【第122話】 怒る者と笑うヤツ
今晩は。
投稿です。
勝負は一瞬で決まった。
いや、勝敗でいうなら引き分けである。
お互い吹っ飛んだのだ。
グロスはドドンと大地に叩きつけられ、動かなくなった。
ドングリくんは大きく後ろにジャンプし、ストン、と大地に足を降ろす。
そしてペタン、と座り込んでしまう。
「え?」
「なっ!?」
周囲は何が起きたのか、わかっていない様子。
(動き、分かった?ドングリくん?拳の握り方、当て方、魔力で層を作り、防御、力を拡散させるやり方、そして全身の筋肉の使い方!)
(うん、分かった。すごいや!動きが、まるで僕が動いているようだった!)
(あははっ、君が動いたんだよ?僕が憑依して動かしただけじゃない、ドングリくんの意思と僕の意思が重なったんだよ、そうだね、ドングリくんに力が移ったと言えばいいかな?)
(よくわかんない)
(でも、動きや技はそのまま理解出来ただろう?移した力は残っているだろう?)
(うん、これ、もらっていいの?)
(ああ、力の贈り物だ)
(ありがとう!技も反復するよ!けど……)
(けど?)
(これ、筋トレが必要だ!絶対明日、筋肉痛になるよぉ!いや、もうなっているよ!)
(ふふっ、アッキーをよろしく!)
(え?君は明季姫じゃないの?)
(僕は阿騎、明季姫じゃないよ、亜紀の一部さ)
(わかんないよ?)
(遙か昔のゴブリンで、残留思念、おばけ、幽霊、亜紀とエンキドウ……シルバーっちの思いさ)
(???)
(ふふっ……アッキーでいいよ。さほど変らないし。じゃ、またね)
(あ、あり、ありが……)
そして阿騎は私と重なる。
そうとしか、表現できない。
スライムみたいに分裂したってことかしら?そしてまた元にもどったと?
ネクロマンサーの能力だろうか?
これ、生き霊を憑依させたってこと?
いや死霊か?
でも私だぞ?
ローローとネーネーに存在が似ている?残留思念なのだが、ちょっと違う?
相手を思う気持ちは、伝わるって事か。
でもこれ、魔力が無いと無理だ。
なら、魔力保持者が相手を恨むと、呪いになる?
心配すると、その思いは相手を護るんだ。
シルバーっちの心配が、私を通してリアルに干渉した?
呪いの反対ってなんだ?思いやりか?違うな、言葉がない。
祝い?祝福?この場合、違う気がする。
加護?違うな。
お友達や、親、姉妹、兄弟、夫婦、お互いを思う気持ち、その気持ちが現実化する、これ理屈はわかんないけど、使えるぞ。
想いが伝わり、相手を護り助けるんだ。
逆の場合は、想いが相手に伝わり、相手を不幸にする、これは呪いだ。
力は同じでも、方向性が真逆だ。
ならば、私は人を呪わないようにしないと。
この魔力量だ、相手によっては死んでしまうのではないか?
これぞ呪殺、恐ろしい現象だ。
……でもこれ、亜紀を虐めた奴等が目の前にいるとしたら、どうする?
……よろこんで使うかな?
思い知れ、と。
そして亜紀はきっと後悔するだろうな。
きっと、使うとしたら別の形で使うだろう。
何か、形はないだろうか、イメージできる象徴。
相手を思う気持ち、何がいいだろう?
お父さんや、お母さんが子供を思う気持ち、飾らないそのままの気持ち。
阿騎や明季は知っている、亜紀が欲しかったもの、そしてその気持ちは生きている者を越える。死者であり想いであるエンキドウも、心配して想いを送るのだ。
ああ、百合の花がいい。ユリを象徴としよう!
よき想いは色とりどりのユリをイメージして、相手に送ろう。
そして、私に仇をなす者には黒いユリをイメージするか?いや、これは怖いな、止めておこう。
よし、まずはこの放浪のゴブリン4人にユリをプレゼントするイメージを送ろう!
皆にハブられた私をパーティーに誘ってくれたのだ、こんなに嬉しいことはないっ!
むくり、お起き上がるケンタウロスのグロス。
「きさま、何をしたっ!」
私に向っての物言いである。
「倒したのは、ドングリくんよ?」
「ふざけるな!俺が見えないとでも思っているのか!」
凄まじい怒り、ああ、この波動にレイランお姉ちゃんは耐えられないんだ。
今のグロス、毒の塊みたいだ。
「なぜクルミちゃんを狙った?」
卑怯者め、なんと答える?
「はあ?間引きだ」
え?
「早めに間引きしないと、野良ゴブリンはすぐ増える。害獣よりタチが悪りぃ」
先生をチラリと見る。
あ、少し怒っているかな?
クラスメートを見る。
グロスのパーティーメンバーは、ニヤニヤしている。
ハピ子は?
あ、激怒?
ダンちゃんは?
「おい、最近ケンタウロスも増えてきただろう?間引きが必要じゃねぇか?」
あ、ぶち切れてる。
「お前にできるか?あ?だんちゃん?」
ここは、ン・ドント大陸、王都聖龍門学校。
義務教育ではない。
学校という名の戦場か?
前世の記憶がじゃまだな。
学校はこうあるべし!という概念が外れない。
ダンちゃんが動こうとすると、グロスのパーティーメンバーが動いた。
「俺らのパーティー、つええぞ?」
あ、ダンちゃん、躊躇った?
そしてこのグロスのパーティー6名が、揃って私を見る。
……なんでかな?
クラスの皆も私を見ている?
ああ、実力が知りたいのか?
ふんっ、相手にしなかったくせに!
仲間はずれにした割には、気になるとでも?
ここで倒れれば、ああやっぱり、となり、グロスのパーティー、全滅させればどうなる?
怖がられる?それとも強者として扱い、距離をおくか?
どっちもイヤだな。
私が欲しいのはそんなものじゃない。
ただ、間引きという言葉はゆるせん!
そう思った瞬間、ドングリくんが動いた。
次回投稿は 2023/05/16 20時頃の予定です。




