【第40話】 君たちの名は、思い出の名 1
おはようございます。
朝刊です。
「?」
あ、エルフさんと目が合った。
この人は美観さん?
この人が、美観さん!?
双子の姉妹。
私の知っている、名前と同じ。
ならば、もう一人は……。
「いあたたたたたった痛いっ!痛いっ!エノン!エノン痛いっ!なんで抓るのっ!」
「うち、明季くんの婚約者……候補、筆頭、最初で最後の女の子、予定だけど」
「夫婦喧嘩は後でだ、炎を破って来るぞ、魔獣型のゾンビは動きが速そうだ注意しろよ、明季、エノン」
「……はい、シンお姉ちゃん」
ん?エノン?
「き、聞いた!?聞いた?明季くん!シンが夫婦って!うちら公認だね!」
あ。
おおおおおねえぇちゃん!
まだ早いって、保留ですって、これから、コロさんに言わなきゃいけないのに!
エノンだって、自分から保留って言っているのに!
まあ、いいけど。
「アクセス!」
ステータス画面で魔力の調整。
お鼻も脚も、不思議な魔石で回復したし、後半の筆記試験は殆ど魔力を使っていない。
可能な限り、全身から魔力を掻き集める。
何とかなりそうだ。
そしてなにより、感情が上向きだ。
降下期の戦い方は、あとで検証しなければ。
エルフさんの名前を聞いて、意思が震えている。
感情で魔力の量は増えたりしないけど、威力は増減する。
バチバチバチッと、体内から霊音が響き渡った。
まるで、体内に雷様が住んでいるような音だ。
今宵の朱槍は、ひと味違うぞ!
あれ?周りの人達、全員が私を見ている?
?
驚いたお顔で?どうしたのかしら?
炎を突き破り、ゾンビ魔獣達が襲ってきた。
「でる」
一言告げると、私は朱槍を振るった
短時間勝負だ!
不気味な魔獣を薙ぐ。
「ふんっ!」
ドンッ!
重い反動が朱槍から伝わる。
ん?
かと思うと、ボンッと音を立て、魔獣は黒い霧状に成り、破れたお札だけが残った。
「?」
魔力還元しない!?
「呪符に憑依させているんだ!」
そう言って、次々にゾンビ達を切り伏せるピア副団長。
「召喚者が中央にいる、そいつを仕留める!」
副団!副団ッ!
え?外から声が!?
「副団!今、助けに行きますっ!おい!結界を破るぞ!」
うわっ!むっさい男共が十数名?
ピア副団長って??
「馬鹿者!結界破ったら、こいつら外に出てしまうだろ!可能な限り、中で仕留める!それまで外で待機だ!」
「し、しかし!」
あ、保健の先生!
「ピアがああ言っているのよ、外で待機。一匹でも逃がさないように周囲警戒。他にもいたらどうするの?いつでも全力出せるようにしておきなさい!居残りの下級生は教室へ避難!戦える上級生は校庭で待機!」
私とピア副団長で競うように倒しているけど、これ、数が多い!
モニもジュナサンも頑張っているけど、苦戦している。
エノンがフォローしているけど、これは早く召喚者を倒さないとまずい。
あれ?一気に敵が崩れ始めた。
え?
「明季、エノン、生命属性の技が有効だ!一気にいくぞ!長引かせたくない!」
「お、おい!シン!なんだその技は!?」
「ないしょ。獣人族の秘技さ」
ゾンビ達は次々に討ち取られ、その数を減らしていく。
「モニ、さすがにこのメンバーだと制圧が速いな」
「何言っているのよ!ジュナサンと私、まだ一体も倒していないし」
「それ言うなよ、俺達の攻撃、ほとんで効果ない。魔力を乗せるって、どうやるんだ?」
「ひっ!」
「モニ!」
突然、地面から伸びた手が、モニの脚を摑んだようだ。
「こいつ!」
蹴りも、手刀も、ジュナサンの攻撃は、一切効果が無い。
そのボロボロの細い腕は、モニの白い脚を握り潰し始めた。
「あぐっ」
「畜生!モニ!」
更に本体が出現し、モニは逆さ吊りの状態になる。
「なんで蹴りが効かないんだよ!」
こっちも手、一杯なんだが。
「明季くん!モニが!」
エノンとシンお姉ちゃんは、巨大な角のある、身長3m程のゾンビを押さえている。
このデカいのが残り、九体。
こいつら倒せば、後は小さいのが数体!
「ああ、分かった!」
妖精の走りで距離を詰めて!
「ふんっ!」
朱槍がブンッと唸る。
ぶわっ、と黒い霧になり、ゾンビは霧散する。
「ひっ!」
獣人族の反射神経で、すかさず、モニをお姫様抱っこする。
あのままだと、頭部からの落下だからね。
「モニ、止血できる?」
「で、できる」
苦しそうだな。
「おい、ジュナ!この馬鹿野郎!」
「え?」
「手に余るときは、助けを呼ぶんだよ!右足、潰れているぞ!」
「そ、そんな……お、お俺……」
「ピア副団長!封印を解こう!モニが負傷した!」
「だめだ、数がまだ多い!実を言うと、外の連中ではこいつら倒せない!バラけたら犠牲者がもっと増える!彼奴ら、見習いなんだ!」
え?そうなの?
「モニ、脚のここを軽く押さえるんだ、いいな」
「う、うん」
「大丈夫、必ず助かる」
「うん!」
私は残り九体か。
周囲に北のゴブリンの気配がある。
王都の北のゴブリンは、騎士団に指導しているらしい、という話を聞いた。
さらに、ここには朱槍のゴブリンがいるらしい。
フーララさんも言っていたし。
人目につく行動はしていないようだが、これ以上負傷者がでれば、参戦するみたいだな。
「いいか、何かあったら叫べ!」
そう言い残し、朱槍を握り締める。
私が、九体のうち、三体を倒すと、突然、封印の壁が割れた。
「え?」
「だ、誰が解いた!」
慌てるピア副団長。
封印を破り、突風のように飛び込んできた三毛猫は、残り六体のゾンビを瞬殺する!
次回配達は 2023/03/19 朝7時の予定です。
サブタイトルは 君たちの名は、思い出の名2 です。




