【第45話】 ストーカーではありません
号外です。
近々、朝7時の投稿時間、変るかも知れません。
別にこの二人から、先程のお店の匂いがしているから追うのではない。
そして、ストーカーでもありません。
危害を加えようとは思わないし、一方的に感情を押しつけたりもしません。
そんなことはしたくないし、しようとも思わない。
亜紀の時、付きまといの経験がある。
あれは怖い。
特に私の場合、死んだ両親のへの腹いせである。
それはもう酷い目に合った。
思い出したくもない。
なぜ被害者の私が、転々と施設を渡り歩かなければいけないのだ!
加害者は野放し!なんで?
え?あれ?王都から出るの?
どうする?引き返すか?
今の彼女達のこと、知らないけど……でも、気になる!
遙か昔(多分数万年前だと思う)、淡い恋心、強い慕情、はあった。
だけど、今の彼女達は別人だ。
同じに扱ってはいけない。
うーん、だからといって、関心が無いわけではないのだ。
思い出が、圧倒的に大きすぎるし、多すぎる。
人生一回分の思い出、それも命懸けの思い出だ。
私は先に死んでしまったけど、届くかどうかも分からないのに、私に言葉を残してくれた人達なんだ。
どうする?
魂は同じかも知れないけど、別の人生を歩んでいる、私の知らない美観さんと玲門さん。
そう考えると……なんだろう、悲しくなってきた。
それでも、私には思い出がある。
嫌われても、無視できない。
ああ、前世の記憶、邪魔だな。
この記憶が無ければ、あの二人と、もっといい出会いができたのでは?
あれ?ここどこだ?ついてきたけど。
だいぶ王都から離れてしまった?
あの二人、どこまで行くのかしら?
お家、王都の外かしら?
王都は城塞都市みたいな感じだから、つい、住居は王都内と思っていたけど?
公園かな?まばらだけど、人影もある。
見失ってしまった。
匂いは?
お、こっちから美味しいクッキーの匂い。
とことこと、クッキーの匂いに向って歩く。
小高い丘の上の?公園?
人影は皆エルフだ!?
ここは?
みんな、清掃している?箒にちり取り?
ここは、なにか特別な場所かしら?
周りを見る。
王都を緩やかに見下ろすことができる。
夕刻、王都の灯りがキラキラして宝石みたい。
公園?の中央に像がある?あれ、なにかしら?
近づいてみると、槍のような細い武器を持つ、エルフの像だ。
プレートに文字が刻んであるけど、残念、私には読めない。
凄いプロポーションだなぁ、特にバストは強調しすぎでは?
(ふふっ、そいつはクレス・ダイナ・モンだよ、忘れたか?)
誰!?
(戦友だ)
北のゴブリン?
違うな、もっと深さ?広さを感じる。
(……秘のゴブリン、直系の5年ゴブリンだ)
!
5年ゴブリン?あれから何年?千年ではなく万年単位よ!?
朱槍のゴブリン、王都にいるとは聞いていたけど?
(嘘だと思うか?)
不可能では……ない……かな?本当かしら?
ん?シルバーっちが振動している。
これ、本物では?
(北のゴブリンからは稀に秘のゴブリンが産まれるが、我々は直系、隠れゴブリン。その魔力、今では魔王、勇者に匹敵する程さ。さまよえる賢者は何を考えて我々を作ったのだ?)
え?魔力、500万を越えているの?魄が壊れるのでは?
(動けば討伐対象になりかねん、かといってこの血を絶つわけにもいかん。別名、子作りゴブリンとも言われている)
こ……!
(おっとこれは失礼、ホルダー阿騎。今のあなたは女性でしたな)
パコーン、と霊音が響く。
(痛い)
(ホルダー阿騎に何てこというの!)
あ、女性の波動だ。
系統がいくつか残っている、てことか。
勇者や魔王に匹敵するなら簡単には動けない。事実なら、元帥さんのところがいいのではないか?
(私達は、ここ目指しましたから、王都で暮らしたいのです)
でも、ここは謀略、陰謀、いっぱいみたいだよ?
まあ、商工会はなくなったそうだけど。
(表立っては動けませんが、暗躍しています)
私のことも、見ていた?商工会消滅も手を貸した?
(……はい)
(その、ストーカーとかいう犯罪行為ではないからな!見守る、と受け取って欲しい)
了解。監視ではなく、見守りね。
それで、その守護者が何用ですか?
(疑っているのですか?)
半分ほど疑っている。ダークエルフの件もあるしね。
(彼は危険な存在です)
あなた達なら、対応できるでしょうに。
(私達の存在は極秘です。都市伝説レベルなんですよ。ダークエルフも信じてはいません)
(我々が動く時は、ダークエルフ達との総力戦の時)
そんな極秘存在がなぜ?私以上の存在でしょうに。
(ホルダー阿騎、我々の存在を知って欲しかった)
!
これは切実な思いか?
(それと警告です)
!?
警告?
(あの時の戦士達が、次々にこの時代に転生してきています。我々は今後、何かあるのでは?と警戒しているのです)
……数万年の蓄積、予測出来るのでは?
(……)
口に出してはいけない『門』が関係していると?
(はい)
(ホルダー阿騎、あなただけが不在でした)
(あなた以外は、確認できている)
明らかに、あなた達の方が、私より強いでしょう?
経験の蓄積も、魔力も。
(……)
あれ?沈黙?
何かあるのかしら?
(影ながら、お支え致します)
ふっ、と消える気配。
なんか、とんでもないお話、聞いてしまったな。
見上げると、エルフ像。
ああ、これはエルフさんの像なのね。
あの細い棒は氷の矢か?
て、ことは、これシンお姉ちゃん!?
いや、シンお姉ちゃん、大きいけど、ここまでは、さすがに……!
突然、クッキーの匂いが強くなった。
あ!
「きゃん、きゃん!」
「うふふ、まえた!玲門!捕まえたよ!」
え?
「うっひゃああああっ!この子、かわいいいいっ!見て見て見るのよ!玲門!」
え?え?え?
「王都から、気配を感じていたけど、まさかこんなに可愛い子だなんて!」
「クッキーよ、クッキー!この匂いに、ついてきたのよ!」
「み、美観姉さん!わ、私も抱っこしたいっ!」
ま、マズイ。
捕まっちまった。
次回配達は 2023/03/21 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは クッキー です。




