【第46話】 死闘
「ゴブ、すまん阿騎、エルフを助けようと」
だから喋ったら駄目だって!
二人して青3番の脚に隠れたが、それでも狙ってくる!
ヒュンヒュン
カツッカツ!
「!」
ヤバい!この針、青3番に刺さる!純鉄だよ、青3番は!
何匹いる?
念話ができない!でも声を出したら、それこそ狙い撃ちだ!
ヒュンヒュン。
「ゴブッ!あぶな!」
トストス。
向こうからは見えている?
青3番はその大きな手でエルフさんを摑む。
そして宝物のように手に収める青3番。
青3番は敵を探し不規則に動き回るが、あざ笑うかのように攻撃してくる。
次々に針が刺さり、青3番の関節が壊れていく。
対ゴーレム用の新兵器?新型魔獣か?
くそっ、なぜ分かる、私達の位置が?魔力は使えない、視力は黒い霧でよく見えない、相手も魔力を使ったら光るはずだ。では聴力か?音で判断している?コウモリみたいに超音波?違う、超音波だったらゴブリンの耳が反応するはず。
ズルリ、音がする。
トストス。草木を散らし、攻撃してくる何か。
瞬時に反応し、音に向け桜花を放つナイダイさん。
「ゴブ!なめるな化け物!」
ドカッとヒット音が響く。
だから声は駄目だって!
ん?
当たった?
「ギャウッ」
悲鳴と共に魔力還元する何か。
技は有効だ!当たれば。
カラン、と乾いた音を立て上空からブーメランが落ちてくる。
使えと?エルフさん?
見上げてみると、ゴーレムの手の隙間から、エルフさんの小さな手が微かに見える。
ザザザッ、と離れていく音。
距離をとった、と見るべきだな。
それでも攻撃してくる。
トストス、と乾いた音が私の周囲の草木を吹飛ばす。
しかしこの音、足音?移動音?まるで……。
〈蛇〉
トストス。
近くの木々が弾け飛ぶ。攻撃が正確だ!
何がいる?
ズルリ。
蛇みたいな生き物か?
気配がしない!
〈ヘビ〉
ヘビ?
!
熱だ!
熱感知している!
ヘビは確か熱感知できる器官があったはず!
即座に私は、魔法で体温を下げる。
一瞬身体を包んだ魔法が光るが、即座に移動を開始する。
突然止む攻撃。
「……!?」
気配を伺っているな?
熱で判断していたんだ!でも反撃はどうする?私の武器は拳とブーメラン。魔法は位置が分かるし、逃げ遅れれば仕留められる。
一体あの針、どうやって飛ばしているのだ?
息を殺していると、私の真横をヘビが通る
いやヘビではないな、ヘビのような生き物だ。
頭部は獅子のようであり、前頭部に長い角が一本。身体は鱗ではなく針がびっしりと生え、まるで体毛みたいだ。新しい魔獣か?臭いが凄まじく、悪臭に酔い嘔吐しそう。
黒い霧でよく見えないが、直径2m長さ5mくらい?の筒状で、ヘビよりも芋虫に近いか?
うひ~虫は苦手なのにっ!
その巨体が素早く動く。
びよん、と跳ねてナイダイさんの槍を躱す。それと同時に針がうねうねと動いて、凄い速さで放たれる。
〈筋肉を使い、針を放っている〉
筋肉!?なんだこの生き物は!落下地点を予測、移動。
そして落下と同時に抜きを放つ。
「ゴブッ!」
横の攻撃に針は弱いらしく、ベキベキと音を立て砕けた。
そしてドカッと吹っ飛ぶ異形のヘビ。
即座にその場を離れ、次の獲物を探す私とナイダイさん。
ナイダイさんが囮である。ナイダイさん目掛け針が放たれる。音からして残り5匹。
音を頼りに私は近づき2匹目を始末する。
小柄なゴブリン。その中でも私は子供、更に小さい。視界の悪い黒い霧の中を這うように移動する私。私も気分はヘビだね。
いた。
相手は私に気がつかない。
!
何か雰囲気を感じたのか突然振り向き、デタラメに針を放つ魔獣。
今は私がプレデターだ。
田崎さん直伝のすり足で間合いを詰め、一撃!
あと3匹!
「ゴブッ!」
前方で声が上がる。
ナイダイさん?
バキン!と派手な金属音が響き渡る。
それと同時に大音響が響き大地が揺れる。
わわわ!振動が!
青3番が倒れた!?
後3匹、どうする?ナイダイさんや青3番に近づくと狙い撃ち?エルフさんは大丈夫なの?
相手の位置が分からない。
〈花丸印〉
?
花丸?あの女の子?あの女の子は……?
!
そうだ霊視だ!
あの子ができるのなら、私にだって。
で、どうするんだ霊視。
何が見えたと言っていたっけ?
オーラ?
そう考えた瞬間、黒い霧の中で、更に黒く蠢く何かが見えた。
なんだあれ!
それに向かいブーメランを放つ。
微かな音を立て大きく弧を描くブーメラン
森の中だ、当たるなよ木々に。
ブーメランは黒いオーラの真後ろから急襲した。
ゴツ、と鈍い音を立て再び弧を描くブーメラン。
慌てて向きを変え、針を放つ。
瞬時にすり寄り、こぶしでぇ!
「ふんっ」
パッと散る黒いオーラ。
あと2匹!
パシッと戻ってきたブーメランを手に辺りを警戒する。
え?
あれ?
黒い霧が少しずつ晴れていく。
いや山頂の方に引き上げていく、が正しい描写だ。
残ったのは?
両足を破壊された青3番と右手に針が刺さったナイダイさん。
いや青3番の各関節は……ひどい、針が刺さってボロボロ、動くのは指くらいだ。
!
エ、エルフさんはどこ?
「ゴブ、阿騎、エルフが……」
苦しそうに喋るナイダイさん。
まさか針は毒針か?
「ゴブ、ちと傷が深い、持って行け。エルフが拉致された。きっとそこに子供達もいるゴブ」
ひょいと投げられる槍。
それはパシッと音を立て私の手に収まった。
次回投稿は2022/08/04 20:00 の予定です。
サブタイトルは 思い出の歌 です。