【第41話】 君たちの名は、思い出の名2
夕刊です。
他のゾンビ達もフーララさん、ミンお兄ちゃん、アランお兄ちゃん達が次々に狩っていく。
「え?」
「遅れてスマン、明季」
そう言ったのはミンお兄ちゃんだ。
「向こうでも襲撃があったのでね、だがこれが最後だろう」
アランお兄ちゃん、元気いい?
「あとは、あの術者か」
ミミお姉ちゃん、相変わらず目が怖いです。
「なんで分かったの?」
「王都在住の北のゴブリンが、フーララに伝えたのさ」
なるほど。で、駆けつけたと。
助かります。
ピア副団長が召喚者と対峙している。
あとは、召喚者だけか?
召喚者周辺のゾンビ達は、全部ピア副団長が始末したようだ。
魔石に頼っているとはいえ、凄いな、この人。
「あ、あれだけのゾンビを、このバケモノどもめ!」
え?バケモノ?
それ、あなたが言う?
私達、獣人だし、モンスターは自負していますけど。
赤黒い蠢く霧に包まれた、満身創痍の男。
身長は165㎝?体重は100㎏以上ありそうだ。
身体には、矢が数本刺さっているけど?
「こいつ、リチの父親だぞ!」
ジュナサンが叫ぶ。
ジュナサン、何をしている!モニを担いで、退避するんだよ!
モニは大丈夫なの?
あ、シンお姉ちゃんが保健の先生に渡している!
「リチ?あの役立たずがぁ!どうせ今頃ワームのハラの中だろう、クズが」
「余裕だね?まだ何か隠しているの?」
私は怒りを抑えて聞いてみる。
「リュート・フルートを始末するつもりが、まさか別の魔力に反応するとは!」
「リュートの殺害が、目的か?」
「あいつが古文書を見つけなければ、過去の技術は復活しなかった!我々がどれだけ時間と金を使ったと思う!折角消し去った技術を!あの愚か者が!」
「首謀者は誰だ!?それで、何を得るのだ!愚か者はお前達だ!」
赤黒い霧と共に、右腕が吹飛ぶ。
「ぐふふっげへへへっ効果ないぜ?」
霧が集まり、腕を再生する。
「なぜリュートお母さんを狙う?」
次は左腕が吹飛ぶ。
「ぎやあああああっ」
「効果、ありだな、次は脚だ」
「ま、まて、明季!できれば捕獲したい」
無視、ピア副団長の声は聞こえない。
チリの苦しみ、悲しみ、以前の私に繋がる。
お父さんは子供に対して、鉄パイプを向けてはいけない。
クズと言ってはいけない!
「いつからそうなった?」
「金だ!支配だ!利益だ!もっと、もっと金を集めるんだ!」
左腕は、ゆっくりだが再生し始める。
私が朱槍に力を込めると、ピア副団長が割って入った。
「待て、明季。おい、そんなに集めてどうする?何のための、お金だ?お前は、気のいい商人ではなかったのか?」
「満足するための金だ、暮らしをよくするのだ!そのためには金がいる!無ければ奪う、我々は常に勝者でなければならぬ!」
「もう十分、いい暮らしをしているのではなかったのか?これがその夢の成れの果てか?子供や家族を殺してまで金か?」
「甘いぞ、騎士団!金があれば、家族も買えるのだ!私に逆らわない家族が!選ばれた者のみが手にできる名誉!」
「それが、お前の思い描いた世界か?」
「そうだ!」
「違う、お前はこんな世界は、思い描いていなかった」
え?副団長?何かを見ている?
霊視している!?
何者なの!?この副団長!
「騎士団、お前らを皆殺しにし、また新しい俺の世界を手に入れるのだ!王都は我々のモノだ!」
「小さな……子供の頃のお前は、こんな夢を思い描いていたのか?夢を、どこに捨てた?どこで間違った?」
「ハハッ……なにを言う?私は間違っていない!」
「子供の人格を破壊して、洗脳して、親のすることか?人のすることか?」
「私が作った子供だ!何をしようと、私の勝手、自由だ!」
黒い想念は止まることなく、全身から溢れ出てくる。
そして異変が始まる。
呪符が燃え上がり、その胸に文字が刻まれたのだ!
!
今!誰か、外から魔力を送った!?
遠隔操作?
魔力の矢みたいなのが、呪符を打ち抜いた!?
どこだ!どこから放った?
誰だ!こんなことできるの?
ダークエルフか!?
ピア副団長と目が合う。
この人も見えたんだ!
「ごおおお、ぐおおおおおおおおっ」
およそ、人の声とも思われぬ叫び声が響き渡る。
ベキベキと身体が異様に膨らみ、人の形態が変り始める。
「こいつはもう助からん、飲み込まれてしまっている」
悲しい顔、何を見たの?
「副団長でも無理?」
「無理だ」
巨大な魔獣に成り果てたチリの父親は、私達に牙を剥いて唸り、挑んできた。
シンお姉ちゃんとエノンは生命属性の技で、私は抜きで仕留めに掛かる。
魔獣は強かった。
エノンが最初に脱落した、次がシンお姉ちゃん。
生命属性の技は長時間使用できない。獣人族でも、末梢神経がボロボロになるのだ。
私も魔力が尽きかけてきた。
ミミお姉ちゃんやフーララさんが力で押し切ろうとするけど、決め手がない。
獰猛な魔獣はしぶとく、その牙と爪で鋭い攻撃を繰り出す。
「呪符が刻印されたのだ、こいつは強敵だぞ!」
それでも、フーララさんの抜きが見事に極まり、大きくバランスを崩す魔獣。
倒れた魔獣は、避難途中の生徒会姉妹に目を付ける。
美観さん、負傷している!?
気がつかなかった!ごめんなさい!
走り出す私。
フーララさんが一足早く、美観さんを確保し、後退する。
あと一人っ!
が、そのエルフは、美観さんを逃がすため囮になり、魔獣に向って……走り出した!?
間に合うか?
「レイモン!」
叫び声と共に全身に力が漲る!
巨大な牙が、レイモンお姉さんを引き裂こうと迫る。
あんな刃物みたいな牙、触っただけで、死んじゃうよ!
駄目だ!間に合わないっ!
「速!」
遅くなる周囲、レイモンお姉さんの見開かれた目。
私の魔力は殆ど無い、でも躊躇いはない!
巨大な魔獣の目が私を捕らえたのが分かった。
が、この魔獣が爪や腕、脚、尻尾に攻撃命令を出すより、私の行動が速い!
OVERKILL!
サクッ!
どうだ!?
次回配達は 2023/03/19 朝7時頃の予定です。
日曜日は8時か9時くらいがいいのかしら?
サブタイトルは 君たちの名は、思い出の名3 です。




