【第38話】 保健室の住人
おはようございます。
朝刊です。
サブタイトル変更です。
諸事情により一時間早い投稿いなりました。
「借りた物はちゃんと返さないとな、これは明季が借りた物だ。私も使わせてもらったし」
ノックをする、シンお姉ちゃん。
そのマナー、どこで覚えたの?
「シュート家・シンと明季だ、入るぞ」
「「「「「!」」」」」
引き戸の扉が開かれる。
あ、中の皆さん、固まっている?
正面に保健の先生。
男子五人、女子三人。何の集会だ?
「筆入れ、ありがとうございました」
ん?ベッドで寝ていた生徒さんがいない?
「あ、彼はもう帰ったわ。バイトなの。明日、私から渡しておくわ」
「バイトですか?寝ていたのに?」
「睡眠不足、過労で倒れて寝ていたのよ」
そこまでして働くとは?
ワケありなんだね。聞かないことにしておこう。
「ではこれを、ありがとうございましたと、お伝え下さい」
「確かに預かりましたよ。伝えておくわね」
「行こう、シンお姉ちゃん」
「世話になった」
「あ、体調はどう?あの魔石、魄をかなり使うの、お腹空いていない?今日は沢山食べて、早く休んだ方がいいわ」
「あ、はい。ありがとうございます」
長居は無用だ、さっさと出よう。
ん?シンお姉ちゃん?
シンお姉ちゃんは一人の女子生徒を見ていた。
どうかしたのかしら?
女子生徒はお顔を真っ赤に染め、俯いている。
「そこの女子、私に聞きたいことがあるだろう?」
「え?」←女生徒。
「え?」←保健の先生
え?←私。
「実技試験の時、私を見ていたな。明らかに他の男達とは違う視線だった」
あ、男子達、一斉に横向いた!?
男子!何を見ていた!
まあ、シンお姉ちゃんは黒豹の凄い動きで、モデルみたいな美人さんだけど。
「筆記試験は白紙だ、試験はおそらく不合格だ。ならば今、聞かなければ機会はもうないぞ?」
すると、俯くのを止め、絞り出すような声で聞いてきた。
「わ、わた、私はモニ・モニトと言います。実技試験の組み手を見ました。凄いバランスで攻撃も防御も回避も、まるで舞を舞っているようでした。どうしたら、あんな風に動けますか?」
それは獣人族、特有のバランス感覚、予測と魄の柔軟性です。
人族で再現するのは、相当修行しないと無理だ。場合によってはできない。
「予測してみたかな?」
「はい」
「言ってみろ」
「重心の滑らかな移動、関節の柔軟性?」
「なるほど、重心移動の仕方と柔軟性の鍛錬が知りたいのだな。重心の移動は意識して歩くことだ。日常の動作をいかに意識するかだ。それと食べ物だ」
「歩く、ですか?あと食べ物?」
「歩く、は最初の一歩であり、到達点だそうだ。私はそう師匠から教わった。柔軟性は重心の移動を覚えると、身体が自然と動き出す。食べ物は暴飲暴食を避け、魔力に満たされた水か自分に合った水を飲め」
師匠って?
誰?
……あ、ランお母さんか。
「そうだな……モニはティーを知っているだろう?彼は常日頃料理のことしか考えない、料理の向上こそが全てなのだ。生活と料理が一致している。ニトも同じだ。分かったか?」
「え、っとその」
「普段の生活の中に鍛錬がある、と言っているのよ。そうでしょう?シンさん」
お、この保健の先生理解が早い!
シンお姉ちゃん、説明が難しいよ!
「一つ教えてやろう。お前達、みんな椅子に座って脚組んでいるな」
「!」
「私達獣人族は脚を組まない。何故だ?立ち上がる動作が遅れるからだ。身体の歪みに繋がる、と言う者もいる。氷獣は待ってはくれないからな。ん?」
男子生徒が私を見る。かなり強い視線だ。
明らかに、シンお姉ちゃんを見る目と違うけど?
この視線、なにかな?
「横の独眼は蹴りを喰らった、なぜ避けない?慢心していたのか?」
う、これは痛いな。
「ジュ、ジュナサン!」
慌てるモニ。私は腫れ物か?触ってはいけないモノか?
「……明季は警戒していた。が、緊張を解いたのがいけなかった。それと、審判の言うことを聞かなければ、と自分を縛ったのがいけない」
「明季くんは優しいのよ」
「え?先生?」
「ジュナサンなら審判を無視して脚を折るでしょうね、明季くんはそれをしたくなかったのよ、それ
だけよ」
え?なに?この先生?
「直感能力者か?」
「そうよ、先祖にエルフがいてね、人族だけどちょっと違うの」
直感?ああ、だから、あの不思議な魔石が私に有効だって、分かったんだ!
「ふん、今後お前達の前で明季が緊張を解くことはない。私も然りだ」
「そ、それは私達を敵と見なしているのですか?」
「一度、怪我をした子犬は、二度とそこに近づかない、猫も然りだ」
え?そこまで言うの?シンお姉ちゃん。
わたし、お菓子くれるなら、あっさり貰うかも。
特に、アメちゃん。
「じゃ、独眼は甘かったんだな」
うう、反論しきれません。
ん?シンお姉ちゃん?
「甘いだと?実技試験で、私の乳房ばかり見ている奴がいた」
「!」
あっ!男子陣、全員固まった!?
「不躾な視線は、無粋以上に不快だ。明季に甘いヤツだ、と言ったところで、お前が強くなるわけではないぞ?くれぐれも勘違いするなよ?明季、行くぞ」
「お、お邪魔しました」
お、お姉ちゃん、言い過ぎ?
は、はやく出ようよ!私達、もしかして注目されている?
いろんな意味で恥ずかしいよ!歌って、鼻血出して、お絵かきして!
外に出ると、もう日が暮れて真っ暗だった。
あれ?足音が?
この足音、女の子?息遣い、モニさんだ。
「あ、あの!」
「?」
「ありがとうございました!」
「たいしたことは、言っていないけど?」
あ、シンお姉ちゃん、男子がいないところでは性格変えている!
「また、教えて下さい!」
「受かっていたら、良いんだけどね。二人とも、ほぼ白紙なの」
いや、私の情報、流さないで!
「受かったら、入学しますよね?」
「私はする、明季はまだ保留かな?」
「そ、そんな、お二人とも是非、来て下さい!待っています!」
「ん?どうした明季?」
「あの、皆さん、身体弱いのですか?違いますよね?」
「え?ああ、あそこで待機しているんです。今夜、リュート先輩達が帰ってくるそうなので!」
そう言って、彼女は元気に手を振り、校舎に向う。
あ、振り返って、また手を振っている!
リュートお母さんの関係者!?
あの男子達、リュートお母さんも変な目で見ていないでしょうね?
「シンお姉ちゃん、人気者だね」
「やめて、恥ずかしい。それに入学したら、あの子、先輩だぜ?」
あ、そうなるのか?
しかし、ここで、突然止まったシンお姉ちゃんに、ぶつかる。
「きゃっ!ど、どうしたの?」
ん?前方に人影?エノンかしら?
「エノン?」
「違う、影は二つだが。エノンはピアさんと二人で校門側にいる。魔法で風向きを変えているな、明らかに私達がターゲットだ」
匂い防止か?あれ?あれは?
「試験官のエルフさん達だ。私の筆記試験の!」
「また何かしたのか?」
あ、信用無いな、私。
次回配達は 2023/03/17 17時頃の予定です。
サブタイトルは 校庭で待っていた二人 です。
少し、グロテスクな内容になりそうです。




