【第121話】 ゴブリン阿騎
今晩は。
投稿です。
「放浪のゴブリン?」
「ゴブ、野良ゴブリンのことゴブ」
え?なにそれ、酷い言い方だな。
じっとドングリさんを見る。
放浪?彷徨っているのかな?
怒りが少し込み上げてきた。
大陸ゴブリンは私達(あ、今は私、獣人族だけど)の元、このゴブリンから魔のゴブリンや秘のゴブリン、北のゴブリンが生まれたのだ。
なぜ大事にされていない!?
(はい、彼らは私達の元です)
シルバーっち?
手は差し伸べなかったの?野良ゴブリンなんて、酷くない?
それに、魔力に弱いなんて!
生き残るのに、逃げるのは手段の一つ、確かにそうだけど。
でもこの世界、逃げるだけでは、いつか追いつかれるわ。
(拒否されました)
え?なんで?
(私達に依存してしまうと、言われまして。弱い我々が、更に弱くなるから援助はいらないと)
でも!
(影ながら助けてはいるのですが。彼らがいたから我々は、ここまで生き延びることができたのです。秘のゴブリンは直系ですが、北のゴブリンは基本彼らとの混血です)
シルバーっち、ゴブリン、みんなまとめて面倒見てやる!とか駄目?
(私は、秘のゴブリンと北のゴブリンにしか繋がりません、彼らには繋がらないのです)
悲しそうだな、シルバーっち。
(ホルダー阿騎さま、今、目の前にいるゴブリンは北のゴブリン、私に頼ることなく、自分達で頑張ろうとする若者達です。どうか彼らに力を示してください。私はこの者達が、心配で心配で……)
力か、そんな立派な存在ではないんですけど?
でも、応援はしてあげたい、クラスメートだし!
クラスメート……嫌な思い出しかないけど、今は?
私にできること?なんだろう?
虐められていた亜紀は、何を望んだだろう?何が一番、欲しかったのだろう……。
そう考えた瞬間、とんでもないことが起きた。
「あ?」
「ゴブ?」
ドングリさんの目を通して、私が見えたのだ!
ええええっ!?
ビックリしている私のお顔。
あ、アイパッチが少しズレている。
私はアイパッチのズレを直した。
……私が二人存在している!?
あああああああっ!
これっ!
ゴブリン阿騎が、ドングリさんに憑依しているっ!
(ド、ドングリでいいですよ、阿騎さま)
……僕も阿騎でいいよ。
「おい、何こそこそしている?目障りなんだよ!」
あ、ダンちゃんと揉めていたケンタウロス?
「やめなさい、グロス、パーティーを作ったのなら座れ!」
カラン先生が止めに入る。
「コソコソしている奴が嫌いでね、ただ逃げ回るヤツだぞ、こいつら!イライラしてくるんだよ!目障りなんだよ」
魔力を込め、ドングリを睨む。
ドングリの意思と魄は、恐怖を感じ取り、ぎゅっと縮まる。
いや、瞬時に痩せる?そんな感じだ。
その恐怖心はダイレクトに私に伝わる。
ドングリくん、こんなに怖がらなくてもいいのに。
あ、憑依している阿騎が!?
「ゴブゥ、ドングリくん、怖がるなよ、こんな奴ゴブゴブ」
わ、私の声だ!ドングリくんが私の声で喋っている!
私が憑依しているから、当然の現象か?
「え?え?ゴビッ!?な、なにゴブ?今のは?これはなにゴブ!?」
今度はドングリくんの声だ!
まるで、ドングリくんが一人二役をしているみたいだ!
なんだ?この現象は!?
エルフ達が騒ぎ出す。
「お、おい!霊視してみろ!何か取り憑いているぞ!?」
「せ、先生!古代のゴブリンです!それも……すごい魔物級のゴブリンがドングリくんに取り憑いています!き、騎士団を!」
「先生!これお祓いできませんよ!早く聖騎士かセンバ騎士団長を!」
このエルフさんのパーティーは、優秀と見るべきか?
しかし魔物級とは失礼な。
「はあぁ?何を言っているエルフ?」
「グロス!下がれ!そいつは今危ない!」
「野良ゴブリンが危ない?こいつら野良猫にメシ取られる愚図だぞ?」
そう言って、蹄をカツンと鳴らす。
ビクッと竦むドングリくん。
「おい、これだけで怖いか?このクズが!」
「やめろ、クズはお前だ、グロス。何を苛ついている?」
「ああん?ヨダン、また蹴り飛ばされたいか?」
巨大なケンタウロスとオーク。
ゴブリンの目から見ると、巨人だな。
ダンちゃんを前足で威嚇するグロス。
すっ、と身構えるダンちゃん。
反応早いな。
ダンちゃん、巨大なオークに似合わない俊敏さである。
が、グロスはくるり、と体を変え、後ろ足でクルミちゃんを狙った。
まずい、これはヒットする!
私が動こうとすると、阿騎が止めた。
手を出すな!
迫り来る痛みに、身構えるクルミちゃん。
恐怖でゴブリン達はみんな動けない。
(ドングリくん、怖くないよ、僕が憑いている。身体はこうやって動かすんだ、いいかい?)
ケンタウロスの後ろ蹴りより速く動くドングリくん。
クルミちゃんを抱き、華麗に身を整える。
そして、見事に空振りしてバランスを崩すグロス。
こいつ、バランスを崩すくらい力を込めていた!
ゆ、ゆるせん!
「ゴブ、クルミさん、大丈夫ゴブゴブ?」
「……ゴブゥ?あなたは……誰?ドングリじゃない!」
「誰だと思うゴブゴブ?」
クルミちゃんをゆっくりと大地に降ろし、魔力を漲らせる阿騎。
明季の目の前には、バランスを崩し転ぶ醜態を晒したケンタウロス・グロス。
「無様ね、あなた、ゴブリンに、恨みでもあるの?」
静かに私は聞いてみた。
「ああ?なんだ鼻血?気にいらねぇだけだよ」
「そう」
気に入らないだけで、蹴り飛ばすか?
当たっていたらクルミちゃん、死んでいたぞ!
「おい、俺とヤル気か?また鼻血、噴くぜ?」
「ケンタウロスは趣味じゃないの、彼が相手してくれるって」
私とグロスの間に立つドングリ(阿騎)くん。
周りの者は誰も止めない。
先生も見ている。
「野良ゴブリン風情が、俺の前に立つんじゃねぇ」
ドングリくんは私の声で言った。
「ゴブ、なら動かしてみなゴブゴブ」
次回投稿は 2023/05/15 20時頃の予定です。
2023/05/14 現在 1章 21話 まで挿絵が入りました。




