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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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244/406

【第34話】 責任は?

おはようございます。

朝刊です。

 流血の試験。

 組み手ならば、多少は仕方ないと思ったけど、この人、故意だよね。


「避けれなかったのは、私の油断、ミスよ」


 この場を納めないと。他の受験生に迷惑が。


 それに、エノン!これはやり過ぎだよ。


「うち、そっちの審判も気に入らない。グルだよね?」


 そうだろうけど!

 確かに、二人の審判の内一人は、ジャッジも何も、していない!


「王都の学校って、この程度?明季、うちの孤児院においで、ここはクズだ」


 いや、だから、ニトお父さんもリュートお母さんも、ホッシーもここの生徒なんだって!

 あの美味しいご飯のティーくんも!コツコツ頑張っているドロトン君も!


 悪意の人ばかりじゃないんだよ?


「リンドウ、お前の一蹴りで、学校の名誉は地に落ちたぞ?たった一人の愚行で」

「あ、当たっただけだっ!は、はやく槍を抜けよっ!保健室、連れて行けよ!」


 まだ言い張る。


 ここにいる人達は、それなりの人達。

 言い訳は通じないよ?


「元気いいな?リンドウ、お前、槍抜いたらソッコーで逃げるだろ」

「うっ、ニト、きさま……」


 え?そうなの?

 元気、いいなぁ、とは思ったけど……。


 更に、ニトお父さんの厳しい言葉が続く。


「明季くんへの謝罪の言葉は?お前の回復力は知っている。シンさん、こいつ、このままでも問題なしですよ。さあ行こう、明季くん」


 周囲の目と声。


「先生、明季くんを保健室に連れて行きます」


 ……ニトお父さんの言葉にほっとしたのか、保健室という言葉に安心したのか、急に脚の力が抜けた。


 やばっ、テーピングの効力、切れた?

 痛みが……。


 私はニトさんに肩を預け、保健室に向う。


「うちも行く」


「後は任せろ、明季」


 ええ?任せて大丈夫?シンお姉ちゃん?

 シンお姉ちゃん、殺気だけで、人が斬れそうだよ?


 建物に入っても、声が聞こえる。


「お前を信用して使った私達、試験管理課にも問題があるか……お前を退学処分にしても、名誉は回復しない」

「それで、どうするのだ?責任は?お前達の名誉など意味が無い、こいつを選んだ者、止めきれない審判……そうだな、お前達は金貨集めがすきだったな」


 金貨?


 もしかして、お金、要求するの!?


「……」


 あ、もう聞こえない。


 保健室には元気な女の先生がいた……忙しそう?


「組み手で当たったの?だから言ったのに!横で待機しているって!なにが安全よ!これ、学校側の慢心よ!組み手するのに、保険医なしなんて!」


 青い髪のスレンダーさん。

 赤い縁の眼鏡がとても似合っている。


 10くらいあるベッドには、結構な人数が寝ている。


 深手の人も多い?


 え?この学校の保健室、野戦病院なみ?


「エノン、後ろで待機」

「なんで?ニト?うち、明季くんが心配だよ!」

「傷口見たら、リンドウのヤツ、死亡確定だ。だからエノンは見るな!」


「「そ、そんなに酷いの?」」


 綺麗にエノンとハモった。


「傷、残ります?それと、鼻、元に戻りますか?」


 鼻の軟骨は直ぐに曲がるのだ。

 心配で聞いてみた。


 気を抜いたのが間違いだったな。

 受験は真剣勝負、それは前前世も今生も変らないか?


「大丈夫よ、ニト、痛み止めを、それと身代わりの魔石を」


「え?先生、アレ使うの?」


「使うわよ!女の子の顔に蹴り?それも止めの後?この子、まだ生徒じゃないんでしょう?それに体細胞が赤ちゃんよ?」


「え?ここに身代わりの魔石あるの?」


 エノンがビックリして聞く。


「?」


 なんだそれ?


「あのね、明季くん、身代わりの魔石は、怪我をした時、代わりに割れて、助けてくれるんよ。とても高価で珍しい魔石なんよ」


「死に至る重傷者でも、助かる可能性があるんだ。魂魄、どちらかの力が一定以上で、魔石が割れれば、必ず助かる」


 え?凄い魔石!死を回避する!?


「ただ、この魔石、人によっては割れない、微妙な魔石なんだ」


 そ、それでも、使い所ここでいいの?


「その魔石、どのくらい数があるのですか?」


「今、世界で確認されているのは、7つかな?うち、3つがここにある」


「そ、そんな貴重な魔石、使い所、間違っていますよ!」


「え?今こそ使う時よ。それにこんな石とか、珍しい生き物とか沢山、管理しきれないくらい集まるのよ、ここ学校だし。さあこれよ、握って!」


 管理しきれないくらい沢山?学校とは?ここ研究施設に近い?


 握らされた魔石は小さく、綺麗な緑色だ。


 え?と思った瞬間、魔石は何もしていないのに、パチッ、と軽い音を立て割れた。


「お、割れた」


 !


 お顔と、脚が?あ、熱い?


「え?これ?」


 凄い魔力に一瞬包まれる。

 誰かが、暖かい優しい手で触ったみたいだ!


 もう痛くない?脚も?一瞬?


 あ、でも右目は再生しないか。


「割れたわね?記録記録と、どう?もう痛くないでしょう?痛い?」


「いや、もう平気です」


「目は?」


 ニトお父さんが聞いてくる。


「目は、見えません。あ、あの、ありがとうございました!こんな貴重な魔石を使って」


「いえ、こちらこそ、ごめんなさいね、せっかく、ここの学校選んでくれたのに、酷い目に合わせて。ニトくん、彼女を試験場までいいかしら?時期、筆記試験よ」


 あ、忘れていた。


 そう、筆記試験!


「あ、あの!」


「なに?まだ何処か痛いの?」


「……筆記用具、あります?二人分」


「え?」


「その、王都で購入する予定だったんですけど……」


 保健の先生は、はい、どうぞ、と笑顔で、可愛いピンクの布の筆箱を一つ貸してくれた。


 横に寝ていた生徒さんも、俺の使えよ、未来の後輩くん、といって、こちらは木製の筆箱を貸してくれた。


「ありがとうございます!」


 少しだけ、この学校が好きになった。


次回配達は 2023/03/15 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 筆記試験始まる です。

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