【第39話】 校庭で待っていた二人
夕刊です。
何かしたかな?
「あ」
「おい、何かしたんだな?何をした?ほれ、速やかに白状する!」
「よ、呼び出しがあった。連絡事項があるから、残るようにと」
「で?」
「で、無視した」
ご、ごめんなさい。マズかったかな?
「よくやった!」
え?
「明季、誉めてやる!相手の言葉に、縛られず、自分で判断したんだな?残るのは嫌だと?」
「う、うん」
「いいぞ、それだ。いいか、必ず自分で判断しろよ、人に任せるな!」
「わ、分かった」
「獣人族は自由の民だ。我儘な民なんだ、誰にも縛られるなよ?」
「う、うん」
「金狼はその象徴だ。負担に感じることなく、自由に振舞え」
「うん!」
段々と二人に近づいていく。
校庭は照明器具がぶら下がったり、立ち上がったりして、結構明るい。
いや、学校の周りも明るい。
獣人族の村は夜が早かったからなぁ、ここ、夜、あるのかしら?
ざわめきが、遠く、近く聞こえてくる。
どのくらいの人が住んでいるのかしら?
色々なお店がありそうだ。
ちょっと楽しみ、ゲーセンあるかな?いや、こればかりは無理か。
この明るさ、魔石かな?違うな、それ自体が光っている。
校舎内も天井自体が光っていたし。
あ、そろそろ声が届く距離。
(無視して進むぞ)
囁き声で伝えるシンお姉ちゃん。
「シュート家のマ・シーウ・シャンソンさんと明季さんですね?」
「私達は生徒会の……」
ここで言葉が止まる。
え?変な臭い?
いや悪臭?違う、この臭い、毒がある!?
ここ、王都だよね?校内だよね?
ここでアタック!?
「明季!何か来るぞ!そこのエルフ二人!武器は携帯しているか!?戦えるか?」
「え?なにこの臭い!」
「うっ、吐きそう!」
私の横にはエノンが立つ。
素早い!
え?ピアさんも?
ピアさんは抜刀し、だらり、と腕を伸ばし、自然体で一点を見ている。
「腐敗臭だな、ネクロマンサーか?ゾンビ召喚かもしれん、聖炎の使い手はいるか?」
周囲の温度が下がり始めた!
え?寒い?
バチンッという音と共に、校庭全体が、黒い霧のようなものに覆われる。
その黒さは、息苦しさを感じる。
黒い霧は悪意の塊みたいで、呼吸すると肺が悪意に蝕まれる感覚さえある。
うげっ、これ嫌だ!
何これ!?
これ封印の結界?
「おい、ピア、これ結界だろ?」
「中に閉じ込められたな」
校舎から次々に人が出てくる。
反応早い!さすが学校!
「エルフさん達、こっちに。明季くん、うちがいるから大丈夫だよ」
「これは、昼間、試験中に呪符を埋めたな」
「あのう……」
あれ?女の子の声?慌てて振り向く私。
「!」
え?
「モ、モニさん!?校舎に戻ったんじゃ!?」
「そ、それが、見えない壁みたいなのがあって、運動場から出られないの、なにこれ?」
「モニ、無事か?」
「ジュ、ジュナサン!」
「心配で校庭に来たけど、これは?」
ボコン、ゴボゴボッ、異様な音を立て、地面から何か異形の物が飛び出てくる。
呪符が胸に貼り付けてある、泥人形?
その泥人形が、ゆっくりと、じわりじわり、と歩いてくる。
多少暗くても、よく見える獣人族の目とゴブリンの目。
うわぁ、いやだぁ、あれ怖い!
泥人形じゃない!?頭に角生えているし、爪とが凄いんですけど!
いろんなモノが生えたり、はみ出たりしているんですけど!
こんなゾンビ、ゲームでも見たことないよっ!
「来たぞ、シン、数は分かるか?」
「ゾンビ兵は二十体、召喚者1名」
「こちらは?どうなっている?」
「私だろ、ピア、エノン、明季、モニ、エルフ2名、思春期男子1、全部で8名」
シ、シンお姉ちゃん!?ジュナサン君嫌い?
(嫌いだね、あいつ、明季に惹かれているぞ)
えええっ!?な、なにそれ!?
私のこと、甘いと言って鼻で笑った人だよ!?馬鹿にしているんじゃないの?
(あいつ、今度、変なフェロモン出したらしばく!私の明季に!)
私のって……あれ?
「シ、シンお姉ちゃん?あの気持ち悪い泥人形、ふ、増えているよ!」
次々に地面から湧き上がる異形の塊。
あれは……犬?いや、小型の魔獣ゾンビ!?
「おい、生徒会名物姉妹、どのタイプのゾンビだ?分かるか?べんきょーしてんだろ?教えろ!」
どのタイプ?タイプがあるんだ。
でも、教えろって、ピアさん、騎士団の副団長って聞いたけど?知らないの?もしかして勉強、嫌いなのかな?
「嫌いなんだよ!小さい時から。勉強担当はリュートなんでね」
うげっ!?聞こえていた?
「で、どうなんだ?名物姉妹」
「そんな、特産物みたいに言わないでくださいっ!美観、タイプ分かる?」
え?
「ンなん自分で調べろよ!」
「イヤよ!あんなの魔力感知で触れない!」
「禁呪は手に余るってか?」
「そうじゃない!虫やナメクジ、ヘビやGも魔力感知OKだけど、ゾンビ系だけは無理!絶対できないっ!生理的に無理!」
「泣くなよ!情けないなぁ、えーっと……ピア副団長、思念タイプです。単純物理攻撃は無効です!」
「聞いての通りだ、攻撃手段を魔力で満たせば有効、他は無効だ。思念タイプだからゴースト・アタックがあるかもしれん、憑依されるなよ」
ゴーストアタック?
いや、それよりも、このエルフさんの名前……!?
「うち、知っているよ明季くん。精神攻撃。テンション、士気が下がり始め、段々と病んでいくんよ、うち、あの攻撃、陰湿で嫌い!」
うわっ嫌な攻撃!と思いながらも自然とエルフさん姉妹に目が向う。
この人の名前、なんって言った?
だから、試験場であれだけ惹かれたのか?
「敵の情報はもういいかしら?何か分かったら随時報告するよ、では始めるねぇっ!ファイヤーウォール!」
炎の壁が轟音と共に立ち上がる!
次回配達は 2023/03/18 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 君たちの名は、思い出の名 です。




