プロローグ
キース王子の唇は薄く、滑らかだ。
重ねるとすぐ舌を差し入れてくる。
「んっ」
末っ子で甘えん坊のキース様。
強請るように舌を押し込んできて、私の舌に舌全体を絡み付けてくる……何かに焦るように、せがむように。
「……んふっ。キース様ッ……息が……」
私は少し体を引いて拒むけど、キース様は体ごと追いかけてきて私の背中に手を回して抱き寄せる。
「アルナ、逃げないで。僕のこと嫌いなの?」
「そんな!そんなことないです」
「じゃあ何でダメ?僕のキスが嫌いなの?僕のキスが下手?」
キース様は、拗ねたような目つきで睨みつけ、こうやって試すようなことばかりいう。
本当に甘えん坊。
滑らかな黒髪のボブヘア、長い前髪。
柳のような細身で中性的な見た目の彼だけど、抱きすくめられるとゴツゴツした指や、触れる体に筋肉や骨の太さ……男性らしさを感じる。
キスの荒々しさにも。
「僕の呪いを薄められるのはアルナだけなんだよ。もっとキスしてよ。深くキスして。僕を助けてよ」
そんなにグイグイこられたら……何も考えられなくなっちゃう。
キスだけはしないって誓ったのに……結局私はキース王子に唇を捧げ……。
唇から聖女の祝福を彼に与えてしまった。
甘い陶酔感に押し流され、私の身も心も蕩けていく……。
どうしてこんな事になったんだっけ……?
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・乙女ゲーの世界に転生
・ひたすらヤンデレ王子から執拗な溺愛
・突如選ばれて聖女として生きていくヒロイン
R指定程度の性描写あり。
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(続く)