表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/42

第35話 公判・目撃者尋問5

 裁判官の催促を受けて、弁護人は目撃証人に眼を移しながら、

「分かりました。それでは…目撃証人に確認しながら質問します。目撃証人、よろしいですね?」

「はい」


「目撃証人、貴女は10年ほど前に亡くなられた朱里エイコさんという女性歌手をご存じですか?」

「いいえ」


「被告人に確認しました。数年前、被告人がトレーニングを終えて帰ろうとした時、受付にいた貴女と眼が合いました。かって一世を風靡した女性歌手の死亡を、偶々この日知ったばかりの被告人は貴女に質問しました。『10年近く前に亡くなった朱里エイコさんを知ってる?』って。証人、思い出しましたか?」

「いいえ」


「じゃあ、続きを。当時貴女は知らなかったので、『知りません。どんな方ですか?』と答えました。そこで、被告人は説明しました。

『ジェット最終便という曲をミニのタイトスカートで膝をくねらし乍ら歌い踊る、こんな立派な胸をした脚線のすごくきれいな美人歌手』と。ジェスチャーで胸を強調しながらだったそうです。

 で、ここまでにしておけば何の問題もなかったのですが、気安い貴女だからつい口が滑ったそうです。続けて、『奈穂ちゃんとは正反対の体形だね』って、大変失礼な事を言ってしまったそうです」


「………………」


「証人、思い出されましたか?」

「………………」


 ここで、川野検察官から

「異議あり! 今の話と今回の裁判とどんな関係が有るんですか?」


「目撃証人は数年前に被告人から自分の身体の事で屈辱的な発言をされたのです。証人、そうですね?」

「その事と今回の事とは関係ありません」


「ほんとにそうでしょうか? 言わば、これはセクハラ発言ですよね。それ迄貴女は被告人と親しかったはずです。

 被告人は言ってましたよ。『それ迄あんなに明るく愛想が良かったのに、いつの間にか随分不愛想になった。恐らく若い後輩の手前、少しお姉さんらしくしようとしているんだろうと思ってた』って。

 だから私の事務所で、目撃証人が貴女で警察署での目撃者証言を読んだとき、相当なショックを受けてましたよ。ほんとはね、被告人は貴女に自分の人となりを証言して貰うつもりだったのですよ。

 相当に考え考えぬいた結果、あのミス発言に行き着いたのです。貴女とは親しい間柄だから通じる冗談だと思ったのですね。乙女心が解らないのは被告人の罪です。

 でもね、今回の裁判に関しては被告人には罪はありません」


「………………」


「貴女は自分に屈辱的な発言をした被告人をずっと憎んでいた。いつかチャンスがあれば…と機会を伺っていた。違いますか?」

「………………」


「異議あり! それは弁護人の推測ではないですか? 何の根拠も有りません」

「証拠はありませんが、根拠はあるでしょう。確かに推測ですが、明らかな動機になります。前回からの公判において、目撃証人が繰り返している偽証の明白なる動機でしょう」


「……でも、推測です」


「それでは最後に、目撃証人。この法廷で、貴女は何度も偽証発言をしようとしました。それらを全て撤回した以上、被告人から偽証罪で告訴される事はありません。しかしN警察署では初めに発言した内容で偽証していますよね? これについてはどのように対処するおつもりですか?」


「………………」


 ここで、川野検察官、

「まあそれは、公判には影響ない事ですので……私が相談に乗ります」

「今後の公判には影響ありません。だが警察署での偽証がなければ捜査検察官が本件を起訴したかどうか?」


 今度は、裁判官から、

「弁護人、そこまでにして下さい」

「はい。これで、弁護人からの尋問は終わります」



 公判も白熱してくると結構疲れる。神野は、自分以上に野々宮奈穂は疲れた事だろうと思った。

 

 神野は仙人といつも通りに昼食をして別れた。


(来月か。次はいよいよ自分の番だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ