっち側って街灯少ないね……」


「うん、暗いし早歩きで行こうっ」


「そうしよっ」


なんとなく、2人ピタッとくっつきながら歩いた。



ペタペタ……


「………」


ガサッ


「………ね」


「……うん?」


「……なんか後ろからずっと足音聞こえない?」



美香の言葉にハッとする。


ペタ……



「……ほんとだ。」


「ね、もうコンビニ見えたし走ろうよ」


「うん」


2人でせーのっで走り出した。

気づいた瞬間すごく怖くなって

コンビニまでのダッシュは新記録が出たと思う。


ハァハァッ


~~♪~


息切れしながらもコンビニに入る。

入店時の音楽と店の明るさで少し恐怖心が安らいだ。


「……ね、……っついてきてるっ?」


「っいや、わかんないっ。走るのに精一杯で……」


ドキドキしながら振り返ろうとすると、肩をトントンされた。


「ねぇ」


ビクッとなり勢いよく振り返る。


「っあ……」


そこにいたのは変質者なんかじゃなく、同じ学校の


「亜輝……せんぱい……」


「翔先輩も……」


2人の姿を見て私と美香は安堵した。


「どうした?」


「え?なになに?2人とも?」


私たちは変質者がいたかもしれないということを話した。



「……なるほどね。俺らはコンビニに向かって走る2人を見つけて追いかけてきたけど、変なやつは見なかったよ。なあ、亜輝?」


「あぁ」


「とりあえず、帰りは送るよ。何買いに来たの?」


「あ、飲み物を……すぐ買ってくるので待っててください!」


私たちは飲みたかった炭酸を買い、すぐに戻った。

その間、先輩たちは何か話ししていたようだけど、私は気づかなかった。






*******






飲みたかった炭酸ジュースと、家まで送ってくれる先輩用に飲み物を買った。



「亜輝先輩、これ飲み物買ったんでどうぞ」


「……ありがとう」


無表情で受け取る先輩。


翔先輩には美香が飲み物を渡している。

翔先輩はいつも通りにこやかだ。


亜輝先輩、もしかして怒ってる……?

確かに、こんな夜中に送るって……めんどくさいよね。


「あの、先輩。今日も送ってもらうことになっちゃって……すみませんでした……」

申し訳なくなって謝る。


すると亜輝先輩は、

「……亜希ちゃん」


「え?」

なんか、いつもより声が低い

やっぱり怒って……


「亜希ちゃん」


「は、はい」


「夜10時をすぎたら、家を出ない方がいいよ」


「え?」


「よく張り出されてるでしょ?最近は変質者が多いから気をつけてって。もし何かあったらどうする?暗い場所に引き込まれたら?相手が刃物を持っていたら?」


「……」


「女の子2人でなんて危険すぎる」


「次からは気をつけます。反省してます……」


街灯もあるから大丈夫なんて思っていたけど、かなり危ないことしてたんだ……先輩を怒らせちゃったし、どうしよう……



「……はぁ、もしどうしても夜中に外へ行く時は俺を呼んで」


「……え?」


「わかった?」


「……あ、は、はい」


先輩、真剣な顔……

心配してくれてたんだ……


『俺を呼んで』なんて、優しすぎる……



「……き?……あき?」


「え?」


もんもんと考えている間に、いつの間にか家に着いていた。


「亜希、大丈夫?ついたよ?」


と美香の声で気づいた。



「先輩。本当にありがとうございました!」


私たちはお辞儀をしながらお礼を言う。


2人は、じゃあまたと言って来た道を帰って行った。



家の中に入り、美香と見つめ合う……


「帰り……先輩たちが送ってくれて良かったね」


「うん。向こう側のコンビニの周りって思ったよりも暗いし、夜は行かない方がいいね」


「あ、そういえばさっき、夜中にどこか行くなら俺を呼んでって亜輝先輩が……」


「え、うそ……。私も同じこと翔先輩に言われた」


まさかの翔先輩も!?

あの2人どれだけ優しいの!?


「先輩たち、優しすぎない?」


「たしかに」


「顔もあれだけかっこよくてさ、性格も優しいとか、完璧じゃん」


「モテるはずだね」


「だねぇ」


はははっと笑いながら先輩たちの話をする私たち。

私は亜輝先輩、美香は翔先輩の話ばっかりになっていた。




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