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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第63話】 入学手続き4

お昼です。

投稿です。

 ドドンッ、と何かがぶつかる音が響く。


 砂煙が舞い、辺りは騒然となる。


 周囲の誰かが風魔法を使い、砂塵を取り除く。


 浮き上がったのは、対峙している私とポシェット商会の少年だ。


 まさか新入生に、重速術の使い手がいるとは。

 さすがに、速さは私の方が上だけど。

 どこで修得したのだ?


 リンドウは枯木のように倒れている。


「やり過ぎだ、追い詰めるな」


「そいつはあなたの顔を蹴った。許さん!なぜ庇うのです?」


 え?この人は?


 私を知っている!?


「あんた、誰?」


「グラウディー・ポシェット、ポシェット商会の長男」


 いや、そういう意味ではなくて。


「私は……」


「シュート家・明季さま、新入生で知らない者はいませんよ……ん?どうかされましたか?」


 ペタンとトンビ座りする私。


 校内、入っちゃったよ!

 目眩?吐き気?


 なんもナシ?


 リンドウ庇って校内に?

 あいつが、引き金?何か、すっっっつごく嫌!

 更にあいつ、嫌いになったかも!


 あれだけ悩んで、苦しんだのに、あっさり?


 ん?


 凄まじい怒気が近づいてくる?


「明季っい!ニトに止められていただろうっ!この馬鹿者!魔力還元したらどうするんだ!この阿呆!まわりがっ!どれだけ心配していると!思っているんだああああっ!」


「ひぃぃっ!ご、ご、ごめんなさいっ!」


 バチバチッと霊音が響く!


 頭を抱え、蹲る私。


 シンお姉ちゃん、ゾアントロピー起しているっ!こっ怖えーよーっ!


 人前だろうが、学校内だろうが関係なし!


 怖い物は怖いっ!


 びりびりと空気が振動している!


 シンお姉ちゃんの怒りが、満月期の力に増幅されて、物質化現象を起している!


 校舎の窓ガラス、割れるんじゃね?


 それぐらい、凄い怒りなのだ!


(お、お姉ちゃん!やめて!やめて!それ以上は駄目ええっ!)


(お前は!言うこと全然聴かずにぃ!)


(駄目だってぇ!女の子失禁してるぅ!ここまでだよっ!お家で怒られるから!ここでストップ!やめてぇえっ!)


(失禁?なんだそれ?)


(シンお姉ちゃんが怖くて!びっくりして!何人かお漏らししているって!)


(え?)


 ちなみに上級生達は、恐怖のあまり、今にも抜刀しそうである。


(あ、明季!ど、ど、どうしよう?女の子に酷いことしちゃったよ!)


 慌てまくるシンお姉ちゃん。

 怒りは一瞬で解け、紅いお顔が青くなる。


 真剣に私のこと考えて、怒ってくれるのはありがたいが、ここではマズイ!


 確かに、力の扱い方は間違えれば死に直結する。

 それは妖精族、問わず、人族でも同じだ。

 ただ、怒る場所がマズかった。


 学校の校庭、晴れていた天候まで変ったのだ。


 これは怖い。


 気象コントロールまでやってのけたのだ!


 女の子、蹲って泣いているよ!

 男の子も何人か腰を抜かしている!


 で。


 そこに颯爽と現れたのは、リュートお母さん!


 女の子達を次々に回収し、保健室に消えていく。


 暴風みたいなシンお姉ちゃんも、怒りが収まったようだ。


 さーっと陽の光が射し始める。


 獣人族、怒らすと怖ぇー。


 そう言えば、私も東の砦で、雷落としたな。

 あれは金狼だったけど、もしかして、どこか皆繋がっているの?


 満月期や上昇期は注意しないと!


 どうにか静まった校庭に、ヨロヨロと立ち上がるリンドウ。


 髪の毛は真っ白になっている。


 重速術に捕まる恐怖、目では追えるが、身体は動かない。

 死が迫る恐怖を、魂魄が感じとるのだ。

 そして意思だけが気づかない。


(……なぜ助けた?また鼻血噴かすかもしれんぞ?ははっ)


 お前、孤独だろ?


(……!)


 東の砦へ行け、あそこなら新しくやり直せるぞ。

 新しい街が作られているんだ。

 王都の者は殆ど知らない。

 あの街でやり直せ!


(やり直せだと!?ふざけるな!俺を受け入れるというのか?まだ、できてもいない街が!)


 東の砦は、北のゴブリンの砦だ。助けを求めれば、必ず受け入れる。


(ゴブリンごときに、助けを求めるか!)


 え?知らないの?北のゴブリンさん達は本気出すと、私より強いよ?


(なっ!う、嘘をつくなっ!)


 いや、ホント。


 今、ドワーフのン・キングが近くまで来ている。紹介してやるよ。

 多分、北のゴブリン、フーララさんも来ているはず。

 元商工会の子供達や、ドロトン君も向こうで暮らしている。


(商工会?あのクズの5人を受け入れただと?)


 クズとか言っちゃ駄目だよ、そんなこと言っていると、クズになるよ。


(くっ!)


 私にできるのはここまでだ。

 後はお前の勝手だ。


(俺を受け入れてくれるのか?)


 北のゴブリンは必ず、受け入れる。


 ただし、周りの者を、傷つけるようなことをしたら、命はないよ。


(半獣人の俺を受け入れると?)


 なぜ受け入れないと思う?

 北のゴブリン達は、虐げられた記憶を持っている。

 彼らは孤独を知っているぞ。


(フンッ)


 満月の時だ、必ず来いよ!場所は王都より北、巨大ゴーレムが擱座している所だ!忘れるなよ!


 ヨロヨロとよろめきながら校門を目指すリンドウ。


 声を掛ける者は一人もいない。


 乱暴者の退場だ。

 乱暴者は嫌われる。

 だが、乱暴者はそれが良いことだと思っている。

 乱暴者にとって、暴力は正しいことなのだ。

 いつか気づく時は来るのだろうか?


 大抵、気づいた時には遅いのだが。


「あのまま帰していいのか?明季」


「……あの者は人族からは獣人族と言われ、獣人族からは人族と言われている。北の獣人族の村は寒すぎて、あの者は越冬できない。あの者は帰る場所がない」


 周りの人達が、驚愕の目で私を見る。


 私の口から出た声は男性の声であり、その声が威厳に満ちていたからだ。


「明季、あの者は魔力還元してもやむなし、と思うておったが、シルバーに託すか、それもよかろう」


 ゴルちゃん、あんたが見捨てたら駄目でしょう?


 獣人族の心のよりどころ。

 伝説のヒーロー。


「ああ、そうだな、そうだったな」

次回投稿は 2023/04/06 お昼くらいです。

サブタイトルは 手続きは、校長室にて です。

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