01.出会い
ピルルルル、、
ピルルルル、、、ピッ
「……はい」
「はいじゃないわよ!今何時だと思ってるの?!」
「……え?美香!?
うわあっ!え、13時……今起きました…...
ごめんなさい!すぐ準備していきます!」
「まったく……さっきから何回もかけてたんだよ?
うん、まあ気をつけてきてよね。」
「うん、すぐ行くね!」
ピッ
お昼過ぎまで寝てしまい、慌てて起きて準備をしているのは私、水瀬 亜希、15歳。
そして、今の会話の相手は松本 美香。幼なじみで幼稚園からずっといっしょ。何でも言いあえる親友。ちなみに家もすぐ近く。
明日から高校生になるから、最後に2人で買い物行こう!って
私が誘ったのに……
すっかり寝坊しちゃった。
とりあえず、1時間も遅れてるし
ちゃちゃっと服を着て〜、ん〜これでいっか。
歯磨きして、髪の毛整えて、っと
よし!準備OK。出発!
*******
「美香〜!おまたせ〜」
「もうっ、やっと来た〜!1時間半も遅刻じゃん!」
「ほんとにごめんね?アラームつけるの忘れてたみたい」
「まあいいけどさ〜。あしたは入学式なんだから、遅刻しちゃだめだよ?」
「うんっ!ていうか、一緒に行こうよ!どうせ行き先は同じなんだし」
「ま、それもそうだね。亜希がフラフラ誰かについて行かないか見てないといけないしね」
「もうっ!ついて行かないよ〜。それにいつも男の人たちに声かけられてるの美香じゃん!大学生くらいの人たちからナンパされてさ〜」
「隣にいる亜希が可愛すぎるから、私の方が声かけやすいんじゃない?私に声かけて来るけど、みんな亜希の方みてたし」
「なにいってるの?私なんか今日もお姉ちゃんのお下がりの服きてきただけだし、お化粧もしてないし。髪の毛も櫛でといただけだよ?」
「何もしてないのにこれだけ可愛いんだから、高校生になったらみんなに声かけられちゃうね。
でも大丈夫!変な男に騙されないよに私がいるからね!」
美香は私の手を力強く握りながら言う。
「そんな心配いらないと思うけどな〜。でもずっと一緒に居れると思うと嬉しい〜!今までと同じように、毎日一緒に登校しようね!」
「じゃあ約束ね」
「うん!」
こんなことを言ってくる美香は、めちゃくちゃ美人。
背は160センチ。サラサラの黒髪に笑顔もステキで、スタイルもいい。
本当に中学生?って驚かれるくらい大人びている。
だから、いつも声かけてきた人に中学生だっていうとびっくりされる。
今日だってほんのりメイクしてて、みんな振り返ってるもん。
美香は私が可愛いっていうけど、全然そんなことない。
髪の毛は生まれながらにクルクルでくせっ毛だし、服もテキトー、メイクもしてない顔。
全くもって可愛くない!
だから、こんな美人で優しい幼なじみが親友で本当に幸せものだ。
「それで今日は何買うの?決めてる?」
「ん〜、明日から私たち高校生じゃん?美香みたいに少しメイクしようかなと思って!だから化粧品売り場に行きたい」
「え?メイクするの?でも私たちの高校ってメイク禁止じゃなかったっけ?」
「そうなんだけど〜。学校の時は色つきリップくらいにして、放課後とか休みの日とかはしようかなって?」
「亜希がメイク……。やめとこ?」
「……なんで?似合わないかな」
「いや、そうじゃなくて。
可愛くなりすぎて危ないよ、きっと」
「それは美香でしょっ。ぜんっぜん大丈夫だから!
ブサイクから普通くらいになりたいだけだから!」
「全く、全然わかってないんだから……。
でも、高校生になってナンパされてもフラフラついて行っちゃダメだからね?」
「分かってる!じゃあさっそく行こう」
「はいはい」
それで、デパ地下に行ってみたけどブランド品はやっぱり高くて、わたしのお小遣いじゃ揃えられなかったから、ドラッグストアへ。美香にファンデーションはいらないって言われたからとりあえずベースだけ買った。あとはアイブロウにアイシャドウ、リップ、マスカラ、チーク。美香が私に似合う色を選んでくれた。アイラインとかしてみたかったけど、もともと二重で黒目が大きいからいらないって言われてやめた。
「とりあえず、今買ったやつ使ってみる?」
「うん!」
一旦、美香と一緒に自分の家に戻って、スマホでメイク方法確認しながらやってみた。
「ど、どうかな?ネットに高校生はナチュラルメイクって書いてあったから、同じようにしてみたんだけど……」
「す………っっっごくいい!!かわいい!」
「え、ほんとに?」
「うん!」
「やったあ!」
「やっぱり亜希はかわいいわ〜」
「ねえ、またお出かけしない?」
私はメイクが上手くできたのが嬉しくてウキウキしながら言った。
「え?このまま行くの?」
「うん、だって上手くできてるんでしょ?」
早く行こうと立ち上がる。
「(ま、私がいるしいっか。)じゃあ行こうか。でももしナンパされても……」
「わかってる!フラフラしない!ついて行かない!ね?」
「ふふ。じゃあいこっ」
「行こうっ」
*******
美香とショッピングモールへ行き、プリクラをとって、かわいい服を見て、喉が渇いたからカフェに入ってオレンジジュースを飲んだ。
「あ〜、ほんっと楽しかったね!」
「うん、楽しかった」
「もう18時か〜。4月になったのに外はもう暗いね」
「そうだね。明日は入学式だしそろそろ帰ろうか」
「そうしよう。ジュース飲んじゃうね」
「うん。
……あ、まって。お母さんからおつかいのメールきてた。鶏肉にキャベツに……
うわ、亜希ごめん〜。わたしスーパー寄ってかなくちゃ」
「いいよいいよ!」
「亜希1人で帰れる?拐われないか心配……」
「大丈夫だって。それより美香も気をつけてよ?スーパー寄る分、遅くなるんだから」
「うん。ごめんね!亜希くれぐれも気をつけて帰ってね!」
「うん。じゃあまた明日!気合い入れて行こうね〜」
「また明日ね」
おつかいにいく美香と別れて1人で帰ることに。
美香は心配してくれるけど私は全然平気。
前に何度か道を聞かれたことがあるけど、知らない場所だったから交番に案内したら解決したしね。
それより、美香の方が心配になってきた。
やっぱり一緒にスーパーに行こうかな。
と、ちょうど足を止めて振り返ろうとした瞬間
「あれ?めっちゃかわいいじゃん。どこいくの?」
と2人組に声をかけられた。
金髪でチャラそうな見た目。
「友達と帰るところです」
と答えると
「そうなのー?じゃあその友達も一緒に、もう少し俺たちと遊ばない?」
肩を抱きながら誘ってくる。
「い、いえ、結構です」
ちょっと声震えちゃった…
しっかり断らないといけないのに…
「えー?聞こえないよー?ここうるさいよね。聞こえるように車に行こうか。向こうに止めてるから。静かだよー?」
嫌なのに上手く声が出なくて、肩を抱かれたまま振りほどけずにいると
「ちょっとあんたら、何してんの?」
バリトンの声が聞こえる。
「あぁ?なんだあ?兄ちゃんよー、ちょっと顔がいいからってヒーロー気取りか?」
「その子、嫌がってるように見えるんだけど……」
「んなわけねーだろ。この子は今から俺らと遊ぶんだよ!」
「そうなの?ほんとに?」
その男性は覗き込むように聞いてきた。
「だからそうだって…「ち、ちがいます!」」
言葉を遮りながら言った。
「ちがいます!ナンパされて……
断ってたけど無理やり肩に腕回されて」
「……って言ってるけど?まだ続けるなら今から警察呼ぶよ」
スマホを触りながら言う。
「チッ…めんどくせーなぁ。もう行こうぜ」
「あぁ」
警察と聞いた途端、ナンパ2人組は舌打ちしながら歩いていった。
あぁ……私が美香みたいにハッキリと断ればよかっただけなのに、この人に迷惑かけてしまった……
「あ、あの、助けてくれてありがとうございました!」
深くお辞儀をして顔を上げるとめちゃくちゃイケメンが目の前に。
「大丈夫だった?ケガしてない?」
美しい顔とバリトンボイスで死んでしまいそう……
「だっ、だい、じょうぶです……」
顔を覗き込むように大丈夫か確認され、顔が赤くなった。
「ならよかった。このまま家まで送るよ。家はどこ?」
「いやっ、と、友達を待つんで。友達と帰ります!」
「そう?じゃあ気をつけてね。もう暗いし」
にこっと微笑んでくるイケメンさん。
「あのっ。お名前、聞いてもいいですか?」
これでもう会えなくなると思うとなんだか胸がざわついて、つい名前を聞いてしまった。
「あ、そっか。このままだと俺も不審者だよね。
一ノ瀬 亜輝。凪高校の3年だよ」
笑顔のイケメンさんを視界に入れながら、名前を聞いてビックリした。
「えっ?」
「?」
「いや、あの、私も……」
「ん?」
「あの、私もアキって言うんです。水瀬 亜希。
それに、高校も。私、明日から凪高校の1年です」
「え?ほんとに?」
まさか名前が同じなんて……それに高校も……
それにアキの亜が同じ漢字だったなんて。
「いや、ほんとにびっくりした。まさか同じ名前なんて」
「ですね。びっくりしました」
「同じ名前の亜希ちゃんが後輩になるんだね。
明日からよろしくね」
と、亜輝先輩がまたもやキラキラした笑顔で手を差し伸べてきた。
まるで後光がさしているくらい眩しい。
ていうか、かっこよすぎる。
「あっ、はいっ!亜輝先輩。あしたからよろしくです」
「うん、よろ「…よーっう!!」うわっ」
!!!
いきなり亜輝先輩に男の人が飛びついてきた。
ピアスもついててチャラそう…
でもこの人もイケメンだ…
「あーき!こんな可愛い子となーにしてんのー?」
「…翔かよ。びっくりした」
…友達?…かな?
「君、めっちゃ可愛いね!名前なんて言うのー?」
いきなり近づいてきたからびっくりして、すぐに返事できないでいると、
「おい、翔。まず自分の名前言った方がいいんじゃないか?」
「たしかに。驚かせちゃったね、ごめんね」
「い、いえっ」
もう1人の男性は、ごめんっと両手をパチンと顔の前で合わせて謝り、自己紹介をしてくれた。
「俺は矢沢 翔。亜輝とは同い年で中学からの腐れ縁ってやつ」
と、亜輝先輩を指しながら言う。
笑顔が可愛い感じのチャラ男って感じ?でも2人とも背が高くて絶対モテる。イケメンはイケメンを呼ぶんだなぁ…
と、1人で考えていると
「それで、君は?」
と聞かれ、
「あ、水瀬亜希ですっ。さっき、変な人たちに絡まれてたところを助けてもらって……」
と、慌てて答える。すると、翔先輩が目を見開き勢いよく近づいてきた。
「え!?君もアキっていうの!?え?同じじゃん!」
とびっくりしている。
「はいはい、翔。ちょっと、近づきすぎじゃない?」
すっごく近くにいた翔先輩をぐいっと引き離し、
「ちなみに高校も明日から同じだって」
と付け加えてくれた亜輝先輩。
「そうなんです!明日から高校1年なんです。亜輝先輩と同じってことは凪高校の3年生なんですよね?明日からよろしくお願いします。翔先輩」
先輩がにこにこしているから、わたしもつられて笑顔になった。
すると、
「わお、笑顔だとさらに可愛いね。亜希ちゃん、何かあったら俺らのこと頼っていいからね!」
亜輝先輩の肩を組みながら頼っていいと言ってくれた。
それに対し亜輝先輩も、
「うん、なんでも言ってよ」
と微笑んでくれた。
あ〜。イケメンすぎて眩しい〜。
「はい。じゃあいっぱい頼っちゃいますね!」
と喋っていると、
「あれ?亜希?」
「あ、美香!」
振り向くとスーパーの袋を提げた美香がこっちに歩いてきた。
「亜希、まだ帰ってなかったの?
っていうか、この人たちはだれ?」
先輩たちをちらっと見て言う。
「それが、やっぱり美香と一緒に帰ろうと思ってたら、変な人達に絡まれちゃって……。どうしようって困ってたら、先輩が助けてくれたの」
「えぇ!やっぱり、少し待ってもらってでも一緒に帰ればよかったね。亜希を助けてくれてありがとうございました。
ところで、先輩って?」
私の事なのにお礼を言ってくれて。
本当に大好き。
美香は先輩たちの方に向かってぺこっと頭を下げたあと、私が言った先輩っていうワードに首を傾げている。
私は、翔先輩に伝えた時と同じように美香に説明した。すると驚きながらも、
「名前が同じなんて、そんな偶然あるんですね。
それに明日から高校も同じなんて。
私は松本美香と言います。先輩方、明日からよろしくお願いします」
美香も笑顔で挨拶をした。
翔先輩が美香の顔をじっと見つめて、
「亜希ちゃんにもびっくりしたけど、美香ちゃんも超絶美人だね!惚れちゃいそう」と言う。
「本当に美香は毎日男性に声かけられるほど美人なんです!」
ね?と美香の方をむくと、
「いやいや、亜希も可愛いすぎるからね」
いつものお世辞を言ってくれる。
だってほら、やばいよ。通りすがりの人たち、みんな美香のこと見てる。女の人達は先輩たちのこと足を止めてまで眺めてるし。この人達凄すぎるよ…。
「……ねえ美香ちゃん、もしかして亜希ちゃんって自分のことわかってない感じ?」
「そうなんです。別に天然って訳じゃないんですけど、なぜか自分のことだけは普通だと思っていて……」
「まじか……」
「……」
と、3人がこんな会話をしているとは知らずに……