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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第37話】 お腹空いた

おはようございます。

朝刊です。

 結局、名前は間違えた。


 一生懸命覚えたんだけどな。

 努力が足りなかったか。

 まあ私の努力は、所詮こんなものか。


 くやしいなぁ。


 教室が、段々と寂しくなってきた。

 後、4、5人で受験生は私だけになる。


 どうせ残ったって、ろくなことは無い。


 帰ることにした。


 残った受験生に紛れて、足早に教室を出る。


 教室に、残された関係者三人。


「あれ?明季さんは?」

「あれ?いないのう」

「え?先生!お話し、していたでしょう!?」

「いや、あの子はアケイくんじゃぞ、ほれ、名前が書いてある」

「あの人、明季くんです!校庭での実技試験、見ていなかったのですか!?」

「はて?研究が忙しくてのう、ここにはアケイと書いてあるが?」

「名前?え?先生!?……この解答用紙、白紙!?」


 ふん、笑えば笑え!


 もともと、この学校に必要とされていない私だ。


 筆記試験を実施する、ということは、そういうことだ。


 筆記試験は、読み書きできるのが最低条件だと思う。

 私はその条件を満たしていない。


 そもそも私の受験は、無謀なのだ。


 結果は分かっていたが、あれだけ練習した名前を間違える、自分が情けない!


 腹立たしいぃっ!


 学校は、読み書きを教えるところ、と思っていた前世の記憶!邪魔だ!


「明季、どうだった?」


 シンお姉ちゃん!

 うう、シンお姉ちゃん。

 目がウルウルになってしまう。


「名前、間違えたみたい」


「そうか……」


 あれ?

 おかしいぞ?


「シ、シンお姉ちゃんは、どうだったの?」


「ほぼ、白紙だ」


「えええええっ!?な、なんで!?」


 ど、どうして!お姉ちゃん!?


「驚くことないだろう?問題が全く何を聞いているのか、分からん!」


「え?」


 問題自体が分からない?どんな問題なの?


「明季、円周率ってなんだ?初めて聞く言葉だが、知っているか?知らないよな?そんな言葉、村にはない」


「え?」


「魔法詠唱平均時間ってどのくらいだ?明季は、無詠唱だろ?私も一言、二言だし。あの先生、えーっと……」


「ア・ダウ先生」


「そうそう、アっちゃんだって集中型の単文字詠唱だし。だいたい、時間の単位って知っているか?」


「え?」


「速度とか、重さとか、単位?何の問題なのかさえ分からん!」


 こ、これは、私とシンお姉ちゃんが二人で解いたら、満点では?


 ん?ほぼ?


「解ける問題も、あったの?」


「解けるというか、最後の問題だけな」


 最後の問題?どんな問題なのだろう?


「どんな問題なの?」


「問題というか、あれは……」


「?」


「あれは、自分の得意とするもの、特技、暮らしを、解答用紙裏に書きなさい、ってやつだ」


 うげっ!


「うげっ!」


 あ、思わず声が出ちゃったよっ!


「どうした?変な落書きでもしたか?」


「した」


「あはははっ!まあ、仕方あるまい。描いちまったものなら、今更、どうしようもないしな!」


 あら、楽しそうに笑うのね?シンお姉ちゃん!


 どうしよう、どうしようもない。後先考えず、衝動で描いたし。


「シンお姉ちゃんは、何を書いたの?」


「氷獣の倒し方。それと、トビトカゲの捕まえ方と、そのお肉の焼き方」


「あははははははっ」


(作者注*わはははははっ)


「おい!何を笑うんだよっ!いいだろ!獣人族の得意分野だぞ!」


「そ、そうね、きっとシンお姉ちゃんのことだから、詳しく書いたのでしょう?」


「ああ、問題用紙の裏まで、ビッシリ書いたぜ!」


 ふんっ!と自慢げである。


 シンお姉ちゃんとお話しして、一緒に笑う。


 すると、憂鬱な気分は、どっかに行ってしまった。

 ああ、昔も今も、私はこの人に救われる、大感謝だ。


 エルフさん、シンお姉ちゃん、大……だい、しゅ、しゅきだよ。


 おかしい、な、なぜだろう、言葉が詰まる。妙に恥ずかしい!


 エノンや、リュートお母さんには素直に、大好きって言えるのに、シンお姉ちゃんには……。


 じっーとお顔を見る。


「ん?なんだ明季?」


 ……しゅ、しゅきっ。


 おかしいっ!なぜか恥ずかしいっ!

 素直に言えないっ!

 頬が赤くなるのが分かる!どうしてだ!?


 くーっきゅるるるるるっ。


「なんだ?明季、お腹空いたのか?」


 このタイミングで鳴る?


 こくこく。


「早く終わらせて、さっさと帰ろう。エノンが校庭で待っている。今日はご馳走だとよ」


 こくこく×2


「ここだな、保健室」


「う、うん」


 ドアを開けようとすると、室内の声が聞こえてきた。


「審判を信じたのか?馬鹿じゃん、そいつ」


 !


 私のことか?

 

 あ、シンお姉ちゃん、体臭が変った!?

 一瞬、怒った?


「周りは全て、敵だぞ?見ろよ、商工会。信じたヤツは破産、見殺し、ここは自分達の身内も殺すような世界だぜ?」


「ここは学校だ、商工会と一緒にしてもらっては困る」


「一緒だろう?正直者が馬鹿を見る世界だ」


「おまえさぁ、それをリュート先輩に言えるか?」


「うっ」


「ホッシー先輩にも言える?」


「くっ」


「ドロトン先輩なんて素直の塊だぜ?言えるのかよ?」


「ぐっ」


「ニト先輩はどうだ?あの人、負傷者みたら敵味方、関係無しだぞ?」


「いや、あの先輩達は……」


「ティー先輩はどうだ?あとジェイ先輩は?」


「あ、あの二人ならいいよ、ティー先輩、料理人で商売人だし、ジェイ先輩は敵味方、容赦無しだし」


 あはははっ。

 笑い声が聞こえてくる。


「開けるぞ、明季」


「……う、うん」


 気が進まない。

次回配達は 2023/03/17 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 校庭で待っていた二人 です。

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