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第10話 私選弁護人費用

 それから数日後の夜、村井氏から神野に電話があった。


「はい、神野です。村井さん、どうも」

「ああヒロさん。明日ね、山本って言う前から親しくしている弁護士に会うんよ」


「あ、そう。その人が専門の弁護士を紹介してくれるん?」

「うん、そうなんだけどね。ええっとねえ、明日詳しく聞いてくるけど、ちょっと問題がある」


「えっ、問題って?」

「まあ一番は、弁護人費用。略式裁判では30万円と言ったよね、簡易裁判ともいうけど。私選弁護人に依頼すれば、それじゃあ済まないようだ。山本弁護士の知り合いの、この問題に強い弁護士だとその額では収まらないようだ」


「そうなん? こんな単純な冤罪事件でも?」

「らしい。とにかく、明日会って詳しく聞いて来るわ」


「なあ村井さん、オレも一緒に行こうか?」

「いや、それはだめ。普通、一緒に行ったら弁護人費用を請求される、一万円ぐらい。彼は絶対請求しないと思うけど、他人に見られると良くないんよ。スポーツクラブでプロのマッサージ師が友達に無料でマッサージをするとクレームがつくのと同じ事」


「あ、そうか、なるほど。うん、分かった」

「まあ、オレに任せて。で、明後日、いつもの茶店で会おう。10時半で良いかい?」


「うん、有難う。助かる」

「じゃあ、明後日」



 神野は、弁護人費用の事は頭にはあったが、こんな単純な冤罪事件で30万円を上回るとは思ってもいなかった。精々その半額、いや、それでも高過ぎる。神野は気持ちを落ち着かせて考えてみる。

 もう少し正確な弁護人費用を知りたい。明後日、分かりそうだ。

 その結果、私選弁護人を諦めて国選弁護人に戻すべきか?


 暫く考えて、神野は自分なりの結論を出した。

 第一審の簡易裁判所では、国選弁護人に依頼をしよう。

 ここで無罪判決が出れば、一件落着。有罪判決が出れば控訴して、第二審の高等裁判所で私選弁護人に依頼するか、切り札は最高裁まで取っておきもう一度国選弁護人に依頼するか判断する。

 よし、これで行こう。神野の腹は決まった。


 2日後10時半、神野と村井は前回と同じ喫茶店で再会した。


「ご苦労様、お手数掛けるね。全て終わったら、存分に奢らしてもらうから」

「そりゃあどうも。ただねえ…、問題は弁護人費用だよな。実績のある弁護人に依頼すると、基本料だけでそれぐらいはかかるそうだ。それに、足代とか通信費、その他諸々の経費。更に勝訴すれば、その分も」


「ふうん。オレだったら足代は自転車だからかからない。通信費もスマホだからかからない。その他諸々って何だ?」

「まあ、聞き込みとかにかかる費用だろ」


「殺人事件なら解るけど、痴漢冤罪ぐらいで聞き込みって必要かなあ?」

「確実に無罪にしたいからね。必要かもね」


 ここで、神野は自分の結論を話す事にした。


「なあ、村井さん。こう考えたんだけど。今回の第一審では、国選弁護人に依頼しようと思う。で、もし有罪にされて第二審まで行ったら、その時点で改めて考えてみようと思うんだが、どうだろう?」

「それはダメ! ヒロさん、あんた裁判の事、知らんな」


「いやっ、それはまあ初めてだが。生涯無縁だと思っていたからね」

「そうだろね。あのね、第一審の判決を控訴した場合、第二審はどんな形で裁判が行われるか知ってるかな?」


「それは、場所とメンバーを総入れ替えして。まあ、検察官は同じでも良いかもだけど、いずれにしても一から審議をやり直すんだよね?」

「それが、違うんだね。第一審では審議は尽くされた事になるんよ。だからもう原告、被告人、証言者が裁判所に足を運ぶ事はないんよ。検察官と弁護人だけの論戦になるよ」


 流石に、神野は驚いた。というよりショックだった。てっきり、第二審、第三審と上がるにつれてよりレベルの高いメンバーで最初から審議が行われるものだとばかり思っていた。三度のうち一度勝訴すれば良いのだとばかり。


「じゃあ、第一審の裁判記録を基にして?」

「そう。裁判所書記官というのが居て、そいつが裁判記録を取っている。それを基にして言い分を述べ合う。さっき論戦と言ったけど、一度ずつ有罪・無罪の理由を述べ合うだけの事」


「そんなんに第一審より優れたメンツが必要なん?」

「ん、まあ…、誰でもできるんちゃう?」


「会社では、下の社員の方がコスパが高い。それと同じような事か?」

「ふふ…、確かに。まあそんなとこでしょう」


 神野の出した結論はあっさり崩れた。

 ”まさか~!” である。

 橋の欄干で頭を殴られ、川に”まっさか~!”さま。


 そんな気分である。参ったな。

 さて、どうするか?


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