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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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277/406

【第67話】 わんわんは迷子

今晩は。

本日2回目の投稿です。

「その魔石の話は、生徒達に公表してもいいのか?」


「ええ、かまいません騎士団長さま」


 あ、今トルクちゃんとセンバさん、魔力で合図を送り合った。


「生徒会が痺れを切らしているようだな、入学式は二日後、始業式は五日後だ、忘れないように。それと、学校の出入りは自由だ。ただし、夜間は禁止。異界の生徒達やゴーストが多くてね、憑依でもされたら大変だからな。では、改めてようこそ王都聖龍門学校へ!君たちを歓迎する!」


「帰りに事務室に寄るように、渡す書類がある。生徒会が案内するようだ」


 私は、これから始まる一人暮らしに対して、大きな不安顔で、ポシェットくんはニコニコ顔で、校長室を出た。


「どうした、難しい顔しおって?」


 早速、おばばさまが聞いてきた。


「いえ、一年生が寮だなんて、知らなくて、その……」


「不安か?期待もあろう?」


 こくこく。


「校長室の後、いきなり生徒会室ではちと負担が大きいか?事務室に案内しよう、その後は寮を見ておくか?どうじゃ?」


 こくこく。


「案内、よろしいのですか?」


「おお、いいぞ、任せておけ!」


 てくてくと、歩き出す私達。


 無言である。


 目立つのは嫌だが、この巨大要塞のような校内を、迷子にならず、歩ける自信はない。

 方向感覚はしっかりしているから、まあ、いざとなったら窓から外に出るか。


 てくてく。


 何か、お話ししましょうよ?


「お……生徒会長、お話があると言われていましたが?」


「あ、ああ、あれか、本来なら生徒会室で、もてなして話したいのじゃが」


 おもてなし?お願い事だろうか?

 歯切れが悪いなぁ。

 はて?魔石の融通かしら?


 てくてく。


 また沈黙?

 何か、言いづらいことかしら?


 ん?ヤベンさん?


「オルガン会長は一枚、絵を描いて欲しいそうだ」


 え?絵?


「副会長達が、羨ましいらしい」


「生徒会とトルク校長の、絵の奪い合いバトル、凄かったぞ」


「最終的には試験用紙だったからな、学校側の勝利になったが、美観、泣いてたな?」


「ああ、相当悔しかったらしい」


 そ、そんなことが!?


「絵は、陽の煌めき月の明り、と言われて、とても神聖なものとして扱われる」


 そこまで!?

 悪意の絵もあると思いますが?怖い絵とか?


 あ、シルバーっちが思念を送ってきた。

 ああ、それでも絵を大事にすると?


「いいですよ」


 おばばさまだし。

 どれだけ前世でお世話になったか。

 

 阿騎の名付け親でもあるし。

 ……サイザンお兄ちゃんも。

 

 一緒にあの時代を生きた、大切な仲間。

 思い出してもらえないのが、悲しいけど。


「い、いいのかっ!?」


 飛び上がって、振り向いた!?


 そ、そんなに嬉しいの?


「ええ、いいですよ、でも入学してからです。それでいいなら……」


「や、躍息だぞっ!」


「はい」


 てくてく。


 周囲の目が気になるぁ。

 まあ、このメンバーなら仕方ないか?


「この槍が気になります?」


「「ああ」」


 ヤベンさんとナイダイさん、ハモってる。

 立ち止まり、槍を背中から外し、ナイダイさんに見せる。


「手に取ってもいいですよ?」


「それは駄目だろう?これはゴブリン族に伝わる朱槍だろう?明季くん、これはとても大事な槍だ。簡単に人に渡してはいけない、それにこの朱槍は、持ち主を選ぶと言うではないか?」


「よくご存じで。でも、あなた達二人なら、槍も怒りません。むしろ、一度、手にされることを、槍が望んでいます」


「え?ならば私が」


 そう言ってヤベンさんは朱槍を手に取る。

 槍は一瞬、ブンッと震え、ヤベンさんの体格に合った大きさと重さになる。


「こ、これは?聞きしに勝る凄い槍だな。ん?これは?槍か?ナイダイ、どう思う?」


 朱槍はナイダイさんの手に移る。

 ブンッ、とまた形を変える朱槍。


「これは杖か?不思議な感覚だ、懐かしい気がする。明季くん、その内、組み手を願いたいものだ」


 そう言って私に朱槍を返すナイダイさん。


「ニトさんに、バトルは禁止されています。あなた達二人が相手なら、運動で済みそうもありませんから、当分はお断り致します」


「ふふ、フラれたな、ナイダイ?」


 階段を降り、一階の事務所まであと少し。


「あ、明季さまは多才なのですね」


 ポシェットくん?私が、多才?何を言ってるの?


「歌を歌い、槍術、体術、絵もお描きになる。恵まれた才能で羨ましいです」


 恵まれている?私が?

 

 この一言が、引き金だった。


 前前世の記憶が蘇る。

 一瞬で、怒りが込み上げてきた。

 ああ、マズイ!気分が荒れる!


 私の大事な絵。

 大切な、大好きだった絵。


 この私が、羨ましいだと?

 恵まれた才能だと?


 押さえろ、亜紀!


 彼に悪気はない。

 悪気はないが……これは!?


 悔しさ、悲しさ、後悔、苦しさ、破壊の衝動がどんどん膨らんでいく!


 落ちついて、亜紀!過去は変えられないのよ!


 駄目だ!怒りでクラクラする!


 意識を逸らして、外にっ!

 外は?どっち?


 獣人族だから、方向感覚や匂いで大体の場所は分かる。


 多分、右端の上の階は音楽室だろう、楽器の匂いがする。2階中央は調理の実習室か?食堂ではないな、色々と分かるけど……人が多すぎて混乱しそうだ!


 なにこの階段の多さ?

 壁が多すぎる!

 外が少ししか見えない!


 風の匂いがしない!

 ここは、開放感がないっ!


 暴れて、校舎から飛び出しそうだよ!


 ああ、なるほど、アイお姉ちゃん、これが嫌だったのだ!


 そしてパニックになったわんわんは、自分がどこにいるか分からなくなる。


 獣人族って、狭いところ、嫌い?閉所恐怖っぽい?


 あれ?皆、どこ?


 ここ、どこ?


 ううううっ。

 

 グルルルルッ!


 しくしく。


次回投稿は 2023/04/08 20時頃の予定です。

サブタイトルは わんわんは迷子・中庭にて です。


5月で投稿しはじめて、1年になります。

私の作品を読まれている、大切な読者の皆さま、どのような一年でしたか?

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