【第94話】 皆が来たがる超空間
駄目だ、思い出せ!
もどかしい!凄く大事な話、それは分かる。内容が一行も思い出せない!!
「ゴブ?阿騎?どうしたゴブゴブ?」
美観お姉さんが私の異変に気づく。
「……ゴブ!」
ルカトナちゃんに聞いてみるか?
でも、ルカトナちゃん、時々不在だしな、どうしよう?
(おい、阿騎くん)
!
誰だ?凄い強い思念だけど?まるでMAXのボリュームで音楽聴いているみたいな感じだ!
(おったい、聞こえとる?)
お?
!
元帥さん!?
(阿騎くん、覚えとるね?おっわ覚えとるよ。ン・ドント大陸に魔木が1本ある。この攻略は難しか、皆で話ばしときなっせ)
そうだ!魔木だ!ドライアドトルクちゃんの一族が捕まっている!
(あ、ありがとうございますっ!元帥さ……閣下!)
(元帥さんでよか、閣下なんてガラじゃなかとよ。じゃ、がんばんなっせ)
(はい、ありがとうございます)
(それから阿騎くん、超空間では阿騎くんは女の子たい、ルカトナくんや亀さん、鶴さんはおったけど、女性と二人きりはマズか、他者は面白おかしく噂するかもしれん。今度喚ぶときは、誰か他のスケルトンも一緒に喚んでほしか、よかね?)
(は、はい!わ、分かりました)
そうだよ!魔木だよ!大変だ!このままではヤバい!
「ゴブ!おばばさまと村長さんにゴブ!それとメイドン!お兄ちゃんゴブゴブ!」
「ゴブ、阿騎くん、みんな聞こえていたけどゴブゴブ?」
玲門お姉さんが申し訳なさそうに言う、そして目が怖い?なんで?
え?聞こえていた?みんな?
「ゴブ?」
え?え?
(ゴブ、阿騎くん喚ぶって何ゴブ?元帥ずるい!今度ウチも喚んでよゴブゴブ!うちも秘密の場所で逢い引きしたい!)
え?エノン?逢い引きの意味、分かって言ってる?
いや、私も生前生後、逢い引きなんてしたことないけど。
(待て、ン・ドント大陸の情報が先だろう?あと少しで大陸だ。魔木の位置を調べてみる)
さ、さすがコロ隊長!
(気をつけて!かなり危険だよ!)
(無理はしない、雲の上からの偵察だ、気づかれないように展開する)
ん?先だろう?じゃ次は何?偵察の後が怖いんですけど?
「ゴブ、見えたぞ」
え?どこ?
高度をあげ、海面から距離をとる熱気球。朝日が鋭く辺りを包み始める。
波の音、潮の香り、身体を包む体毛が海風でべたつく。
私は気にしないが、美観お姉さんはイヤそうだ。
視線を落とし、後方を見る。
そこある蒸気船は魔海獣を警戒して、停止している。
遙か前方には青い影が横たわっていた。
地平線に沿って見える巨大な影は大陸で、私達の故郷ン・ドント大陸だ。
来たぞ、ついに。
あそこに行くんだ!
「ゴブ、さて阿騎、話があるゴブ」
え?美観お姉さん?
「ゴブ、あの、私も聞きたいことがゴブゴブ」
玲門お姉さん?え?涙目?
迫り来る二人。
これは真剣に答えないと、いけない気がする。
「ゴブ、元帥さんってスケルトンの元帥閣下?」
「ゴブ」頷く私。
「ゴブ鶴さん、亀さんって?」
「ゴブ、鶴さんは仲のいい夫婦の鶴で、亀さんは人見知りをする亀ですゴブ」
「鶴と亀ゴブ?」
「ゴブ鶴と亀」
「ルカトナくんって誰?男の子?」
う、どう説明する?魔王のお子さんとか、正直に答えたらマズイ気がする。でも嘘はイヤだ、困った、困ったな。
えーと、考えろ、考えろ私、超空間はもう皆が知ることになった事実だ、どうする?
ルカトナちゃん、聞こえる?
寝ているかな?不在かな?
〈聞こえているけど、やっちゃったね、元帥さん〉
知れ渡ったモノは仕方あるまいっ!
で、今、皆のレベルで超空間に自力でこれるメンバー何人いるか分かる?
〈分かるよ、おばばさまだけ、以上1名のみ〉
おばばさまだけ!?
おばばさまを超空間に招待して、皆に疚しいところではないと説明してもらう!
これ、いい!
貴重な情報ありがとう!
〈いえいえ、ぼく、もう寝るね〉
「ゴブ、ルカトナくんってもしかして、女の子なの?」
美観お姉さん、なんで声が震えているのよ!
いや、女の子は私なんだけど。
「ゴ、ゴブ、ほ、ほら見てごらん、故郷、ン・ドント大陸とうとう、ここまで来たんだねっ!ゴブゴブ!」
「「……」」
か、感動に場面なのに、なんでこのタイミングで、こうなるのよっ!!
「「……」」
「ゴブ、ふ、複雑な家庭環境の男の子、ちっちゃい子で見た目5歳ゴブ?私が預かっているゴブ」
「ゴブ?どこで預かっているのゴブ?」
「ゴブ?子供?ゴブリンではないよね?阿騎くんが一番年下だし、ドワーフでもないしゴブゴブ?」
「……」
う、答えづらい。
いや、正直に言った方がいい、おばばさましか行けない場所があると。
「ゴブ、そこは超空間と言う場所ゴブ、今の皆の魔力、意思の力ではたどり着けない場所ゴブ」
「ゴブ!?」
「ゴブ!?何処なのそれ?そんなところあるの?」
まあ、普通は信じられないよね?
「ゴブ、今そこにたどり着ける者は、おばばさまだけゴブ」
「「何それゴブ!ちゃんと説明するゴブッ!」」
ああ、綺麗にハモっているなぁ流石だなぁボンバーズ。
それから次々に飛び交う念話。
だから皆、故郷が目の前だって!そこ見てよ!
(阿騎、コロだ、そのまま進むには無理がある。西に向え、小さな入り江が幾つもある。船も接岸できそうだ)
(分かった。コロ隊長、空から見た故郷はどう?)
(荒れている……詳細は入り江で話す。熱気球にはエノンとサイノを向わせた、船にはトアンとツードだ、出来れば船と合流してくれ。まだ見つかるなよ。本当は夜の方が見つかりにくくていいのだがな)
(分かった、スケルトンさん達を召喚して、霧を出してもらう。霧に紛れて着陸、接岸する)
(おい!そんな便利なこと出来るのか?)
(千里島の霧は菌糸算譜が作っているけど、元は元帥さんの魔法部隊なんだって、軍曹さんが言っていたよ)
(魔法部隊!?)
(いろんな部隊があるみたい、非公開だって)
ま、私が公開しているけど。
(船に着いたら早速召喚するね、コロ隊長達はどうするの?)
(入り江で安全確保して阿騎達を待つ。ちび達も召喚できると聞いたが、戦略を練り直すか。どんな部隊があるのか詳しく聞きたいな)
(ちびちゃんズ、部隊内容知っているよ、コロさん)
(そうか。今、各地の急襲の方法を考えている、スケルトン達を使わせたもらうか)
ン・ドント大陸、攻略が始まる。
次回投稿は2022/11/02の予定です。
サブタイトルは 変わり果てた故郷 です。