【第56話】 王都を歩く4
明日は遅れるかも知れません
18時くらいでしょうか。
ここで思ったが、どうやら他の妖精族と獣人族は、睡眠時間とか活動時間が違うのでは?
もしくは、学生は何らかの訓練をしている?
そうそう、睡眠時間が、決まっていないパターンもありそうだ。
獣人族は基本、暇さえあれば寝ている。
寝るのが好きな種族だ。
あと、獣人族の睡眠時間や活動時間は、月に影響される。
基本、満月期なら不眠不休でも、なんともない。
逆に降下期の新月なら、人族並みになってしまう。
まさに月に支配されている種族だ。
まあ、私の場合は満月と新月が上昇期だから、いろいろ忙しいけど。
それに、細胞自体がまだ、赤ちゃん細胞らしい。
無理はするな、といつも言われている。
周りを見てみる。
お化け屋敷?
これじゃ学校見に来たのに、ますます混乱だよ!
ああ、前前世の記憶が邪魔をする!
比べてしまうのだ!
この非常識な学校と!私の世界の学校を!
これは改めて、人バージョンで来校してお話聞かないと、理解の外だ。
何かを学んでいることは分かるのだが、学び方が?システムが?
分からん!
もしかして、ここ、テキトーなのでは?
校則なんて、あるのかしら?
服装検査は、無いだろうな、制服も無いみたいだし。
それに皆、剣とか槍とか持参しているし、比べること自体が間違いか?
窓から見える教室内は、見慣れた授業風景なんだけどなぁ。
違和感があるとすれば、生徒殆どがゴースト、幽霊系。
私としては、凄く怖いんですけど。夜明け前の薄暗い教室!
空が少し明るくなり始めると、教室内や、運動場の生徒達が、一人また一人と消えていく。
じゃ、また今晩ね!
パン!ばちっ!
宿題、多いよ!
バチッ!
オーク屋、寄っていく?
……声は聞こえてくるけど、姿が見えない!それに、あの音はラップ音か?
「おい!3組!黒板、ちゃんと消していけ!」
「はーい」
声しかしないし。
あ、黒板ケシが動いて!?
誰もいないのに、文字を消している!?
あれ、ポルターガイストじゃん!
こ、ここで勉強するの?みんなしているの!?
この世界ではこれが日常?常識!?
亜紀は怖がっていて、阿騎はワクワクしている。
そして明季は混乱している。
……出直すか。
面接で、詳しく聞いてみるとしよう。
ポンッと玲門さんの腕から飛び出す私。
「あっ、クッキー?」
「ああ、おい!玲門!ちゃんと捕まえとけよ!次、抱っこ、私なのに!」
いや、とりあえず、この場はオサラバします。
後でまた来ます、今は行きたい所あるんで。
走り出そうとすると、止められた。
「お、おい、待ってよ!ペロ!」
う、美観さん涙声!
挨拶しておくか、トコトコと足下にすり寄る。
すりすり。
「へへへっ、お前、可愛いなぁ」
よしよし。
頭を撫でられる。
「クーン、クゥ~ン」
「お?どうした?」
お顔を近づける美観さん。
いただきっ!
ぺろ。
「んきゃ!」
じゃ!
校門に向けて走り出す。
「だ、大丈夫!?美観姉さん!」
「は、鼻の頭、舐められた!び、びっくりしたぁ!」
私は校門を出て、昨日のエルフの公園?を目指す。
まだ、日は昇っていないけど、周りは明るい。
朝の匂いが辺りに立ち籠め、風景がキラキラと光り始める。
鳥の声、街のざわめき、草木から、活力がにじみ出す。
ざわめきだした王都を抜けると……見えた!エルフの像!
この先から、王都が見渡せるはず!
日の出、見えるかな?
朝日に照らされた約束の地、一度、見たかったんだ。
……きっと綺麗だ!
ここに辿り着けなかった、皆の分も見るんだ。
赤紫の空、静かな時間。
遠くに見える山の一点が輝き出す。
日の出だ!
ここに住んでいる人達にとっては、いつもの一日だろう。
だけど、私にとっては、新しい始まりだ。
皆が夢にまで見た、王都。
ここで暮らすなんて、学校に通うなんて!
ん?
誰かいる!
声?
先客?
お気に入りの場所にしょうと、思ったんだけど?
私と感性、似ているとか?
その声は、歌声だった。
聞き惚れる、とはこのことか。
息を呑むとは、このことか。
朝日が昇り始め、広がる森や、平原、王都が鮮やかな色に染まる。
綺麗なその景色の中で、彼女は一人、歌を歌っていた
彼女は朝日に向い、透き通るような声で語りかけていた。
ホッシーだ!
時間が止まった。
朝日に照らし出されたホッシーは、とても綺麗で、神々しかった。
いや、ほんと、ホッシー、着替えてきているし、先程のお花屋さんの服装とは明らかに違う。
ドレスアップしている!
歌が好きなんだなぁ、大事にしているんだ。
でも、お花屋さんの作業服っぽいスタイルも可愛かったな。
聞き惚れていると、身体に変化が起き始めた。
え?
朝日に照らされた私はポメラニアンから、人の形態へと移行し始めた。
え?ま、待って!い、今はマズイ!
もしかして、上昇期に入った!?
でも、日の光りで?月では無く?
だ、駄目だって!着替えないし!ここで裸ん坊は困ります!イヤですっ!
身体が変化し、人バージョンに移行が進む。
私の身体なのだが、言うこと聞いてくれないっ!
えええっ!ど、どうしたら止まるの?ポメに戻れるの?
わ、わかんないよぅ!
だ、誰か助けてええっ!
!
私の願いが、何処かに通じたのか、通じなかったのか、移行は半分で終わった。
そう半分で。
身体の大半はポメの体毛で覆われ、頭には犬耳、手は肉球、尻尾ありの半獣人の出来上がり。
そして、ホッシーと目が合う。
「あ」ホッシー一言。
「あ」私一言。
どうする?
「アッキー?」
あ、おわた。
次回投稿は 2023/03/30 夕刻の予定です。
サブタイトルは 王都を歩く5 です。




