第33話 公判・目撃者尋問3
「裁判官からの提案なんですが…どうでしょう。予定の時間が過ぎましたし審理が長引いてますので、本日はここまでにして後日改めて審理再開するというのは?」
「私は構いませんが」
検察官の即座の賛同表現に対して、山本弁護人は
「いや、大変重要な局面を迎えてますのでこのまま続行しましょう。あと20~30分ぐらいではないかと思いますが」
「裁判官としては重要な局面だからこそじっくり答弁を聴きたいのです。先ほど後回しにされた分も含めて、裁判官は是非ともじっくり聴きたいと思います。弁護人、よろしいですね」
「『鉄は熱いうちに打て』って言いますよ、裁判官」
「被告人は発言を慎みなさい」
予想通りの反応に、神野思わずニヤリ。
驚いた山本弁護人、すぐさま
「分かりました。裁判官の言われたように先送りした分も有りますので。なるべく早いうちに、1週間以内に再開できますか?」
「分かりました。検察官、よろしいですか?」
「はい、分かりました。調整します」
「じゃあ、本日中に決めませんか? 私と検察官が都合のつく日時を裁判官に連絡して、決めて貰うという事で」
両者了解で話は決まった。
しかし、神野は
(何故この俺の都合を訊かないのだ? まあ、山本弁護人が訊いてくるか。まあ当分、俺には予定はないけど)
こうして第3回公判は持ち越しになって終了した。
神野はゆっくり立ち上がり、一度山本弁護人と目を合わせてから退廷した。すぐそこに村井氏と仙人がニヤニヤしながら待っていた。2人とも何か言いたそうであったが、流石にここでは何も言わなかった。
遅れて退廷してきた山本弁護人に声を掛けられ、二人で前回と同じ客室に入る。
「神野さん、楽しそうでしたね?」
「ええまあ、最後はお陰さまで」
「かなり左手サイン、送ってくれましたね」
「ええ、酷い偽証のオンパレードでした」
「できたら神野さん、今日にでもその偽証内容まとめておいてくれますか? 前回と同じ要領で良いです。あれは役に立ちましたよ」
「そうでしょう。自信作です」
「でしょうね、あの感じでよろしく。さて、今日中に今回の続きの日時が決定するかもですが、神野さんの不都合な日はありますか?」
「2週間ぐらいはありません。親の葬儀よりも優先しますから。いや、冗談ですよ、葬儀は待ったなしですから。公判は延期可能ですよね?」
「そうです。葬儀の方が大事です」
「ところで先生、先生の見立てではどうですか? 目撃証人、ホントの事を話しますか?」
「私は話すと思います。検察官の尋問と私の尋問に対して、同じ質問内容にも関わらず全然違った証言をしましたね、しかも一番大事な所で。これは致命的なミスで、下手にごまかそうとしますと益々深みに入ってしまいます」
「どちらを真実だと言ってくるかですね?」
「検察官に答えたのが真実だと言ったら、それは偽証になりますからね。偽証罪で告訴されるリスクを冒すとは考え難いですね。検察官が本人と真剣に詰めるでしょう」
「そうですね。今日の検察官の様子からだとかなり焦ったみたいですね」
「恐らく、目撃証人と今日にでも会うでしょう。検察官がどのように判断するか? 今日の様子からして真実を述べるように目撃証人に話すと思います」
「だいぶ、我々が有利になってきましたね」
「まだまだ…。必ずしも、『疑わしきは罰せず』とはならないですから。裁判官によっては、少しでも疑わしい所があれば、緩い処分ながら有罪にするのも居りますから。
この裁判官はそういうタイプで、気が付いていると思いますが、耳は遠いし頭の回転も少し遅いでしょう。もうすぐ定年です。平気で遅刻もしてたでしょう」
「確かに頭の回転は鈍そうですね。認知機能、大丈夫ですか?」
「まあ、そこ迄は行ってないでしょう」
神野は客室を出た後、村井氏と少し談笑して2人と別れた。
仙人を前回の公判の時と同じレストランに誘った。早速、仙人に確認する。仙人は今回もしっかり録音していてくれた。
「仙人、今回はかなり予期せぬ展開だったけど、どう思った?」
「検察官が尋問してる時はヒロさんから聞いてる話とかなり違っていたな。山本弁護人が尋問に立ってからは流れがガラリと変わったな。裁判らしくなって不謹慎だけど面白かった。ヒロさんに入場料、払いたいぐらいだ」
「俺も検察官の時は偽証のオンパレードにムカついてたんだけど、山本弁護人になってからは面白かった。それにしても山本先生、大したもんだね。流石、村井さんが推薦するだけの事はあるね」
「そうやな。村井さんも初めは真顔で、最後の方は時々笑みを浮かべて聴いていたよ。ああそうだ、ヒロさんが発言した時、一瞬びっくりして、その後裁判官がムッとした後、両手で口を押えて笑いを堪えていたよ」
その後、神野から客室での山本弁護人との会話の報告の後、2人は食事をしながら談笑に入った。




