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第34話 公判・目撃者尋問4

 1週間後、公判は再開された。

 この間に神野は前回同様、録音記録から目撃証人の偽証内容を表にまとめ山本弁護人に説明していた。準備は万端である。


 裁判官から公判再開の説明があり、弁護人に尋問の続きが促された。


「弁護人、尋問を続けて下さい」

「はい。皆さん、先日お渡しした間取り図のコピーお持ちですね。それでは、目撃証人に改めて質問します。被告人が原告のお尻を2度に亘って触ったという証言ですが、夫々の回数をお話しください」

「1回ずつです」


「検察官に何度もと証言したのはどうしてでしょうか?」

「被告人に罪を償って欲しかったのでそう証言しました」


「その為には偽証しても良いと考えたのですか?」

「はい」


「それはいけないね。正々堂々と証言しないとね」

「…………」


「鏡で最初に見た時の位置はH3で間違いありませんか?」

「はい」


「2度目に直に見た位置はどうですか?」

「同じ位置です」


「鏡で見てから直に見るまでの足取りを説明してください」

「鏡越しにお尻を触っているのが見えたのですぐ助けに行こうと思い、現場が見えるフロアー近くまで歩きました」


「……、それから?」

「まだ触ってたので、『内線が入ってる』と声を掛けました」


「触っていた各回数と触り方、移動の時間はどれぐらいですか?」

「触っていたのは各1回で下から上へ、移動時間は4~5秒ぐらいです」


「その移動している間はどうなんですか?」

「そこは見ていないのではっきりとは分かりませんが、私は触っていたと思います」


「貴女が自分の眼で見たのは2度でそれぞれ1秒ほどですが移動中の4~5秒の間もずっと触っていたと思うという事ですか?」

「はい」


「その理由を言ってください」

「今までに何度も女性に触っているのを見ているので」


「相手の女性は嫌がってたのですか?」

「分かりません」


「では何ら問題はありませんね。で、見ていなかったのは鏡から一旦消えたからですか?」

「はい」


「どうして鏡から消えたのですか?」

「移動する時、席を離れたので」


「席のすぐ近くでは一瞬眼が離れる事はあっても、移動している間は鏡を見ているでしょう。4~5秒間一度も見ていなかったのですか?」

「…………」


「本当の事を話して下さい。一度目と二度目が同じ場所なら、受付から鏡に向かって真っすぐ歩けば、最後まで鏡に映っているはずです」

「…………」


 ここで山本弁護人、声を強くして厳しい表情で目撃証人を睨みつけながら、


「本当は鏡には映っていなかったのではありませんか? 映る筈がないのです。何故なら、現場が全然違うから」

「…………」


「本当の現場はその間取り図のH2ですね。ここだと、鏡には映らないのです。それでは被告人を有罪にする事が非常に難しくなる。それで現場をシフトするよう原告に話し、口裏合わせをしたんですね?」

「…………」


「目撃証人が黙秘権を行使したら洒落にはならないですよ。じゃあ話を少し元に戻しますが、腹筋台で原告の肩や背中を触っているのを見たという後輩はどうなんですか? ほんとに居るのでしたら、私はその方にお会いして確認しなければなりません。場合によっては次回出廷して貰います。私はきちんとした裁判をしたい。それだけです」


「…………」



 ここで、川野検察官から、

「裁判長、少し目撃証人と話したいので、少しで良いです。時間頂けませんか?」

「分かりました。重要な所なので、どうぞ」


 2人の検察官と目撃証人、一旦退廷する。




 5分後、3人は再び入廷する。

 川野検察官から、

「目撃証人は落ち着きましたので、改めて尋問お願いします」


「了解しました。目撃証人にお尋ねします。腹筋台で原告に触っている被告人を見たという後輩は居たのですか?」

「いいえ、いませんでした」


「偽証したのですか?」

「はい、すみません」


「貴女自身は触っているところを見ましたか?」

「はい、見ました」


「どんな触り方だったのですか?」

「肩と背中を触ってました」


「何回ぐらい?」

「1~2回ぐらいです」


「間取り図を参考にしてお答えください。腹筋台を降りた後、原告と被告人はどのように移動し、貴女はどうしましたか?」

「被告人はH2まで移動しました。原告もその近くに移動しました」


「そこは鏡に映っていましたか?」

「いいえ、映ってはいませんでした」


「その後、貴女はどうしました?」

「すぐに近くの現場に移動しました」


「それは、どうして?」

「被告人が原告に触ると思ったからです」


「それは何故?」

「被告人がスタジオで女性の身体を触っているのを何度も見ていますので」


「従業員にですか?」

「いいえ」


「自分の親しいマラソン仲間、トレーニング仲間に対してパーソナルストレッチ、筋トレサポート、マッサージをするのは極々自然な事ですよ。そう思いませんか?」

「分かりません」


「良いです。それでは最後の質問です。移動した後、見たままをお話し下さい」

「被告人が原告のお尻を触っていました」


「具体的には? どのように何回ぐらい?」

「下から上に、1回」


「その時、貴女は?」

「内線電話が掛かってると言って、離しました」


「ほんとは、貴女が現場に着いた時、まだストレッチは始まってなかったのではありませんか? ストレッチの前に、効果とかやり方とか説明していたはずですが。貴女の証言とは、全然時間が合わないんですよ」

「…………」


「ストレッチが始まる前に現場で様子を見ていましたね。被告人が原告のお尻に触る事を期待しながら」


 ここで、川野検察官から、

「ちょっと、待って! それは誘導尋問です」


 すぐ、裁判官から、

「弁護人、『触る事を期待しながら』とは、どういう意味ですか?」

「裁判官、前回の法廷で先送りしていました『目撃者と被告人には避けて通れない出来事』の為に、私は目撃証人が偽証をしてでも被告人を有罪にしようとしているように思われます」


「ではここで、その出来事を話して下さい。裁判官もぜひ聴いてみたい」

 

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