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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
一章

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24/406

【第23話】 邂逅夢

 眠っている?


 起きている?


 半分起きている、が正確な感覚であろうか。


 そんな状態がふわふわと続く。

 ぐいっ、と何かに摑まれ、引っ張られる。


 わっ!闇の中を高速で移動しているみたいだ!


 ふっと意識の焦点が合うと、目の前にゴブリンのお爺さんと、綺麗なお姉さんゴブリンが二人で将棋をしていた。


なんで将棋?混乱する私。


 周りを見ると、大きな池があり松や紅葉などが綺麗に配置されている。


 ゴミ一つ無い清掃された風景が広がる。


 あ、これ日本庭園だ!ここどこ?


 混乱は大混乱になる。


 池には鯉や亀がゆったりと寛いでおり、空は突き抜けるような青空だ。正面には富士山を模した山が作ってあり、松の木が雲を思わせるように配置されている。

 なにここ?生前の記憶?こんな庭園見たことあったかしら?


 あれ?私、亜紀だ!ゴブリンじゃない!

 見慣れた手、見慣れた足だ!


 ……。


 眼鏡は?


 眼鏡は無いけど目が見える!


 私はゆっくりと手を頭に伸ばした。


 !


 か、髪がある!?

 え?引っ張ると痛い!


 なんだこれ?あ、これ夢だ!それも超リアルな!違うかな?


 自覚夢ってやつか?


挿絵(By みてみん)


「おしい、これは確かに夢だが、邂逅夢というやつじゃ」白いお髭がとても長い、お爺さんゴブリンが言う。威厳に満ちたしっかりした声だ。


 邂逅夢?


 聞いたこともないぞ!?


「そう、私達はあなたに伝承された記憶の住人。あなたの言葉で言うと、残留思念かしら」パチリと駒を指しながらお姉さんが言う。

「わしら、代々の思い、念は、更に多くの記憶に埋もれ、消えてしまうと思っていた。だが、お主に記憶が移った瞬間、わしら二人に統合された」


「私の脳内住人?」


「そんなところだ」


「私が脳内シミュレーションするとき、手伝ってくれて、判定してくれる存在?」


「そうよ」


「あたりじゃ」パチリと今度はお爺さんが駒を指す。


「これまで、思いを残しながら死んでいった者達。魔族に捕まって人族の研究所で酷い目に遭う、短い寿命、自分の意思さえも縛られ、逃れられない苦しみ、いいことなんて、これっぽっちもなし、酷い一生よ。なによ、この人生。知らない土地に連れてこられて、孤島に封印されるように幽閉されて、そんな思いが蓄積され種になった。この種は芽が出ることなく、記憶の湖に沈んでいく、はずだったんだけど、玲門があなたに記憶を移した瞬間、目覚めた」


「ワシらは子供や孫、子孫が心配での、思いは募る一方じゃ。このままでは皆、無残に死んでしまう、不憫でのう」

 

 お爺ちゃんは心配性?でもこんな状況じゃ心配するのは当然か?


「まさか、異界の記憶を持つ者の脳内で、目覚めるとは思はなんだ」


「目覚めたからには、何らかのアドバイスをしてあげたいの、彼らに。勿論あなたにも」


「そこで相談じゃ、ワシらの遙か昔から続く記憶、知識、この経験値を全てお前さんにやる」


「そのかわり、彼らを手助けしてほしいの、どう?」


「酷い未来しか見えぬのだ、手を貸してくれ」

 

 酷い一生か、まどかや田崎さん達に会えた私の一生は、少しは報われていたのかな。遠い世界にいる思い出の人達。


「正直に話すと、残留思念とは聞こえはいいけど、言い方変えれば、私達はこの世に執着し未練の塊になっている怨霊みたいなものよ。子孫が心配で、子孫に執着している……」


「怨霊か……怖いな、でも手助けでいいの?」


「ああ、手助けで十分じゃ。死に繋がるひどい、いじめに遭っている彼らを手助けしてくれないか?一言、声を掛けるだけでもいいのじゃ」


 いじめか、そう言われると断れないな。私だって人を、世界を恨み、滅ぼそうと画策していたしね。


「いいよ、フォローはお願いね」


「わかった、夢の中でしか会えないが、わしらの経験、知識、全てをお前に譲る。アドバイスしよう」


「夢の中……お話も?」


「ああ、目覚めているときは雑念が多くて会話は多分無理じゃ。お主の魔力や精神がレベルアップすれば別じゃがの」


 さて、約束はしたが、これって怨霊が憑依するってことかしら?それとも守護霊的存在になるのかしら?


「私は二人をなんと呼べばいいのかしら?」


「ワシはローローじゃ」


「私はネーネーと呼んでください」


「目覚めると、ワシらのことは半分も覚えておらんじゃろうな。じゃが潜在意識は覚えておる。心の声に耳を傾けろ、忘れるなよ……」

 

 返事をしようと、口を開けた瞬間、場面がかわった。


「!」


 真っ暗である。


「え?」


 落ちているのか、上っているのか、分からない。でも移動の感覚はある。

 

 これ、この感覚以前どこかで……どこだっけ?


 あ、怖くなってきた。


 感覚はだんだんと鋭くなり、私は悲鳴を上げた。


「ま、まどかあああっ!たさきさあああん!お、お兄ちゃあああん!」


 どのくらい眠ったのであろうか?篝火は煌々としているが、話し声は聞こえず、見張りのゴブリン以外は皆眠っているみたいだ。


 このゴツい燭台はドワーフさん達から借りたモノだ。非常に重く、扱いづらいが耐久性はとんでもなくありそうだ。


 あ、見張りのゴブリンさんが山の方に向った。トイレかしらん?


 リリ、リリ、虫の音が遠く近くに聞こえる。村を失ったゴブリン達を慰めているようだ。怪我をしたゴブリン達はどうなったのだろう?ちゃんと治療できたのかな?


 視線を感じ、目を動かすと、槍の戦士さんと目が合った。


 おばばさまの護衛のゴブリン。あまりいい印象はない。 


 私の周りにはお母さん、レイモンお姉さんと美観お姉さん、お兄ちゃん、据わったまま寝ているお父さん、風の戦士コロさんに、おばばさまがいた。皆眠っているように見えるが?コロさんは起きている?かな?


「ゴブ?起きたのか」


 そう聞いたのはもう一人の槍の戦士さんだ。


「少し、話をいいかゴブ」


「……」


 さて、どんな話なのだろう。


次回投稿は2022/07/02を予定しています。

サブタイトルは 戦士の心得と槍使い です。


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