【第49話】 捕獲部隊
捕獲部隊は全部で8匹。
容姿は分からないが、赤い光の点が脳内で8個点滅している。
散開していない。
集結、固まって移動しているな?
警戒しているのだろうか?
前方100mくらいか?
これなら、ファイヤーウォールで囲めるぞ。
意識を集中し、その8点をファイヤーウォールで包む。
集中した意識に捕獲部隊の意識が触れる。
あざ笑うヤツ、未だにこの程度の魔法、ゴブリンは何年経ってもクズだな。
無視するヤツ、くだらん。
怒るヤツ、高等な我らに対して、魔法で攻撃だと?ゴミ風情が!
哀れむヤツ、しょせん下等生物。
詰るヤツ、我らにこの程度の攻撃?身の程知らずが!
諂うヤツ、まあまあ皆さん、折角ドワーフの女王がよこした獲物、解剖を楽しみにしましょうよ。
ファイヤーウォールは収縮し、大地に沈む。
笑うヤツ、なんだ今のは?はははははっ!失敗か?消えたぞ?、粗末な術だ、捕獲の意味はあるのか?これがホルダーの術か?やはり、デマだったな。
疑問に思うヤツ、おい、おかしくないか?霧を使用しないか?
そうだね、おかしいよね、大地に沈んだファイヤーウォールはエネルギーを増しながら収縮している。
最後に疑問に思ったヤツ、要注意だな。
ねえ、チリチリと小さな霊音が聞こえない?
結晶化しているファイヤーウォールが見えない?
え~と、水の魔法はこれぐらいでいいはず。
ドオオオオオンッ
8っの点滅は4っになった。
脳内アラームが点滅する。
魔力の回復が追いつかない?
分かっていますよ、使いすぎでしょう?
でも、ここは退けないんだ。
喋る魔獣、どうやって作った?
あの針の魔獣は合成生物と言っていたよね。
何と何を合成したの、人族。
恐ろしい実験をしているよね、私達の実験結果で何を作ったの?
捕獲部隊?部隊?
私が更に挑もうとすると、魔力感知ができなくなった。
そして黒い霧、濃い黒霧が漂い始めた。
星明かりも届かなくなり、森の中は異様な闇に包まれ始める。
さすがに、これはマズイ?
駄目だ、魔力が遮断された、念話と魔力感知が使えない。
霊視は……使える。
先程の戦いと同じ条件だ。
!
虫の鳴が止んだ?
危険を感じ、ブーメランを飛ばす。
ヒュン。
ブーメランが飛び去った後は、音のしない世界が広がる。
投げたブーメランは魔力で満ちているので、ほんのりと光りながら弧を描いているのが分かる。
〈この黒い霧はやっかいだ〉
ブーメラン、気がつくよね?
しかし、相手が格上とは?
4匹は倒したが、このままでは捕まる。
相手に考える時間を与えては駄目だ。
速攻で押し切らなければ勝てない……勝てるか?
突然、真横に何かが現われた。
真っ黒いオーラが私を包み込もうと広がる。
な、いつの間にここまで接近したの!
槍を横に薙ぐが手応えがまるでない。
この黒い霧やっかいだ!相手の距離感が掴めない!
ドカッ、と何かがぶつかる音。ブーメラン、当たった?
「ウギャッ」
そこか!?
声に向って容赦なく抜きを放つ。
この攻撃は手応えがあった。
霧が漂う闇の中でそれは、蛍のように光ながら魔力還元していった。
こいつ、私に接近することだけに集中して、ブーメランに気づかなかった?
戦い慣れしていない?
あと3匹。
ブーメランを拾い、辺りを警戒する。
……わからん、何も感じない!オーラも見えない。距離をとった?
黒い霧って、どのくらいの大きさなのだろう?
こうなったら。
力の限り上空へジャンプする私。
どうだ?
やった!霧を抜けたぞ!
上からは霧の状態がよく分かる。
あれ?砦の方が明るい!燃えている!?
いや、今は目の前の敵に集中だ!
私がジャンプするのは想定内らしく、直ぐに無数の針と氷の矢が飛んできた。
氷の矢?魔法使いがいる?
しかし、私のジャンプ速度は相手の想定を上回ったらしく、一本も当たらない、擦りもしない!
遙か上空から、矢と針が飛んできた場所をしっかりと確認する。
3ヶ所、しっかりと覚えた。
オーラも見えるし、これで確実に当てる!
いくぞ、残りの魔力を全て使い、マクシマムで雷を落とす。
これで終わりだ!
雷鳴が響き、3ヶ所に落雷した。
ん?
え?
落雷の寸前、黒い霧は素早く一ヶ所に集まる。
雷は黒い霧の表面を伝わり、大地に流れる。
ガードした!?
でもそれじゃ残りの2ヶ所は?直撃?
「がっ!」
短い断末魔を残し、2つの黒いオーラは消えた。
(危ない、危ない、なんて攻撃だ。集めなかったら死んでいたぞ。これは退散だ。それともこれだけ魔法を行使、魔力切れになっていないか?いや生きて帰れば、次は確実に勝つ。聞こえているだろう?ホルダー阿騎?次はきっちり捕獲させて貰う。今回はここまでだ)
上空から見下ろし、黒いオーラを睨む私。
恐らく、こいつも負傷している。
最初の水蒸気爆発と今の雷撃、再生はしているかも知れないがオーラが弱っている。
ここでトドメをと思ったが、今の私では無理だ。
黒いオーラはローソクの火か消えるようにフッと消えた。
え?
凄い速さで離脱して行くのが魔力感知で分かった。
まだ余裕があったのに、逃げた?
バランスを崩し、自由落下する私。
あ、風魔法発動しない!
大地がグングン迫ってくる。
やば、やば!やばい!まずい!
高さ、速度、計算すると私の身体には何トンの力が加わる?
これは死……!
ぽすっ。
びよーん!
ん?衝撃が……こない?
なんか揺れている?
「ゴブ!青3番!」
青3番はその長い腕で、見事に私をキャッチした。
安心したのか、私が覚えているのはそこまでだった。
疲れ果てた私はそのまま眠りに落ちていった。
次回投稿は2022/08/07の予定です。
これ間違いです、すみません2022/08/10の予定です。
以後注意します。
サブタイトルは 砦へ です。