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第23話 現場検証

 当日9時20分、神野はいつもの駅の南口で仙人と待ち合わせた。5分後にKスポーツクラブに到着した時、山本弁護人と秘書の女性、本店長の3人が待っていた。3人がそれぞれ表情が違うのが面白い。本店長はやや強張った顔。美人秘書はいつも通り無表情。クールビューティーとはこういうのを言うんだろう。山本弁護人は余裕で、暫く神野と仙人の顔を交互に見ていたが近くに来ると神野に微笑みかけてきた。


「ご苦労様です。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


「あ、こちらが仙人さんですね」

「いいえ、紹介します。こちらが噂の仙人です」


「ああ、そうでした。仙人でした。初めまして」

「あ、どうも。ヒロさんから聞いています。冤罪から救ってやってください」


「はい。精一杯やらして頂きます。神野さんから噂は聞いておりますが、イメージ通りの方ですね」

「いやあ、ハハハ…」


 秘書の肩に触れながら、


「秘書の中本です」

「中本と申します。本日はよろしくお願いします」

「あ、こちらこそ」

「そういえば、今初めて知りました。中本さんと言われるんですね」

「はい」

「ああ、そうでしたか。言ってませんでしたか?」


「ヒロさんが手を出すといけんからねえ」

「仙人、何を言うの!」 


 そんな寛いだ雰囲気のところへ、土屋とかいう警察官もすぐにやって来た。時間ピッタリだ。流石に警察官の端くれだ。仕事は適当でも時間は守る。駅から徒歩で来たのは神野たち2人だけのようだ。

 

 6人全員が4階にあるトレーニングフロアーに集結した。山本弁護人が切り出す。本店長と土屋警察官に向かって、


「それじゃあ現場検証を始めますので皆さんは寛いでいて下さい。.じゃあ、神野さん。フロアーで原告と話し始めたところから説明してくれますか? 中本を相手に」


 神野はマシンフロアーに入り、最初に声をかけた位置まで進みそこで新しい機種の導入があった事を原告から説明された事を話す。有酸素系以外にも新機種の導入があった事を聞かされた神野はそれらを見せて欲しい旨伝え、途中で、腰が固くなり腹筋ができなくなった旨話したところ、腹筋台まで案内された事を話す。

 そして、腹筋台まで中本秘書を案内する。中本秘書には腹筋台上の東端に固定されている前後2つのローラーに、上体を起こしたまま足首を入れてもらう。


「先生、これが最初の姿勢です」

「うん。続けてください、ゆっくり」


「彼女の方から『この角度が90度になるように』と言って説明するので、その指の動きに釣られてこういう感じで軽く触れたと思います」


 そう言いながら、神野は中本秘書のローバック(腰の少し上あたり)に右手で軽く触れた。原告の指の動きは大腿から臀部を経由して腰の方を指していたのだ。その腰に触れたのである。


「うん、なるほど。イメージ通りです。それから?」

「あと、言葉を交わしたかは覚えてないんですが、彼女は向こう側、南側に降りました。で、2人とも何となくこの辺りまで歩いて来ました」


 神野はそう言いながら、敢えて本当の冤罪現場までは歩まなかった。数日前に神野の方から提案して冤罪現場の位置を相手側に特定させないようにしようと考えたのである。

 情報が本店長から2人の部下に筒抜けになるのを恐れた神野の判断だった。現場の位置が双方で一致した上、口裏合わせをされるときつくなる。それならバレやすい偽証を相手にさせる方がチャンスが広がる。神野はそう考えたのである。この事は勿論、仙人にも伝わっていた。


 神野は山本弁護人から受け取っていた原告の描いた犯行現場(冤罪現場)にさり気なく合わせて、そこで現場検証を行う事にした。みんなが注目する中、中本秘書を原告に見立てて最重要な現場検証を始める。


 原告に説明したように、『ランナーにとってのこのストレッチングの重要性』を説明し、『自分は今は腰が固くなってできないが、貴女にはその有効性を知って欲しい』旨話す。


「まっすぐ立って」

「右脚を左足の前にこのように重ねて」

「頭と腕の重みだけ利用して、無理に手を突こうとしないで、ゆっくりと」

「腰を折りながら右ひざの裏で左膝のお皿を押す」


 この時神野は左手で中本秘書の左肩に軽く触れる。


「この辺りのストレッチ感を意識して」


 説明しながら、神野は右手のひらを彼女の左膝裏から脚の付け根辺りまで軽く滑らした。

 原告に対しては、日常自分の仲間の女性たちに行っていたのと同じ事なので、特に意識する事もないし緊張する事もなかった。だが今回は現場検証なので、意識しないようにと思っても、何か意識してしまう。


 それに、原告と彼女では外見も中身もあまりに違い過ぎる。

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