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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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【第31話】 入学試験 実技編2

夕刊です。

「明季」


「な、なに、お姉ちゃん?」


「すまん」


「あ、あやまらないで!なんで謝るの?ここは頑張って行ってこい、でしょう?」


 お願い!支えて!応援して!なんか、挫けそうだよ!


「そ、そうか?なら、シュート家・明季、私の妹!頑張って行ってこい!」


「無理」


「……どっちだよ」


「うううっ、どっちなんだろう」


 私にも分からないよ!


 取敢えず、柱に向う。

 あ、足が震えるっ!


 ん?


 声が?


「シンは今すぐにでも、騎士団に欲しいな、どう思う?エノン」


 あ、二人の会話が聞こえる!


「シンは料理好きの、お掃除好きの、子供好き、だよ。騎士団には向いていない」


「では、明季ならどうだ?」


 え?私!?


「うちが思うに、明季くんは、家族が好きで、獣人族好きで、ゴブリン好きで、エノン好きだよ。騎士団には渡さない」


「……自分で言うか?普通」


「プロポーズ、保留中」


「マジかぁ?あいつ、歳いくつだ!?」


 ここで、ちょっと復活した。


 エノンの前だ。

 格好付ける必要はないけど。

 心配させたくない。


 俯いて歩いては駄目だ。


 前を向くと、視線が合った。


 ニトお父さんだ。


 あ、今は違うけど。

 俄然、力が漲ってきた。


「シュート家・明季」


 取敢えず、名乗る。


「槍を使うのか?」


 あ、この人、ゴブリンの朱槍を知っている!?


 取敢えず、無視。


 青色の柱を前に、まず、深呼吸。


 口から、ヒューッと口笛とも声ともつかぬ音が漏れ出る。


 その時、変化が起こった。


 半透明の青い柱が、発光したのだ!


 え?青色に光っている!?


 呼吸法を変え、口笛の音程を変えてみる。

 その音程に合わせて、発光色が変る柱。


 青から緑へ、緑から黄色へ。


 うわっ綺麗!


 どんな仕組み?


 更に音程を変え、強弱をつけると、即反応し、発光の光度が変る。

 口笛ではなく、呼吸法に反応しているみたいだ。


 その発光の度合いが、音ゲーを思わせる。


 いや、これ、音ゲーだ!


 私は周りのことなど忘れて、熱中し始める。


 腹式呼吸でハミングをすると、仄かな発光が、輝きに変った!


 ちょーしこいた私は、声を出してみた。


 まあ、要は歌い出したのだ


 !


 他の2本の柱も光り出した!?


 周囲のざわめきも、試験管の制止の声も聞こえない。


 歌い出したのは、まどかの持ち歌。


 アイドルをしていた、まどかは、いくつか歌を持っていた。


 その中で特にお気に入りの曲。


 大好きなボカロPさんに頼んで、まどか用に作ってもらった曲だ。


 直談判し、お願いし、作ってもらった曲。


 まどか、ゴキゲンの自慢の一曲。


 いつもニコニコして歌っていたなぁ。


 3本の柱は嬉しそうに光り、点滅し、輝く。


 ああ、この3本も、嬉しいのかな?散々叩かれていたし。


 判定は大変なお仕事だ。

 間違えられないし、責任重大。


 清掃員さんの教えが、過ぎる。

 物は大事に扱いなさい。


 物だけではなく、あなたに繋がるモノ、全てを大事に、感謝して扱いなさい、そう言っていたなぁ。


 忘れてしまうんだよね、清掃員さんの言葉。


 そんなの無理だ!私はよく、そう言っていた。


 私が、大事に扱ってもらった記憶が無いからだ。


 この3本の柱、受験生に感謝されているのだろうか?

 落ちた者からは、恨まれるだろうなぁ。


 で、合格した者はこの柱に感謝するだろうか?しないだろうなぁ。


 なぜか、気持ちに怒りが混じった。


 全力で歌い出す私。


 歌が歌い終わると、3本の柱は赤く輝き、その光は更に輝きを増し、辺りはルビーの世界みたいに紅に染まった。

 紅色は、赤紫になり、朝焼けを思わせる綺麗な光りが、辺りを包む。


 そして、その朝焼けの世界はゆっくりと収縮し、柱と共に消えた。


「……」


 やっちまった?

 私、何をしたの?


 赤くはなったみたいだけど?


 消えちゃったよね?柱。


 合格?不合格?


 ぎぎぎぎっと首を回し、試験官を見る。


 あ、固まっている。


 周囲を見回す。


 ぎぎぎぎっと首を回して。


 みんな、ポカーンとしている。

 どうしたモノか。


 再び試験官を見る。


「あの、どうでしょう?不合格ですか?」


 歌っただけだし。


「む、昔、吟遊詩人が歌って光らせた、という記録がある」


 どのくらい昔なのだろう。それで不合格の人達、納得するかしら?


「柱は赤く光った。合格である」


 よ、よかった!


「異議ありっ!」


 ……なんですと?


「歌っただけではないか!俺が納めた剣技は、そいつのヘタな歌より、下と言うことか!」


 はい、おっしゃるとおり。

 でも、ジャッジは私ではありません。

 私を睨んでも、恨んでもいけませんよ?


 周囲がざわめきだした。

次回配達は 2023/03/13 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは 筆記試験はどうなるの? です。

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