【第58話】 王都を歩く6
夕刻です。
投稿です。
「これでいいかしら?」
こくこく。
やや大きめの服を着せられる私。
右目にはアイパッチ。
ここまで用意してくれるとは!
血の繋がりは、もうないのに。
感謝である。
しかし、まあ私はマッパで、よく歌ったな?
羞恥心より、嫉妬心が上回った?
嫉妬って怖いな。
いやこれは、負けず嫌いと言うべきか?
私の歌い方や、知っている歌はみんな、まどかから貰ったモノだ。
好きになったゲームも、まどかの影響が大きい。
社会人に成っても、まどか、まどか、だったし。
精神的に卒業しないといけない、と思いつつも一緒にいると安らぐんだよなぁ。
ホッシーの歌は、そんなあの時を思い出させる。
亜紀の楽しかった思い出……恐るべし、ホッシー。
もう、本物の歌人、名乗ってもいいのでは?
それプラスお花好きだと!?
くっ、素敵ではないかっ!
「少し、身体を見る」
ニトお父さんがサラリと言う。
「……」ホッシー冷たい目。
「……」リュートお母さん、冷たい目。
「また脱ぐのですか?」
ちょっと悲しくなる私。
「そのままでいいよ」
「……」ホッシーの冷ややかな目。
「……」リュートお母さんの冷ややかな目。
「私は薬師だ。半獣人は獣人の形態の一つだが、不安定な状態でもある。戦闘時のこの形態を好む獣人もいるが、今回の場合は違うだろう?」
「……は、はい。違います」
私が不安に包まれると、ペガサスが寄ってきた。
「?」
すりすり。
「!」
ふおおおっ!
な、なんて優しいペガちゃん!
お馬さんは優しいって聞いたけど、これは!?
すりすりしてくれるんだ!
それとも、この子だけかしら?
私は、肉球の付いた手で、よしよし、とペガちゃんを撫でる。
爪があるから、傷つけないように、と。
おお、熱烈なペガちゃんのすりすりだ!
「この子、誰に似たのかしら?」
うわっ!リュートお母さんが熱い視線を、ニトお父さんに送っている!
「さあな」
照れてる?照れてる?
これはニトお父さん、自慢のペガちゃんに違いあるまい。
ニトお父さんは服の上から、背骨の状態と、私の目の状態を確認し、膝、肩、首を触診し、一言、言った。
「戦いすぎだ。入学するのだろう?だったら当分の間、勉学に勤しみなさい。運動はいいが、バトルは禁止だ。薬は後で届ける」
ええ?禁止?
でも運動とバトル、どう違うの?同じでは?
「大事なことだ、阿騎、よく聞きなさい。そうだな、この木、大きいだろう?」
ふんふん。
「根が大きく張り、葉が沢山茂っている。運動はこの木を大きくする。」
ふんふん。
「バトルはこの木を枯らす、弱くする」
「え?運動とバトル、同じではないのですか?」
これは?まて、ホントに大事なことだぞ!
「魂には全ての記憶が記されている。相手を害する攻撃も記録される。この『害』は魂を通し、意思、魄に影響する。『害念』は意思や魄を『害』するのだ、本人が意識しようと、しまいと関係なく、分かるか?」
「はい?」
よーわからん。
「この害は大木を傷つける、この傷は『顧みる』ことで癒える。ただし、傷跡は残る。分かるか?」
「なんとなく」
「楽しんで相手を害する者は、自ら朽ちるとも言えるな。運動も意思、魄に魂をとおしてフィードバックされるが、これは『害』とは違う。まあ、武道において、相手を痛めつけて楽しむようなヤツは別だが。そもそも運動は魂の記憶する場所が違う。阿騎は好んで戦っていないようだが、大木が傷だらけだ、だから当分バトルは中止だ」
ニトお父さんは、大木の傷が見えるんだ、薬師の目で。
商人さんの目も同じか?
これは呪術師の目だ。
でも……。
「約束できません」
「なぜだ?」
「もし、目の前でホッシーやリュートさんが、暴力に晒されようとしたら、私は躊躇うことなく朱槍を振るう」
「ホッシーやリュートは強いぞ」
「それでも助けずはいられない」
「ホッシー、リュート」
「「なに?ニト?」」
「入学まで、阿騎が安心できるように、強くなってくれ」
苦笑交じりでニトお父さんが言う。
「努力しますよ」
微笑みながらリュートお母さん言う。
ホッシーはちょっとビックリして、言葉を繋いだ。
「ふふっ、助けてくれるの?素直にうれしいな。でも私は危険が迫ったら、アッキーより先に探知して逃げる自信があるわよ」
嘘だね、ホッシーは自分だけ逃げるような人じゃない。
「もう大丈夫のようだから、騎士団に戻るよ、リュートはどうする?」
「私はまだアッキーと……」
「阿騎、無理するなよ」
そう言ってニトお父さんはペガちゃんに乗り、ふわっと空に舞った。
「ニ、ニトさんっ!い、いつも!いつも!ありがとう!」
「気にするな」
あ、ペガちゃんもこっち見た!
「ペガちゃんもありがとう!」
王都に向って飛んでいくペガちゃん。
速いな。
ふふふっ、でもエノンはもっと速い!
ん?私は何を競っているのだ?
「私はこれから着替えて学校に行くけど、アッキーはどうする?」
ジャケットのような服を羽織るホッシー。
「え?」
そうか、リュートお母さんやホッシーは、学校があるんだ。
「私はホッシーと学校に行くけど、孤児院まで送りましょうか?」
「私は……」
「そのまま帰れそうか?」
「うん」
「なら途中まで一緒に行こう!」
「う、うん」
てくてくと、歩き出す3人。
朝日の中、これは気持ちいい。
「で、アッキー、入学、するよね?」
「え?」
と、突然?
「一緒に、歌人目指さそう?」
ええっ!?
次回投稿は 2023/04/01 夕刻の予定です。
サブタイトルは 王都を歩く7 です。




