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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第33話】 ヒートアップ

夕刊です。

「では始める」


 と、審判さんが言った瞬間、前蹴りが飛び出した!


 は、速い!


 それに、そちらから仕掛けるの?

 私の技量を見るんでしょう!?


 軽く打ち合う?

 実力検査?


 獣人の私に対して、このスピード、蹴り、おい、審判さん止めないの?

 それともグル?共犯?


 明らかに、当てにきている。


「止めっ!」


 ピタリッ、と止まる受付さん。


「リンドウ、明季くんの試験だ。お前が仕掛けてどうする?趣旨を理解していないのか?」


「……いえ」


「明季くん」


「は、はい」


「よく、受け流したな。攻撃も見てみたい。積極的に攻めていいぞ」


「はい」


 荒れそうだな。


 ん?校舎から数人出てきた。


「リンドウの蹴りを流したぞ、あの子。さっきの歌といい、何者だ?」


「シュート家・明季くんよ。あの子のお姉さんも凄いわ、ヌマさんと踊っていたし」


「あの歌、凄かったな、ホッシーが荒れるぞ」


「ゴブ、ニトのペガちゃんで登場したゴブ。ホッシー知ってると思うゴブ」


「何?ミント、あなたもあの子に興味、あるの?」


「ゴブゥ……気になるゴブ」


 周囲の声が耳に入ってくる。

 今は試験に集中しないと。


「始め!」


 試験官の声が響く。

 ふっ、と視界から消えるリンドウ。


 あ、右に回ったんだ。

 そして、裏拳を使ってきた!


 また仕掛けてきたああっ!


 ならばっ!


 こっちだって、大事な試験だ!こんなやつに台無しにされてたまるかっ!

 使いたくないけど、仕方ないっ!

 私の見えない右側に周り、攻撃を仕掛けてくる。


 普通はバックで避けるだろうが、私は半歩進んだ。


 そして、その裏拳の攻撃を流し、右肘を取った。


 取った!


 いくぞっ!

 私は肘にぶら下がり、両脚をうでから肩に駆けて絡ませる。両手は肘から手首に移動し捻り、引き延ばす。


 関節技。


 密着するから、本当はイヤなんだけど、仕方ない。

 本音で言うと、こんなヤツ、触りたくもないっ!


 だけど、このリンドウ、腕が立つ。

 このまま立ち技で勝負すると、怪我をする、と判断した。


今の私は降下期、ピアさんの、おっぱ……癒やしの波で、回復はしたけど、十分ではない。


 それに、私は気づき始めた。


 この人、最初は人族と、思ったけど、違うようだ。


「ぐっ!」


 リンドウお顔が引きつる。

 小さな声と共に、あ、ポイントをずらされた!


 左腕が私を引き離しに来る。


 その方法が目潰しだ!


 うわぁ、これ、もう試験じゃないよ!


 審判さん、止めよう?


 その私の目に迫る手を摑み、手首をひねる、


「ぎゃっ」


 そのまま摑んだ手首を、更にひねる。

 リンドウは器用に、その場でくるり、と宙返りし、大地に叩きつけられる。


「がっ!」


 私は流れるままに左足を摑み、膝を極めた。


 極まった。


 もう外れない。

 まったく躊躇うことなく、膝を伸ばそうとすると、声が掛かった。


「や、止めっ!」


 ぎりぎりで技が止まった。


 私はリンドウを見る。


 そして、審判二人を見る。


「止めだ、止めたまえ、明季くん。充分だ」


「試験は?」


「合格だ」


 うん、よし、とする。


「分かりました」


 そう言って私は、技を解いた。


 技を解いた瞬間、リンドウは私の顔を蹴り上げた。


 あ、油断した。


「きゃっ!」


「リンドウ!」


 リンドウを摑み、引き離す審判さん。


「保健室に!ニト!ニトを呼べ!」


 小さい悲鳴を上げたのは、私ではなく、ギャラリーだ。


「おい、見たか、蹴ったぞ!?」

「おい、止めないではないか?審判は何をしている!」

「私闘か?試験場で?」


 充分注意したつもりだったが、それでも足りなかった。


 口の中に広がる血の味。


 やはり、右からの攻撃、注意しないと。

 取敢えず、立ち上がり、間合いをとる。


 凄まじい殺気が近づいてくる。


 あ、シンお姉ちゃん、ゾ、ゾアントロピー、起きてるよ!?


 私以上に、怒りの塊となったシンお姉ちゃん。


 朱槍をエノンに渡し、ゆっくりと歩いてくる。


 そう、シンお姉ちゃんは、私の姉であると同時に、母親だ。

 毒の治療で、私達には特別な繋がりができているのだ。


 獣人族の子供、更に女の子のお顔を、鼻血が出るほど蹴ると、どうなるか。


 シンお姉ちゃんより速く駆けつけたのは、ニトお父さん。いや、ニトさん。


「見せてみなさい」

「え、た、たいしたことないですよ」


 本当は、とんでもなく痛い。


「いいから、見せなさい!」


 冷たいヒンヤリした手が、顔に触れる。

 あ、ニトお父さん、怖いお顔になった。


「リンドウ、こんなことをしてはいけない」


「足が、ちょっと当たったんだよ、大袈裟だな、ニトは」


「君ほどの戦士が蹴ったんだ、どうなるか分かっているだろう?」


 確信犯?

 この感じからすると、鼻が曲がっているのか?


 この感覚、前前世で体験している。

 あれ、痛いし、腫れるんだよなぁ。


 精神的ショックもかなりある。まず、鏡が嫌いになり、人前に出なくなる。


 目の次は鼻か?


 女の子としては、かなりショックである。

 泣いていいと思う、でも涙がでない。


 あれほどシンお姉ちゃんが、警告したのに。

 ごめんなさい、シンお姉ちゃん。


「はぁ?俺はそんな立派な戦士じゃないぜ?」


「君は半分獣人だ、なぜ仲間にこんな酷い仕打ちをする?」


 ヒュン。


 何か飛ぶ音が聞こえた。


 え?なんで私の朱槍が飛んでいるの?


 トスッ。


 軽い音が聞こえた。


 続く、凄い悲鳴。


 リンドウの左足、太腿を貫き、大地に刺さる朱槍。


「その足か?うちの明季を蹴った足は?」


 エノン、容赦なし。


 合格、取り消し、とかならないよね?

次回配達は 2023/03/14 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 責任は? です。

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