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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第50話】 オーク屋のクッキー

金曜の夜です。

本日2回目の投稿です。

「あ!わんわん来た!」

「窓に来ちゃったよ!」


 へっへっへっ、息がこうなるのは仕方ないのか?


「玄関開けよう!」


 足音高く移動する子供達。

 そのけたたましい音は、外からでも充分、分かる。


「わんわん!こっち!こっちだよ!」

「わんわん!足!脚!足拭かないと真っ黒だよ!タオルタオル!」

「うわっ!ぷるぷるしている!けど、まだ水が!」


 視線を感じる。

 ピア副団長が遠い目をして見ている。


「エノン、また来てもいいか?あの子犬、何か気になる」


 ……ばれた?


「え?い、いいよ。歓迎するよ、ピア。でも、お土産、欲しいかな?」

「土産だと?」


 こくこく。


「くっ、チビちゃんズは全員で何人だ?」

「23名」

「よし、それプラス10袋、オーク屋のドーナツでどうだ?」

「大歓迎!」

「よし、では騎士団、南区に回る。ジェイとジュナサンは詰め所で解散だ」


(((よし、見習いが二人減った!あとはこいつらが……)))


 え?皆で牽制?お互いに?思いは同じか?

 大丈夫かな?ホントにこの騎士団。


「ほれ!もうすぐ9時だ!寝る時間だ!」

「えええっ!シンお姉さま!わんわんのお世話したいぃ!」

「もう寝る時間?あと少し!あと少し!」


 え?私、モテ期?

 ここまで求められるのは、人生3回目にして初?


「わんわんは今からお風呂だ」

「え?誰のお世話?エノン先生?」

「エノン先生は……」


 ん?シンお姉ちゃん?なに?エノン、どうかしたの?


 玄関に立つエノンを見る。

 仁王立ちである。

 なんで?

 目に殺気が?

 時間、守らなかったから?

 心配したって言っていたし。ご、ごめんなさい!


「くぅ~っん」


「あ、わんわん、ごめんなさいしている!」

「さ、みんな寝ましょうね!歯磨きも忘れずに!」

「はーい」


 あ、今エノンの目、光った!?


「ちゃんとするのよ、歯磨き!特に、オーク屋のクッキーとか食べた人!」


 うげっ!

 バレている!?

 水浴びぐらいでは駄目か!?


「え~っ、そんな人、いないよ?」

「誰?食べた人!ずるい!」

「どこ?オーク屋のクッキー!あ、夜だから駄目だね、虫歯になっちゃう!」

「オーク屋!?クッキー!!」


 シンお姉ちゃん!フォローを!


「アンアン!」

「さ、さあ、皆、ついておいで!歯磨きするぞ!」


 え?そんなぁ!逃げた!?


「さ、わんわん、いえ、ラッキーおいで、うちとお風呂に入りましょう!」


 え、笑顔!?


 がしっ!

 え?そ、そっそんなとこ、摑むの?

 だ、だめだってぇ!

 あん!


「アンアン!」


 ……ずるずるずるっ……。


「キャイン!キャン!」


 ひそひそ声が聞こえてくる。


(あれ、クッキー食べたの、わんわんだよ!)

(うん、うん、間違いないよ)

(お名前、ラッキーだって)

(ラッキー?どこが、どうラッキーなの?)

(知っている?エノン先生、氷のエノンって呼ばれているんだって!)

(ええ?うっそだぁ!怒ったらすんんんんごくこわいもん、氷より火だよね?)

(うんうん、火?炎だよね、炎のエノン先生!)

(ラッキーちゃん、クッキーを独り占めするから……)

(ラッキーちゃん、男の子?女の子?)

(女の子だよ)

(エノン先生とお風呂、いいなぁ)

(だよなぁ、小さいときは一緒にお風呂だったのに……)


(あ、男子サイテー)


「ほらほら、歯磨きしたら、お着替えして寝る!」


 はーい、シンお姉さま!

 と、遠くで声が聞こえていた。


 ぴしゃり、と閉まる脱衣場のドア。


「くぅ~ん、くぅ~ん」


 エ、エノン?無言で脱衣しないで?


 め、目のやり場に困ります。

 と、言いながら、その見事なプロポーションに、目が固定されてしまう。

 

 バランスが凄い。


 動きが人族と違って、しなやか?関節がちがうのではと思わせる。

 きれいだなぁエノン。

 しばし、見とれてしまう。


 ……紙と鉛筆がほしい。


 沢山ある傷跡は、傭兵団で皆を守った勲章か?


 潤んだ瞳、しなやかな肢体、エ、エノン?

 妖艶すぎますぅ!


「ラッキーはぬるい?それとも熱いのが好き?」


 え?え?えっ?


 な、なに?ぬるい?熱い?

 キ、キスか、何かの隠語かしら?

 人生3回目だけど、恋愛物語、皆無だし、ど、どうしたらいいのだろう?

 なんて答えたら正解なのだろう?


 エノンが一番喜ぶ答えが、分かんないっ!


「お風呂、お湯だけど?」


 あ、お湯ね?お湯。


 あは、あはっ!あははははははっ!

 な、な、ななにを考えているのだ!私はっ!

 ホント、何を考えていたのだろう?

 エ、エノンの好みでいいけど?


「うちはね、温めが好みなんよ」


 そう言って、棚に置いてある小さな魔石を握り締める。


 浴槽はかなり広かった。

 子供達、23人、余裕で入れる広さだ。


 でも、これ水だよ?

 どうするのだろう?


 ポチャン。


 魔石投入?

 水面に、さっと湯気が張る。


 うっわっ!正に魔法だ!


「さて、まずは濯ぎね、うちにお任せあれ。ラッキー、ピカピカにしてあげる!」


 かけ湯から始まり、湯船にはつからず、香りのいい石鹸でごしごし。

 この繰り返し、三回ほど。


 眠い。


 寝てしまう。


 そっと抱っこされ、湯船に浸かる。


 羨ましいバストが、目の前にある。

 私は、どんな反応をすればいいのだ?


 いや、ハッキリ言うと、埋もれているのだが。


 エノンとお風呂に入ると、すごく安心して……ん?


「クッキー、誰から貰ったの?」


 瞬時に目が覚める。


 あ、逃げられない。

次回投稿は 2023/03/25 お昼くらいです。

サブタイトルは クッキーではない です。


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