04.意想外
そして、今日のお昼に行くカフェは駅前に決まり、早く行こう!と靴を履いて外に出る。
すると大勢の女子が集まっていて
中心に誰かいる様子。
「なになに?」
「なんだろう。まあいいんじゃない?早く行こう」
「ま、そうだね。お腹すいたもんね!」
と笑いながらスっと横を通ると、
「あ!亜希ちゃん、美香ちゃん!」
と呼び止められる。
その声は大勢の女子の中心から聞こえ、じーっと見ていると中から亜輝先輩と翔先輩が出てきた。
「2人ともやっほー!入学式で見かけたよ!2人とも可愛かったね」
と翔先輩。
「そうだね。ところで2人でどこかに行くの?」
と亜輝先輩に聞かれる。
「あの、これから美香とカフェに行こうって」
わお。先輩たち、しぬほど制服とネクタイが似合ってる。
「そうなんだ、いいなー。俺らもお邪魔しちゃおっかなー?」
「いいですけど……翔先輩。あの人達はいいんですか?」
後ろからこっちを見ている女性たちを指す。
「いいのいいの!」
と言いながら振り返り、
「じゃあみんなまたねー!明日学校でー!」
と声をかけると集まっていた女性たちが「キャー」と叫びながら手を振っていた。
いいのかな……?
「いつも帰りには囲まれちゃって、大変なんだよね」
「そうそう。でも今日は2人が通りかかってくれたから早く抜け出せたよ」
「それならいいんですけど……」
チラッと振り向くと、何人かの女子が私たちを睨んでいる。
怖っ!
さっさと行こう……。
「それでそれで?どこにいくの?」
と翔先輩の問いに美香が答える。
「駅前のeternalってお店に行こかと思っています」
「おお!そこ前に行ったよ〜。美味しいよね!」
「え?行ったことあるんですか?」
「あるよ!亜輝とふたりで。あそこおしゃれなカフェなのに男でも入りやすいからいいよね。たまにおばちゃんとかもいるし」
「ふふっ。そうですね」
前を歩く2人は楽しそうに喋っている。
私も話しかけた方がいいよね?
「あ、亜輝先輩は何食べますか?」
「ん?そうだなあ。eternalはオムライスが美味しいからオムライスかな?」
「私もオムライスが好きなんです!ケチャップが美味しくて……」
「同じ。あそこのケチャップ美味しいよね」
「私、eternalではいつもオムライスばっかり食べてて、家で同じ味出そうと作ってもなんか違うんですよね」
「そうなんだ。俺も作ってみようかな。eternalのオムライス」
料理なんてほとんどしたことないけど、と笑いながら言う先輩。
やばい、笑うとかっこよさが倍増する……
「じ、じゃあ今度勝負します?どっちが美味しいオムライス作れるか」
「いいね。でも勝負ってなったら負けないよ?俺」
俺のオムライスの方が美味しいって言っちゃうよ?と言いながら、前かがみになり私の顔を覗き込んでくる。
ドッドッドッ
え?なにこれ。私の心臓の音?
ドキドキしすぎ。怖い。
先輩のイケメンな顔とかっこいい声にやられた。
「もうっ!そんなかっこいい声で言ってもダメですからねっ!真剣勝負ですからねっ」
「ははっ。りょーかいっ」
先輩が笑うので、少し怒っていたけど私もつられて笑っちゃう。
あれ?なんか昨日会った時よりもかっこよく見える?
気のせいだよね?もともとイケメンだし……
[eternal]と書かれた看板が歩道橋の向こう側に見えた。
美香が振り返って
「ねえ亜希、結構並んでるよ」
と言うので、歩道橋の階段を上りながら覗き込もうとすると、
あれっ?
足首がクキッとなる。
あれれ?
そのままバランスが取れなくなり
後ろ向きに下へ落ちそうに……
落ちるっ!!!
目をギュッと閉じた。
……
…………
あれ?
そろ〜っと目を開けると
亜輝先輩が右手で手すりをつかみ、
左手で私を抱きとめてくれていた。
「ちょ!亜希!大丈夫!?」
「亜希ちゃん!亜輝も大丈夫かよ!」
2人の声で一気に目を見開く。
「わあ!先輩!ごめんなさい!」
「……っいいえ。亜希ちゃん、ケガない?」
慌てて体制を整える。
「私はどこもケガしてないです。助けてもらって……ありがとうございました……。亜輝先輩はケガ無いですか?」
「俺は大丈夫だよ。亜希ちゃんが落ちなくて良かった」
ほっとした様子の先輩。
「びっくりさせないでよ亜希〜。
亜輝先輩、ありがとうございました」
すぐに駆け寄ってきた美香と、
「亜輝すげぇな。イケメンだったよ!」
亜輝先輩の肩に腕を回して喋る翔先輩。
じゃあ行こうぜ、と翔先輩の声でまた歩き出す。
ホントにびっくりした……
亜輝先輩って..……
こんなにかっこよかったっけ……
いや、最初からイケメンだったんだけど……
あれ?
なんか心臓もずっとドクドクしてる..……
階段から落ちかけたから?
ううん、亜輝先輩の顔を見ると心臓がドクドクする……
まさかね……