【第27話】 あ、試験。
おはようございます。
朝刊です。
「ここは任せろ、取敢えずあの5人、季羅に連絡を!傭兵団と北のゴブリンが面倒を見る。場所は東の砦だ。あそこなら安全だ」
コロ叔父さんがそれぞれに指示を出している。
場所は長さんの足下。
どすん、どすん、一歩一歩、踏締めるように歩く足音が、近づいてくる。
「よう、明季!怪我していないか?おねーちゃん、心配だぞ!まさかドラゴンを相手にしているとはなぁ」
「アイお姉ちゃん!」
リラちゃんをしっかりと抱っこしている。
「アイ、その歩き方、危ないよ!」
「あんだよ、エノン、これが一番いいんだよ!慎重で!こけたら大変だろ?」
まあ、リラちゃん楽しそうだからいいけど。
「もう、先に行ったぜ?お前いいのか?私は、お前とお話しできて、嬉しいけどサ」
「なにかな?アイお姉ちゃん?」
「シン姉だよ」
「?」
「闘神しゃま、試験」
さーっと血の引く音が聞こえた。
「あ、試験」
おおおおおおおねぇちゃん!ずるい!自分だけ試験会場に行ったの!?
学校に行ったの!王都目指したのっ!酷いよおおおおおおっ!
なんで一言おおおおっ!
「アランお兄ちゃんはどこ?」
「ここだが?」
「え?お、お兄ちゃん?」
ボロボロである。
「まあ、脚が速い分、俺は囮役が多くてね」
「だ、大丈夫なの?」
「お前ほどではないよ。後、暫くすると回復する。シン姉、念話で、伝えていたぜ?何度も、何度も」
聞いていないよぉ!いつのお話!
チラリとアイお姉ちゃんを見る。
「明季さあ、なんか、ムーンサルト、どうだったけ、とか波動の拳?とか昇り龍の拳とか、ブツブツ言ってたじゃん、なんだよあれ?シン姉、何度も念話で、話し掛けていたよ?」
あ、おわた。
「逃げ出したんだって?なら仕方ないか?で、どうするんだよ?」
いや、確かに、逃げましたよ?行きたくないと言いましたよ、が、言いはしましたが……あ、泣きそう、涙でそう……。
この脚じゃ走れない!王都は見えるが、私、ここまでなの?
アランお兄ちゃんも、走れそうにない。
「一緒に東の砦、行くか?もう間に合わないみたいだし」
「……う、うう、で、でも、な、名前、覚えたし、みん、みんな、親切に教え、教えてくれたし……うぐっ」
「な、何だよ!試験、受けたかったのかよ!」
こくこく。
「だ、だって、ドラ、ドラゴン強いし、ほ、ほっとけないし、女の人、か、可哀想だったし、ダ、ダランくんの悔しさ、さや、悲しさ、こ、心にひ、響いたし、わた、私、じ、自分のできるこ、こと……いっしょう、一生懸……命……」
(まだ間に合うかも知れん!)
え?
「諦めるな!摑まれ!リュート、行ってくる」
「はい!いってらっしゃい!」
えっ?
突然舞い降りた赤髪の騎士は、私を掠うように抱くと、大空へ飛び立った。
「きゃっ!」
うわ!思わず声が出た!
女の子みたいな声!いや、女の子なんだけど、こんな声、私からでも出るんだ。
最近よく、きゃっきゃっ言っているような気がする。
あ、遙か地上ではアイお姉ちゃんやリラちゃんが、手を振っている。
リュートお母さんも、ア・ダウ先生も、他の学生さん達も!
あれ?砂煙が?
誰か、王都を目指して、全力疾走している?
あ、エノンだ。
風を切り、凄いスピードで空を駆けるペガサス。
……やっぱ、お父さん……………………格好いい。
背景に、お花が見えるくらい格好いい!いいなぁリュートお母さん。
が、心配事がある。
こんなに密着して、ニトお父さんに軽く摑まっているけど……私、臭いよね?
血と汗でどろどろ。
ニトお父さん、私臭くない?臭いよね?
きっと私、酷い臭いだ。
それでなくても、獣人族、体臭濃いのに……。
いや、今は、お父さんではないけど、臭いとか言わないでね?お願いっ!
王都がぐんぐん近くなる!
上空から見る王都はとても綺麗で、大きかった。
そして、ペガサスは学校の校庭に舞い降りた。
お、おおおお、おとうさあああああんっ!やーめーてぇぇぇー!
め、めだちすぎですうううううっ!
試験会場、数百人の目が私達を射貫く。
勿論、私はここでも泣きそうになった。
血と汗でどろどろ、服はぼろぼろ。
洗濯機があったら飛び込みたい。
「明季!こっちだ!急げ!」
え?
誰?
あ!おおお、おねちゃん!シンお姉ちゃん!
すっ、と無言でニトお父さんは行動した。
私をお姫様抱っこし、コツッ、と靴音を立て、ペガサスから降りる。
「受付が終わったら、戻ってきなさい」
「は、はいっ!あの、あのっ!」
「礼は後でいい、急ぎなさい」
「はいっ!」
どこ?どこ、受付どこ!?
えっ?
シ、シンお姉ちゃん?綺麗?え?戦闘、後なのに??
せ、石鹸の匂い!?
なんで!?
「受付はこっちだ!名前を!」
ずらりと10名程、着席している。
長いテーブルには何やら文字が?
「どこ?」
「明季、右から3番目!」
あそこか?
「なんだ?獣人族か?臭いな、ここは試験会場だぞ?」
!
目の前の受付が、宣わく。人族の男性だ。先生にしては若いな?学生か?
「文字も読めないのか?よくそれで受験しようと思ったな?」
誰だこいつ?
「時間はギリギリだし、これだから北の者達は、はぁ」
無視、と。
……今はね。
「明季くん、かな?こちらですよ!」
手を振っている!?
「はい!」
「名前をどうぞ」
「シュート家の明季です」
「はい、チェック、と。あなたで最後ですよ、よかったですね、間に合って」
え?
チェックと共に鐘が鳴り響く。
「終了!受け付け終了!これより実技試験に移ります!繰り返します!受付は……」
アナウンスが響く。
「ほら、ぎりぎりセーフ。明季くん、あなたに精霊の導きがあらんことを」
こ、このお姉さん、やさしいっ!
あそこのヤローと、ぜんっぜん違う!
「あ、ありがとうございます!」
この人、ホッシーのお姉さん?ホッシーにとても似た匂いがする!
お顔もかわいくて(二重まぶたの、長々睫!)ホッシーにそっくり!
後でホッシーに聞いてみよう!
こうして私は、無事受付を終え、試験に挑むことになった。
次回配達は 2023/03/10 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは 実技試験、でもその前に です。




