表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/406

【第52話】 無謀な挑戦

 今まで、何人のゴブリン達が研究所に向ったのだろう?


(ゴブ、何人も止めてきたゴブ、お前達も行くのか)

 

 お父さんの声が遠くに聞こえる。

 

 よろよろと立つエルフさん。


「クッ、つきあうか、止めるなよ、ばーさん」


「わしに寂しい思いをさせるなよ?」


「善処するよ」

 

 一斉に立ち上がる8人。


「駄目だ。お前達8人は次の世代の希望だ」


「ゴブ、しかしおばばさま」


「うちらはゴブゴブ」


「お前達は残れ、ナイダイお前もだ」


 おばばさまが口を開く。


(おばばさま、行ってきます)


 私は密かに念を送った。


「必ず帰って来いよ」


 無謀な挑戦が始まった。


 無理ゲー?それでも止めないよ。

 私に愛情を注いだお母さん、たとえ寿命が5年でも繋いでみせる。


(早く門を抜けるぞ、ドワーフが止めに入る)


(え?なんで?エルフさん?)


 即、念話で返す私。


(メイだ。人族はメイを恐れているが、欲しがってもいるのだ。メイが人族に捕獲されたら、妖精族は簡単に制圧される。研究所に飛び込むメイを人族はどうする?逃がすわけがない!絶好の機会と思うはずだ。そんなのドワーフが許すわけない!ヤベン、聞こえるか?)


(なんだ?エルフ、子供達は全員無事と聞いたが?俺は忙しい!話は後にしろ!)


(何を暢気なことを言っている?討ち入りだ!付き合え!)


(討ち入り!?カチコミか!!相手はどこのドワーフだ?シシナの眷属か?王妃の親衛隊か?一日2回も戦闘させる気か?少しは休ませろ!)


(人族、研究所)


(は?)


(解除装置を取りに行く)


(無謀だ、生きて帰った者は一人もおらぬ)


(だよな)


(面白い、その話、のった!)


(集合場所は弐の村、いいな)


(分かった)


(弐の村?)


 どこだろう?


(先日襲われ、廃墟になったゴブリンの村さ)


 弐の村に集まった戦士は

 サイザン

 メイドン

 エルフ

 ヤベン

 コロ

 阿騎

 以上6名。

 

 この6名で、人族の研究所を攻略することになった。


挿絵(By みてみん)


 お兄ちゃん(機織りの技能伝承者)以外、全て戦士系、回復系なし、とんでもないパーティーだ。

 目的は、延命プログラムの転写された、魔石の奪取。


 期間は1日。


 短すぎる!攻略なんて無理ゲーだ。でも今回は、それでもアタックする。

 

 皆、先の戦いでボロボロだけど。

 私も回復には遠く、走るのがやっとだ。


 それでも進む。

 

 最悪、私一人でもアタックする。

 

 私一人の場合は、研究所に侵入、人族の研究員を捕獲しフルボッコ、魔石の場所を丁寧に聞き出し奪取、退散となる。


 え、魔石が偽物だったら?大丈夫、自分の、このゴブリンの身体で試すから、問題なし。丁度今、ボロボロだしね。

 

 その前に、聞かなければいけないことがある。


「皆、何故、私達兄弟に付き合うの?生きて帰った者はいないのにゴブゴブ」

 

 エルフさんが答える。


「阿騎、今、お前に死んでもらうと困るのさ、私が。私の計画には、お前が必要だ。ここで恩を売りたい。私は私の利益のため、打算で協力しているだけだ。気にするな」


 エルフさんは打算と言ったがはたして。


「俺も同じゴブ」


 コロさんも同様らしい。因みにコロさんも、ヤベンさん同様、エルフさんが呼び出した。


「俺達に故郷があるのなら、一度でいい、その大地を踏みしめてみたいゴブ。ン・ドント大陸は憧れなのだ。その大地を走り抜けたい、そのための協力だ。夢のために命を落とすのなら、それも一興ゴブ」


「ゴブゴブああ、お前は小さい時から、故郷の話を聞かされていたからなゴブ」


「ゴブ、そう言うお前はどうなんだヤベン」


 コロさんが聞き返す。


「知っての通り、俺は5年生だゴブ。実は魔力還元が始まってね、明日の昼か夜頃には天に帰る予定だゴブゴブ」


「!!」


「ゴブ、お前達の討ち入りとは関係ナシに、一人でカチコミの予定だったのさ。だから俺が倒れても気にするな、以上だゴブ」


 いなくなる?ヤベンさんが?


 5年の寿命、実際目にすると、これはきついな。


「付き合ってやるよお前ら兄弟に。それで策はあるか?」


 エルフさんが問う。


「あるゴブ」私は一同を見回した。


「まず3班に分けるゴブ。1班は私、阿騎とヤベンさんゴブ。これが正面からアタック。敵を引きつける囮その1ゴブ。もし、私かヤベンさんが倒れたら、念話で送る。死を身近に感じたら皆、逃げていいよ。2班はエルフさんとコロさん。囮その2ゴブ。裏から進入もしくは外壁付近で後方攪乱をお願いしますゴブ。そしてメイドンとお兄ちゃん……サイザン。この二人は研究所に侵入し魔石を奪取。奪取後、即、離脱ゴブ。合図は念話かメイドン、信号弾とかあるゴブ?」


「ありますデス」


「ゴブ、色は?」


「お好みの色を用意しますデス」


「成功した場合、緑。失敗は赤で合図はするゴブ、いい?」


「了解デス」


「それと日中、お日様が真ん中に来たら作戦は終了ゴブ、どんな状況でも各自で退散ゴブ、どう?」


 ヤベンさんとコロさんが渋いお顔をしている。エルフさんもだ。

 コロさんがピッと指を動かす。


「ゴブ?」


「ゴブゴブ、俺と阿騎はポジションチェンジだ」


「何故ゴブ?」


「ゴブゴブ、阿騎、お前は強力な戦士だが、短期決戦型だゴブ。正面の囮に向かない。その点、俺とヤベンは熟練の戦士だゴブ。経験が豊富で囮に向いているゴブ」


「戦いの記憶なら、玲門おねえさんから沢山貰っているゴブ」


「よく聞けゴブゴブ」


 ヤベンさんが一歩踏み出す。


「いいか、記憶があっても、理解できなければ意味が無いのだゴブ。戦いの記憶があっても、再現できない技、戦術は多くあるゴブ。良くも悪くも、やはり経験なのだゴブゴブ。それにお前は今、動くのがやっとだゴブ」


「ふふっゴブゴブ」


「ゴブ?何がおかしい?コロ?」


「ゴブ、いや動くのがやっとなのは皆同じだゴブ。おそらく一番元気がいいのはサイザンくらいだろうゴブ」


「ゴブ?お兄ちゃんゴブ?」


 ヤベンさんがニヤリとする。


「ゴブこいつは凄かったぞ!メイとのコンビネーションで次々に魔獣を倒していったゴブ。俺の後はこいつだゴブ。おばばさまのガードゴブ」


 そんなに?


「ゴブ、阿騎が伝えた技を使いこなし、凄い働きだったゴブ」


 コロさんまで、お兄ちゃんを褒める?


「新しい技も派生しているゴブ。阿騎、お前の技が無かったら今回の戦で、我々は死に絶えていただろうなゴブゴブ。皆お前には感謝しているゴブ」


 田崎さん、ぬき、はこの世界で沢山のゴブリンや妖精達を助ける技になったよ。

次回投稿は2022/08/14の予定です。

サブタイトルは 癒やしの波動で癒やされたい です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ