【第128話】 待っている彼女
今日は。
号外です。
校長先生とは、かなり孤独な職業なのか?
ホッシー先輩やリュートお母さんが帰っても、トルクちゃんは暫く帰らなかった。
私やイオリちゃんにお話があるのかな?
学校のありかた、ン・ドント大陸を取り巻く世界情勢、西の大陸の食糧不足と竜騎士達との交渉、東の砦の分校、呪われた街サシキの魔力上昇、予見者が漠然とした驚異を感じ始めている等、色々お話ししてくれた。
中でも騎士団の情報は凄かった。
予見者の驚異を受け止め、現騎士団は全て解散、再編となったそうだ。
これは未だ極秘で、時期を見て発表するそうだ。
「なぜそこまでのお話を知っているの?トルクちゃん?」
「構成員の名前が、極秘の組織がある、私はその一人だからだ」
「!」
イオリちゃんがかなり驚く。
「……それは口にしてはいけないのでは?トルクさま」
「ここならよい、それにこの話、真偽、確かめようもあるまい?」
王都の運営は『リリ』と言われる10人の各組織の代表で決めるそうだ。
トルクちゃんもその一人。
他は不明。
勿論トルクちゃんは喋らない。
このお話は危険ではないのか?
大丈夫かな?
表に出ないお話だよね?
「竜騎士との交渉は、私から話を持ちかけたのだ」
これは、貴重な情報が聞けそうだが?
どうする?こちらの情報も流れないか?
竜騎士との交渉は先生や生徒の派遣だった。
植物、主に農業に関する先生や生徒を派遣して欲しいとのこと。
……かなり危険じゃないか?それに学校、襲撃?しているよね、あの人達。
どう判断するのだろう?
それから、東の砦は思った以上に人材が集まり、分校ができるらしい。
……よいお話が色々聞けたが、長かった。
正直に言うなら眠かった。
そこで目の冷める話題を振った。
西の塔についてだ。
トルクちゃんはイオリちゃんを見た。
「復活させる気か?できるのか?」
……西の塔と聞いただけで、復活の話がでた。
これは迂闊には話せないな、相手を見て聞かないと。
まあ、トルクちゃんだから聞いたんだけど。
裏目に出たかな?
内容が内容だけに、警戒どころか話が漏れれば、騎士団に目を付けられる。
最悪、ン・キングみたいに追放されるかも。
情報を集めるのはとても難しい。
メイドンについて調べれば調べるほど、私が調べている、と周りに教えているようなものだ。
人に聞けば聞くほど、それだけ漏洩する、と思った方がいいかも。
密かに調べるが、どれだけ難しいか痛感している。
直接西の塔に乗り込んで、暴れても今後がある。
獣人族や周囲の人達に迷惑が及ぶのは本意では無い。
難しいなぁ。
忍び込んで、メイドンを確認、メイドンが自ら起動した、という形にしたいのだが。
「止めておけ」
一言トルクちゃんは言った
「できない」
私は即答した。
「……辿り着いたところでメイさまが動くかどうか分からぬ。騎士団ともめると、獣人族との魔石交渉に支障がでないか?」
「大人の答えだ」
「大人じゃ。これは『リリ』や校長ではなく、友人としての忠告じゃ。復活してどうする?皆が喜ぶか?起動しなかったら、もめ事が残るだけじゃぞ」
「一目会いたい」
「……まるで会ったことがあるような物言いだな」
「メイドンのお腹には体内工場がある」
「なっ!」
「ここで壊れた部品を修理、生産して自分自身を修理する」
「ど、どこで得た知識じゃ!?初耳じゃ!イオリ、知っていたか!?」
「……いえ」
「もし、この体内工場が壊れていたら、と考えた。これならメイドンはいつまで経っても復活しない」
「アッキー……明季さま、メイ様を修理できるのですか?」
「修理できそうな人物を知っている」
開発部長、ン・キング、ドロトン先輩。
148機のスーパーゴーレムを作り上げた開発部長と王さま。
技術力はあてにできると思うけど?
まあサイザナン・シリーズは驚いたけど。
試作品とは……ねぇ、かんべんしてよぉ!
「メイ様を修理?超古代の遺物、魔王に挑む兵器を修理!?できるわけがない!それこそ止めておけ!暴走したら誰が止める?静かに寝かしておけ、無理して起す必要はない。今まで通りでよいではないか、そっとしておけ!事を荒立てるな!」
イヤだ。
「忍び込み、密かに状態を見たい。そのために情報を集めている」
「なぜそこまでメイ様に拘る」
ダチだからだよ。
私の大切な!
そしてお兄ちゃんの!
私がここにいる、理由だ!
「言えない、起動したら分かることだ。協力してとは言わないけど、知っていることは教えて欲しい」
「はははっ難しい質問じゃな、独り言を言えと?バイオリーナ・バウリス、このためのお前か?」
イオリちゃんは答えない。
「西の塔はン・キングの後、構造そのものを変えた。内部は別物じゃ。施工したのは、守護している新騎士団じゃ」
「え?騎士団自ら?」
「機密保持のためじゃ、あいつらは手強いぞ。ン・キングの侵入を許した騎士団は裏で即解体され、新たに騎士団『静』が作られた。騎士団『静』は再編された騎士達で全騎士団員60名、周囲は騎士団『弐』と騎士団『五』が交代で警備している……バイオリーナ・バウリス、時々茶を飲みに来る、今日はここまでじゃ」
これでイオリちゃんと二人になった。
静かなイオリちゃん。
私は聞いてみる。
「イオリちゃんは反対?」
「メイ様のことですか?」
「うん」
「好きになさいませ、金狼は自由の象徴では?」
「好き勝手にしたら、周りは迷惑だよ!」
「うふふっ、それでもアッキーは挑まれるのでしょう?」
私は静かに頷いた。
「きっとメイ様は待っておられます。そんな気がします」
次回投稿は本日 2023/05/20 22時の予定です。




