【第32話】 筆記試験は、どうなるの?
おはようございます。
朝刊です。
人族で四十歳くらいだろうか、髪は油でテカテカで、目は血走って、怒りでギラギラとしている。
服装は綺麗なのだが、お酒とたばこの臭いが酷い!
お顔も赤いし、ぜったいこの人酔っている!
私の受験生、新入生のイメージではない。
清潔好きの獣人族としては、関わり合いたくない人物だ。
「サイモ、貴殿はそういう心掛けだから、柱は光らないのだ」
試験官の一人が窘める。知人か?
「飲酒しての受験か?」
「俺の勝手だ!」
酔っている。
お酒飲んで受験?いろんな人がいるな、この世界。
いや、お酒飲んで、試験受けてもいいのだ、この世界は。
それでもあの柱、光るときは光る気がする。
酔っ払いサイモは、あろうことか、剣に手を掛け滑らせた。
私は後ろ手に、朱槍を握る。
キンッ、と響く金属音。
凄い技を見た。
酔っ払いサイモの剣を封じたのは、私ではなく、試験官さんだった。
この試験官さん、剣の握り手を切ったのだ!
グリップで分断される剣。
切られた剣の握り手、グリップを見つめるサイモ。
これでは、剣は抜けない!
グリップが切られて、無いのだ。
「き、き、きさま、俺の剣を!」
「次は手首をもらう」
「!……なんだと」
「手首の次は、首をもらう。剣を抜く、と言うことはそういうことだ。帰って頭を冷やせ、それとも続けるか?」
周囲のざわめきが消える。
「どけっ!」
荒々しい声を発し、校門から出ていくサイモ。
「さて、今の歌は、私のこの技と同等である。合格者よ、諸君らもだ。不合格者よ、諸君には、他に進む道がある、と精霊が言っている、その道を進まれよ。不合格者、解散」
!
この試験官、学校の先生だよね?
どんな授業、するのかしら?
私が、熱い視線を送ると、私にだけ聞こえる声で、彼は呟いた。
「あ、俺、生徒な。先生じゃないからね、よく間違えられるけど」
ええええっ!?
その貫禄で生徒ぉ!?その物言いで?
先程の声と全然違う剽軽な声だ。
こっちが本音?
ならば、こちらも本題だ。
「あ、あの、私の筆記試験はどうなります?」
ああ、なんとも情けない質問。でも悲しい本音だ。
なんと答える?
お願いっ!
「破壊はしていないから、筆記免除は無し。試験は赤く発光したから合格だ。筆記試験は受けてもらう」
そ、そこを何とかぁ~って無理か。
ああ、やっぱり人生、そこまで甘くない。
もしかしたらっ!と思ったんだけど。
「ただ……」
「なんですか?」
「明季くんは、あのクリスタルを消したからな、それにあの発光。学校としては欲しい人材だね」
そして不合格者は去り、合格者が残った。
欲しい人材?
学校というより、企業に近いのか?
私の学校認識、前前世の記憶だからな、これは邪魔なのでは?
この世界の学校は、私の知っている学校と違う?
校舎の窓には沢山のギャラリー。
大半が、私を見ている。
今は次の試験に集中しよう。
ふらふらと、疲れ、シンお姉ちゃんの元へ帰って行く私。
あ、呆れたお顔している。
「明季、何しているんだ?お前だったら、槍、一突きだろうに」
「……反省しています。なんで、ああなったんだろう?」
「まあ合格したんだ、次、頑張ろうぜ」
ぽんぽんっと私の頭を触るシンお姉ちゃん。
……あ、嬉しいかも、ちょっと元気でたかも。
受験生は半数以下になっている。
「さて次は組み手だ。これは最初に言ったが、勝つ必要は無い。諸君の身体能力実力を見たいのだ。まず、組み手の仕方だ、よく見ておくように」
一礼後、二人の戦士が拳で、軽く打ち合う。
一人はあの剣の達人の試験官。もう一人は……忘れもしない、あの受付だ!
私に臭いと言った、あいつ!
「君たちの相手はこの学校の上級生、もしくは先生だ。横に審判が2名付く。この審判が止めたら、必ずやめるように。違反した者は即、不合格になる、注意するように。試験を終えたらその場で各自結果発表をする。以上だ、質問はないか?」
シンお姉ちゃんが手を上げる。
え?シンお姉ちゃん?
「質問か?」
「シュート家・マ・シーウ・シャンソンだ。相手側がやめなかったらどうなる?どうする?」
「学校側は、必ず止める。そう訓練している」
「もう一度聞く。止めなかったらどうなるのだ」
え?シンお姉ちゃん?シンお姉ちゃんが拘った?
答えが気に入らない?
「止めないことはない」
ムッ、とする試験官。
「分かった。止めなかったら、止めさせていいのだな」
ひーっ、シ、シンお姉ちゃん?なんでそんな質問を?
「そのようなことにはならない。他に質問は?」
みな、実戦形式に、緊張しているようだ。
「では、始める」
ん?シンお姉ちゃん?
シンお姉ちゃんは、囁くような小さな声で話し掛けてきた。
「あの男だろう?明季に臭いと言った愚か者は」
「え?ええ、そ、そうだけど」なんで分かったの?
「嫌な臭いだ。あいつがもし、組み手の相手だったら、気をつけろよ?」
「う、うん、分かった」
組み手は順調に進む。
指導組み手?みたいだ。
技や、欠点を教えながらの組み手。
中には、結構速い動きもある。
受験生の実力に応じての組み手だ。
次はシンお姉ちゃんだ。
シンお姉ちゃんはあの達人試験官と、ゆっくり打ち合う。
二人とも、滑らかな動きで、舞を見ているようだった。
周囲のギャラリーもうっとりとして、二人の動きを追っている。
時間にして3分くらいだろうか?
そしてシンお姉ちゃんが終り、私の名前が呼ばれる。
嫌な予感しかしない。
「組み手交代」
無情にも告げる審判さん。
私の相手は、受付ヤローになった。
あからさまに嫌なお顔をする、受付さん。
そしてこの試験でも私がトリ、一番最後。
まあ、そんな気はしていたけど。
皆の視線が集まる。
ああ、やりにくい!
深呼吸を一つ。
朱槍をシンお姉ちゃんに渡すと、私は前に出た。
「シュート家・明季です。よろしくお願い致します」
礼をする。
「軽く打ち合うだけだ、本気、出すなよ?笑われるぞ」
ふーん、名前も名乗らないのか。
あ、今、鼻で笑った!
「始め!」
審判が声を上げる。
私の実技試験が始まる。
次回配達は 2023/03/14 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは ヒートアップ です。




