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The Lily 前世の記憶は邪魔である  作者: MAYAKO
三章

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236/406

【第26話】 唸る鉄拳!

久々の夕刊です。

 首から角に光が走り、ブレス攻撃が始まる。


 ガコン、と重い音を立て、背中から外れる4本の大砲。


 あ、いい判断!あの大砲装備で接近戦なんて無理!

 大音響と共に大地にめり込む大砲4門。


 身軽にはなったようだが、ブレスは長さんに命中する。


 バチバチと音を立て、長さんの表面を流れるドラゴンのブレス。


 あれ?効果なし?


 平然と距離を詰める長さん。

 驚を隠せない、黒いドラゴン。


 長さんは、その長い腕を振り回し、動きの速いドラゴンを捕らえようとする。


 が、ドラゴンには擦りもしない。


 無理だ、この黒いドラゴンは動きが速い!長さんの攻撃は全て当たらない。

 鉄拳は唸るが、全て空振りだ!


 長さんの重量なら、当たれば凄いダメージなのだが。

 指示を出しているのはン・キング?

 それとも自己判断?


 もうちょっと頑張って!あと少し!


 長い腕を生かしたパンチは、全て空を切る。

 が、ドラゴンの攻撃も長さんには効果なしである。


 その鋭い爪も、ブレスも効かないのだ。


 今のうちに、皆、少しでも遠くへ逃げて!


 よしっ!接続、設定できたっ!


 私とスーパーゴーレムは繋がりがある。

 これを、なんとか利用できないか、と考えたのだ。

 長さんに音声入力できるなら、コマンド入力もできるのでは?と。


「エノンッ!今から瞑想する、周囲警戒!」


「め、瞑想!?わ、わかった!誰にも邪魔させないね!」


 座り込み、ステータス画面に集中する。


 エアーで指が動き出す。


 傍から見たら、何しているか分からないだろうなぁ。


 ガクン、と、長さんが止まる。


 長さん、動かすよ!


「ウッス、マス・ター」


 ヒューン、ゴゴゴゴゴゴゴゴンゴンゴンゴンゴンゴンッ!


 再起動音が響き渡る。

 軽く振動する周囲。


 長さんの状況が、ステータス画面に表示される。


 HP、ヒットポイントは、ほぼMAX?

 黒いドラゴンの物理攻撃も、ブレス攻撃も無効!?王さま、凄いの作っている!


 だけど、魔力が少ない。


 短期決戦だ、長引けば長さんは魔力切れで動かなくなる!


 頭部のアイセンサーが青からチカチカと点滅し、怒りの赤に変る。


 ステータス画面でのコントローラーが、まるで、手元にあるかのように動き出す!


 まず軽くパンチ。


 ぽちっ、とP。


 ひゅん。


 長さんが動く。


 やったああああああっ動いたっ!


 反応いい!


 でも鉄拳は、当たらない。


 次、キック!


 ぽちつ、とK。


 ブン!巨大な脚が動く。勿論、擦りもしない。


 では、右ストレート、に見せかけて!


 フェイント!

 溜め、左フック!


 ばちこーんと、見事に当たる。


 大きくよろめく黒いドラゴン。


 明らかに動揺しているのが、見て取れる。

 先程の動きと、ぜんぜん違うからだ。


 よし、掴めた!間合いもよし!


 いくぞおおおおおおおおおおおおおおおっ!


P-PK-PPK-PP-PK-PPPK-KK-KP-←←P-P-KK-KK-↓KG-↙KG-P-PK-P-↗KGPPK-P-K-PPK-KK-↗PKG-K-PPK-PPK-P-K-PPPK……


 ボタンに連動し、およそ巨大ゴーレムとは思えない動きをする長さん。

 長距離支援兵器とは?


P-K-P-K-PP-PPPK……怒りを込めてコマンド入力をする私。ダークエルフ、世界管理と言う名の支配、そこまでの時間と労力があるなら、世の中よくしろよ!悪くしてどうする!苦しめてどうする!あああ、腹立つ!怒り心頭!優勝劣敗でいいのか?それだけじゃないだろう!……P-K-P-K-PP-PPPK-K-P-K-PP-PP-PPPK!


 ドオオオオン!唸る大地。


 鱗を撒き散らし、ダウンする黒いドラゴン。

 それでも起き上がり、ブレスを撒き散らし、向ってくる。


 ならば、これで!


 →↓↘P!


 ドオオオオンッ


 轟音と共に空中に吹飛ばされる黒いドラゴン。

 そして大地に沈む。


 傷だらけだった黒いドラゴン。


 倒しても全然嬉しくない、悔しさと、怒りが込み上げる!

(でもコマンド入力は久々で萌えた!いや燃えた!)


「ゴブ!今だ!トドメを!ゴブゴブ!」


 歴戦の北のゴブリン達が、倒れた黒いドラゴンを囲む。


 群がるな!


 ドオオン、と霊音が響く。


「ゴビッ!」


「ゴブッ!?」


 私の居所を魔力感知したのか、北のゴブリン達が集まって来る。


「あの黒いドラゴンは、もう魔力還元する。トドメを刺すより、刺さっている槍や矢、剣を抜いてくれないか?」


「ゴブ?」


「あのままの姿で、死んでほしくない。私の我儘だ」


「ゴブゴブ、分かったゴブ、ホルダー阿騎。だが、危険と判断したら、トドメを刺すゴブ」


「お願いする」


 魔力還元が始まる黒いドラゴン。

 小さな光る粒がその身体から立ち上り始める。


 黒いドラゴンの周りに集まる、北のゴブリン達。


「ゴブ、矢、槍、剣を抜くぞ、いいかゴブゴブ?」


 黒いドラゴンは倒れたまま、微動だにしない。


(死に行くお前だ、痛みは感じないだろう、我ら主の命、武器を抜けとの仰せだ)


 次々と抜かれていく槍、矢。


 抜かれた武器はボロボロと崩れていく。


(これは……呪物か?よくもまぁ、こんな物、刺さったまま戦えたな?)


 独眼がうっすらと開く。

 あ、目が合った!


(もらった命、返してやる。ただし、記憶は貰う。この女、愛情の記憶が心地よい。憎悪も悲しみも全て頂く)


 記憶?思い出を皆持っていくの?


(鈍いヤツだ、簡易転生をしてやる。呪物を抜いた礼だ……)


 !


(……)


 何を言っているの?

 あとの声は聞き取れなかった。


 黒いドラゴンは綺麗な魔石と、小さな女の子、そして龍の鱗を大量に残して、消えていった。


 あ、長さんの動きが?


 ガコン!


 止まった!?


 魔力が尽きた?活動限界だ。

 フルパワーでの活動、それにここは契約外の土地、エネルギーの供給が自然回復だけだ。


 長さんは跪き、そのまま停止する。


 次々に装甲が開き、放熱を開始する。


 ん?気がつくと、私が瞑想していた地面には魔法陣が形成されていた。

 ああ、これでアクセスしていたのか。


 周囲に北のゴブリン、学生さん、騎士達が集まり始める。


次回配達は 2023/03/09 朝7時頃の予定です。

サブタイトルは あ、試験 です。

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