【第31話】 入学試験 実技編2
夕刊です。
「明季」
「な、なに、お姉ちゃん?」
「すまん」
「あ、あやまらないで!なんで謝るの?ここは頑張って行ってこい、でしょう?」
お願い!支えて!応援して!なんか、挫けそうだよ!
「そ、そうか?なら、シュート家・明季、私の妹!頑張って行ってこい!」
「無理」
「……どっちだよ」
「うううっ、どっちなんだろう」
私にも分からないよ!
取敢えず、柱に向う。
あ、足が震えるっ!
ん?
声が?
「シンは今すぐにでも、騎士団に欲しいな、どう思う?エノン」
あ、二人の会話が聞こえる!
「シンは料理好きの、お掃除好きの、子供好き、だよ。騎士団には向いていない」
「では、明季ならどうだ?」
え?私!?
「うちが思うに、明季くんは、家族が好きで、獣人族好きで、ゴブリン好きで、エノン好きだよ。騎士団には渡さない」
「……自分で言うか?普通」
「プロポーズ、保留中」
「マジかぁ?あいつ、歳いくつだ!?」
ここで、ちょっと復活した。
エノンの前だ。
格好付ける必要はないけど。
心配させたくない。
俯いて歩いては駄目だ。
前を向くと、視線が合った。
ニトお父さんだ。
あ、今は違うけど。
俄然、力が漲ってきた。
「シュート家・明季」
取敢えず、名乗る。
「槍を使うのか?」
あ、この人、ゴブリンの朱槍を知っている!?
取敢えず、無視。
青色の柱を前に、まず、深呼吸。
口から、ヒューッと口笛とも声ともつかぬ音が漏れ出る。
その時、変化が起こった。
半透明の青い柱が、発光したのだ!
え?青色に光っている!?
呼吸法を変え、口笛の音程を変えてみる。
その音程に合わせて、発光色が変る柱。
青から緑へ、緑から黄色へ。
うわっ綺麗!
どんな仕組み?
更に音程を変え、強弱をつけると、即反応し、発光の光度が変る。
口笛ではなく、呼吸法に反応しているみたいだ。
その発光の度合いが、音ゲーを思わせる。
いや、これ、音ゲーだ!
私は周りのことなど忘れて、熱中し始める。
腹式呼吸でハミングをすると、仄かな発光が、輝きに変った!
ちょーしこいた私は、声を出してみた。
まあ、要は歌い出したのだ
!
他の2本の柱も光り出した!?
周囲のざわめきも、試験管の制止の声も聞こえない。
歌い出したのは、まどかの持ち歌。
アイドルをしていた、まどかは、いくつか歌を持っていた。
その中で特にお気に入りの曲。
大好きなボカロPさんに頼んで、まどか用に作ってもらった曲だ。
直談判し、お願いし、作ってもらった曲。
まどか、ゴキゲンの自慢の一曲。
いつもニコニコして歌っていたなぁ。
3本の柱は嬉しそうに光り、点滅し、輝く。
ああ、この3本も、嬉しいのかな?散々叩かれていたし。
判定は大変なお仕事だ。
間違えられないし、責任重大。
清掃員さんの教えが、過ぎる。
物は大事に扱いなさい。
物だけではなく、あなたに繋がるモノ、全てを大事に、感謝して扱いなさい、そう言っていたなぁ。
忘れてしまうんだよね、清掃員さんの言葉。
そんなの無理だ!私はよく、そう言っていた。
私が、大事に扱ってもらった記憶が無いからだ。
この3本の柱、受験生に感謝されているのだろうか?
落ちた者からは、恨まれるだろうなぁ。
で、合格した者はこの柱に感謝するだろうか?しないだろうなぁ。
なぜか、気持ちに怒りが混じった。
全力で歌い出す私。
歌が歌い終わると、3本の柱は赤く輝き、その光は更に輝きを増し、辺りはルビーの世界みたいに紅に染まった。
紅色は、赤紫になり、朝焼けを思わせる綺麗な光りが、辺りを包む。
そして、その朝焼けの世界はゆっくりと収縮し、柱と共に消えた。
「……」
やっちまった?
私、何をしたの?
赤くはなったみたいだけど?
消えちゃったよね?柱。
合格?不合格?
ぎぎぎぎっと首を回し、試験官を見る。
あ、固まっている。
周囲を見回す。
ぎぎぎぎっと首を回して。
みんな、ポカーンとしている。
どうしたモノか。
再び試験官を見る。
「あの、どうでしょう?不合格ですか?」
歌っただけだし。
「む、昔、吟遊詩人が歌って光らせた、という記録がある」
どのくらい昔なのだろう。それで不合格の人達、納得するかしら?
「柱は赤く光った。合格である」
よ、よかった!
「異議ありっ!」
……なんですと?
「歌っただけではないか!俺が納めた剣技は、そいつのヘタな歌より、下と言うことか!」
はい、おっしゃるとおり。
でも、ジャッジは私ではありません。
私を睨んでも、恨んでもいけませんよ?
周囲がざわめきだした。
次回配達は 2023/03/13 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 筆記試験はどうなるの? です。




