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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第35話】 筆記試験、始まる

号外です。

「あ、改めてお礼にきます!」


 アナウンスが聞こえてくる。


「合格者は試験官の指示に従い、各教室に入ってくだい。繰り返します!合格者は……」


「明季くん、急ごう!」


 エノンに手を引かれ保健室をでる。


 え?校庭にはもう、誰もいない?

 さて困った。シンお姉ちゃん、どこだ?


 試験官の指示とは言うが、どの教室だ?矢印は分かるが、何だ?この文字?


「こっちだ」


 ニトお父さんが声を掛ける。


 そこは、保健室とは別棟の教室だった。

 校舎内は人で溢れて、ん?合格者、多いな。それとも運動場に比べて、狭い校舎内で見るから多く見えるのかしら?


「じゃ、ニトお……ニトさん、エノン、頑張ってくるね!」


「うち、校庭で待っているね!」


 慌てるなよ、綴り、間違えるなよ、と小声でニトお父さん。


 ……ここまで頑張って、皆に応援してもらって、解答用紙は名前だけ?

 悔しくて、悲しくて、本気の涙が出そうになった。


 教室はまだ着席者は少なく、雑然としていた。


 試験官もいない?


 教室は分かったけど、シンお姉ちゃんは……いない?

 探すか、シンお姉ちゃん、まだ時間あるみたいだし。


 意識をシンお姉ちゃんに集中する。


 こっちだ。

 匂いと、声がする。


 私が動くと、その方向に道ができる。


 みんな避けてくれる?

 怖がられているだけ、かな?


 あ、見つけた、シンお姉ちゃん。


 !


 横にいるのは、アランお兄ちゃん?


「試験が終わったら、孤児院に来てくれってさ。場所は知っているよな?」

「ああ、知っている」

「どうだった?実技」

「明季が怪我をして、エノンがキレた」

「なんだよそれ?シン姉、シン姉が付いていながら怪我させたのか?」

「そう言うな、守ってやりたかったんだが」

「その明季の相手、満月の夜は注意した方がいいかもな」


 なんか物騒なお話しているなぁ。


「なに、お話ししているの?」


「お?明季か、今後の話さ、怪我はいいのか?」


「うん、アランお兄ちゃんの怪我は、もういいの?」


「俺の心配は無用さ、筆記試験、頑張れよ」


 皆の頑張れが、痛い。


 試験官の声が聞こえてきた。


 受験生、入室!繰り返す、受験生!入室!


「シンお姉ちゃん、それでリンドウ、どうなったの?」


「詳細は後で話す。試験が終わったら、孤児院へ行くぞ」


「はい、これ」


「なんだ?」


「筆記用具」


「おっ!さすが明季、試験管に借りるつもりでいたけど、用意したのか?」


「保健室で借りたの。だから大事に使ってね。どっちがいい?シンお姉ちゃん」


 シンお姉ちゃんだから、木箱かな?


「ピンクをよこせ、そっちがいい」


 え?予想外れた。


「はいどうぞ」


「だから、ピンクよこせ!」


「ええっ、イヤだ!私もピンクがいいっ!」


「あ、妹のくせに生意気だぞ!そっちよこせ!どうせお前、名前だけだろ!お姉サマの合格祈って、

ピンクよこせ!」


「あああっ!ひ、酷い!酷い!ひどいっ!それ言う?ここで言う!?シンお姉ちゃん酷い!」


「酷くても事実だ!ほれピンク!」


「え~っ!い、い、や、だぁ~!」


「お前ら、仲いいな?イチャイチャしないで、はやく教室行けよ、二人とも」


「「イチャイチャしてないっ!」」


 結局ピンクの筆入れは取られた。


 うう、最終的には譲ってしまう。

 前世からの因縁か?エルフさんには逆らえないのかな?


「えっと、明季の席は?あ、あそこだ。机に名前が張ってある。確認しろよ」


「分かった」


「私は別の部屋みたいだ、終わったら校庭な。それからこの筆入れ、返しに行こうぜ」


「……うん」


 正面の黒板にも書いてある、席順と名前。


 ……あれ?名前が書いてある?そこまで必死に覚える必要、あったかな?


 あ、なんか落ち込んできた。


 筆記試験、書けるのは名前だけ。それも黒板、見ながら書けば、問題なし?


 更に、今までの実技試験を振り返ってみる。


 歌って、蹴られた?


 あれ?……試験、落ちたかな、これは?


 今の時点で私、ただのトラブルメーカーではないか?


 加えて筆記試験、白紙確定。

 ここまで支えてくれた、皆の応援は、どこへ?

 うう、悔しすぎて、怒りでゾアントロピー起しそうだ!


 何もできないなんて!


 私の席は、窓側の一番後ろ。


 私で最後みたいだ。皆の視線が私を捕らえる。


 ヒソヒソ声も聞こえるが、聞かないことにする。


 静かになる教室。


 私が座ると、席は皆、埋まったようだ。


 ドアがカラカラと開き、三人のエルフが入ってくる。


 高齢の男性一人、妙齢の女性二人。


 手には大量の紙、問題用紙と解答用紙だろう。


 ……ん?なつかし匂い?いや違うな、なんだこの雰囲気?不思議な感覚だ。


 このクラス、30名程か?一枚一枚、丁寧に配布される問題用紙、と解答用紙。


 教壇に立った高齢男性の説明が始まる。


 終了時間は教卓に乗っている巨大砂時計が終わるまで、退室は自由。


 なんとカンニングも条件付きで、いいそうだ。

 その条件は、試験官に三人にバレなければOK。

 ただし、バレたれ即不合格、だそうだ。


 カンニングも、才能として認めているらしい。


 おもしろい考えだな。


 静かな教室にプリントは行き渡り、みんな動かない、固まっているよう。


「発表は明後日の午後、校舎に名前が張り出される。受付で返事、入学しますと言えば、その場で入学が決定する。詳細はその時受付で聞いてくれ」


 受験者も試験官も、真剣な眼差しだ。


「では、試験を始める」


 大きな砂時計がぐるり、と回る。


 世界が、一斉に動き出す。


次回配達は 2023/03/15 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 止まらない筆 です。

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