05.気づき
eternalにつき、少し待てば直ぐにお店に入れた。
4人で座りいつも通りオムライスを頼む。
美香はいつものペペロンチーノ。ピリ辛さが好きらしい。
亜輝先輩もオムライスを頼んでいる。
ほんとにオムライス好きなんだ……
翔先輩は……
「あれ?翔先輩もペペロンチーノですか?」
「うん。来る時に美香ちゃんにオススメって聞いたからね」
へ〜。なんか2人仲良くなってる?
それぞれ料理が届き、最初に翔先輩がペペロンチーノを食べた。
「ほんとだ。美香ちゃんの言う通り美味いね」
「でしょ?ここはパスタが1番なんだもの」
と2人が言うのに対し、
「え〜、オムライスだよ〜。ね?亜輝先輩」
オムライスを推すために亜輝先輩に同意を求める。
「うん。俺もオムライスかな」
ペペロンチーノ派対オムライス派みたいになって、なんやかんや楽しく喋りながら食べた。
昨日会ったばかりだけど、先輩たち面白いなー。かっこいいだけじゃなかった。
1時間程たち、
「そろそろ店出ようか」
と亜輝先輩の声かけで、会計に進む。
奢ってくれると言ってくれたけど
むしろこっちが昨日のお礼しなくちゃいけない立場なのに、申し訳なくて断った。
これからどうしよっか?と美香と相談する。
特に予定もないけど、先輩たちはもう帰るのかな?
「2人は何か予定あるの?」
と翔先輩から聞かれ、
「特にないですよ」
「私もないです」
私と美香はそれぞれ答える。
「じゃあ一緒にカラオケでもいく?亜輝と行く予定だったんだけど」
カラオケかー。私たちはあまり歌わないから普段行かないんだけど、どうしよう?
「どうする?美香。いく?」
美香に視線を向ける。
「まあ、予定もないしね。行こっか」
「そうだねっ!」
美香が珍しく行く気だ。
まあ私たちが歌わなくても聞いてればいいもんね。
それにしても、先輩たちの美声が聴けると思うと楽しみだな〜。
「先輩たちはどんな歌歌うんですか?」
「翔はなんでも歌うよね。歌も上手いし」
と亜輝先輩が言う。
「じゃあリクエストしたら歌ってくれますか?」
「まあ、有名な歌ならほとんど歌えるよ!」
ちょっとニヤケながら答える翔先輩。
「亜輝先輩は?」
「まあ、俺もよく聞く歌を歌うかな。俺はそんなに上手くないけど」
そうなんですか?と言おうとしたら
「なーに謙遜してるんだよ!」
と翔先輩が入ってくる。
「亜希ちゃん、美香ちゃん、こいつの歌すっげえ良いから楽しみにしててよ」
なー、亜輝!と笑いながら言う。
翔のが上手いから、と言う亜輝先輩を見ながら目的地に向かって歩く。
*******
カラオケ館に到着。
先輩たちは予約してたみたいでスムーズに部屋に入る。
それぞれ飲み物を頼み、翔先輩から曲を入れる。
誰でも聴いたことのある有名ソング。
~~♩
!
うっまい!すごい!プロみたい!
1曲歌いきり、自然と拍手が出る。
パチパチパチ……
「先輩!凄かったです!プロかと思いました!」
あまりの上手さに騒いでしまった。
「ね!美香?」
逆に静かな美香に声をかけると
ハッとしたように
「あ……すごく上手でびっくりしてた」とのこと。
凄すぎて固まってたらしい。
翔先輩はそんな事ないよって照れながら言うけど、ほんとにすごかった。
そして次は、亜輝先輩。
亜輝先輩は有名なバラードを選曲。
~~♪
あ、これ私の好きな歌だ……
イントロの時点で笑顔になる。
~~♩
そして、先輩が歌い出した瞬間、涙が出るかと思った。いつものバリトンボイスが、かっこいいだけじゃなくてキレイで……
先輩が1曲全部歌いきるまで、私の心臓は止まってたんじゃないかなって思った。息は絶対にしてなかったと思う。
先輩が歌い終わり、
「どうだった?亜輝の歌は……
ってあれ?2人とも?」
翔先輩がおーいと私たちの顔の前で手を振る。
「……あ、凄かったです。時が止まったかと思った……」
と美香が先に答える。
私は上手く言葉に出来ず、
「感動しました……」
と一言言うのが精一杯だった。
「ははっ。……ありがとう」
ちょっと照れ臭そうに言う亜輝先輩。
それ以降も交代に歌を歌い、先輩たちは私と美香がリクエストした歌も歌ってくれた。
2人は何を歌っても上手かったけど、
初めて聞いた亜輝先輩の歌声は、一生忘れないと思う。
たぶんこれが、私が亜輝先輩に恋した瞬間だった……