【第27話】 私の名前と倒れる理由
サブタイトル変更しました。
エルフさんを先頭に、長い列を作り進むゴブリン族。
今回の移動は、妖精の走り、飛ぶような走りではなく、ドワーフに見えるように歩く行進だ。
ドワーフに対して敵意が無いことを示すためだ、と説明があった。
なぜ何時もエルフさんが先頭なの?と、聞いたら、エルフさんは索敵が出来て、罠をよく見つけるから、だそうだ。
「そっちにはドワーフの罠がある、こっちだ」
エルフさんの後を追って進む私達。
彼女は、風景に違和感がある、と言って的確に罠を回避する。
彼女の後ろには、旗手がいて後続の目印になっている。
風に揺れるゴブリンの旗。パタパタと揺れ、綺麗な刺繍がキラキラと輝く。
コロさんは最後尾、殿だ。非常に目がいいらしく、この森の中でも先頭の旗の位置が分かるそうだ。長い列、怪我人が多いな。道も無い荒れた森の中をドワーフの砦を目指し進む。
「ゴブゴブ、おばばさま」
「なんだ、リュート?」
「砦までの時間、相談をいいでしょうかゴブゴブ?」
「いいぞ、なんなりと申せ」
お父さんはお母さんを見て、私を見る。
「どうした?何が聞きたい?立ち止まるな、ドワーフ達が待っておる」
俯きながらとぼとぼ歩くお母さん。
口を切り、相談したのはお父さんだ。
「この子は強い戦士だが、よく倒れるゴブ。私の目には健康に見えるが、何が原因なのか、おばばさまには分かるかゴブゴブ?」
え?と驚く、おばばさまの両脇の戦士達。
「ふむ、倒れる?少し見てみるか?よいか小僧?」
「い……いいですけど……ゴブゴブ」見るとは?ちょっと怖いかも。
返事をした瞬間、ふわっ、と何かに包まれる。あ、これ魔力だ!
おばばさまの鋭い目と、私の目が合う。
「ほう、いい目をしている、この目は……なるほど」
おばばさまの老獪な意思と、私の二人分の意思、前世の意思と今のゴブリンの意思がぶつかったような印象を得る。お互いに弾き合う?が正解か?
「どうでしょうか?ゴブゴブ」
祈るような声で、お母さんが尋ねる。
おばばさまは静かに私を見つめる、そして徐に質問をした。
「お主、ホルダーという言葉、どこかで聞いたことがないか?」
「!」
ホルダー!!聞いたことがある!校長先生の言葉だ!
まずい?どうする?なんて答えればいいのだ?
じわりっ、と背中に汗をかく。
「わ、わかりませんゴブ」
「分からぬ?まあよい。リュートよ」
歩きながら、お母さんをしっかりと見据えるおばばさま。
「は、はいおばばさまゴブゴブ」
「この者はいたって健康じゃ。問題があるとすれば」
「ゴブ、あるとすれば?」
「魂魄じゃな」
「え?」
「この者、心は女の子じゃ」
!!!このばーちゃん凄い!凄すぎる!何者だっ!
「は?ゴブゴブ?」
理解が追いつかない、みたいな顔のお母さん。
「身体は男の子で、心は女の子じゃ、倒れる原因はおそらく、これじゃ」
お、おばばさま、鋭い!
チラリ、と私を見るおばばさま。
更にビックリした顔で、私を見る槍戦士達。
その後ろで目を見開くレイモンお姉さん達。
「魂魄が合っておらぬ。本来ならば心配ないことなのだが」
「そ、それはどういうことですか?」
私は勇気を出して質問してみた。心配なし?違うでしょう!心配してよ!
「本来我々ゴブリンは男性、女性、どちらにでも意思の力でなれるのじゃ」
「え~っ!?ゴブゴブッ!」
初耳!
「驚くことはあるまい?インストールされた記憶の中になかったか?」
「ありませんゴブ」
そんな記憶これっぽっちもない!なに、その能力?呪われた池にでも落ちたのかしら?
「個人の力にも依るが、瞬時に男女を変える者もいるし、数年かけて変わる者もいる。お前の言葉でいうブーステッドフェアリーが、その能力を再現できるかはワシにも分からぬ。まあお主は、心思うままに生きるのだな、それしか言えぬ」
「おばばさま、ではこの子は……ゴブゴブ」
「心配なし、ニトの見立て通り、健康そのもの。もう倒れることはあるまい。安心したか?リュートよ、ニトよ」
「はい、魂魄……魂は女の子で魄、身体は男の子、ゴブゴブ」お父さんの眉間に皺が寄る。
「か、かーちゃん、弟は妹なのかゴブ?」
「そ、そうねゴブゴブ」
お母さん、戸惑っている?
「おお、兄ちゃんは嬉しいぞ、弟と妹がいっぺんにできてゴブゴブ!」
無邪気だね、お兄ちゃん。でもそんなお兄ちゃん、大好きだよ。
「ゴブ、女の子……」
誰かが呟く。
この声は、多分レイモンお姉さんだ。
なんだろう、めちゃくちゃ強い視線を感じるのだが。こわくて振り向けないよ、この視線、どんな意味があるの?
「女の子?ゴブゴブ」
あ、この声はヤベンさんだ。こっちも痛いほど視線を感じる。
わ、私はおばばさまの言葉どおりに、心思うままに生きますからね。
「おばばさま、もう一つお願いがあるのだがゴブ」
「なんだニト?申してみよ」
「この子らに名前がほしい、よい名はないかゴブゴブ?」
「……この者は鬼神のごとく戦い、勝利したと聞いたが、どうであった?」
「無謀にも見えたが、勇敢であった、と思うゴブ。だが、魔法のコントロールが今一つで、ラグナルと一緒に吹飛ばされた。あの時は、肝を冷やしたなゴブゴブ」
あ、やっぱり。
「親や、記憶の主を吹飛ばすか。あきれたヤツだな、阿騎でよかろう。兄はサイザンと名乗れ、サイザンはワシの旦那の名だ。正直者で曲がったことが大嫌いなお人でな、単純で可愛いゴブリンであった。お前にぴったりだ」
「俺、サイザン?ゴブゴブ」
「そうだゴブ、お前の名前だゴブ」お父さんが答える。
「そして私が阿騎、ゴブ」生前と同じ名前だ。
脳内に声が響く。
*その名前には意味がある、忘れるな*
そして次の瞬間、脳内の言葉を忘れる。
上書きされたように。
私は、おばばさまを見て礼を言う。
「良い名前を、ありがとうございますゴブゴブ」
おばばさまはニヤリ、と笑うだけだった。
「サイザンに阿騎、良い名ですねゴブゴブ」
お母さんも嬉しそうである。
「さて見えてきたぞ、阿騎、あれがドワーフの砦だゴブ」
第一印象、でかっ!
第二印象、城壁、高すぎ!!
それは山の地形と、狭い入り江を利用した巨大な要塞であった。
次回投稿は2022/07/10を予定しています。
サブタイトルは ドワーフの砦とゴーレム です。
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