【第26話】 唸る鉄拳!
久々の夕刊です。
首から角に光が走り、ブレス攻撃が始まる。
ガコン、と重い音を立て、背中から外れる4本の大砲。
あ、いい判断!あの大砲装備で接近戦なんて無理!
大音響と共に大地にめり込む大砲4門。
身軽にはなったようだが、ブレスは長さんに命中する。
バチバチと音を立て、長さんの表面を流れるドラゴンのブレス。
あれ?効果なし?
平然と距離を詰める長さん。
驚を隠せない、黒いドラゴン。
長さんは、その長い腕を振り回し、動きの速いドラゴンを捕らえようとする。
が、ドラゴンには擦りもしない。
無理だ、この黒いドラゴンは動きが速い!長さんの攻撃は全て当たらない。
鉄拳は唸るが、全て空振りだ!
長さんの重量なら、当たれば凄いダメージなのだが。
指示を出しているのはン・キング?
それとも自己判断?
もうちょっと頑張って!あと少し!
長い腕を生かしたパンチは、全て空を切る。
が、ドラゴンの攻撃も長さんには効果なしである。
その鋭い爪も、ブレスも効かないのだ。
今のうちに、皆、少しでも遠くへ逃げて!
よしっ!接続、設定できたっ!
私とスーパーゴーレムは繋がりがある。
これを、なんとか利用できないか、と考えたのだ。
長さんに音声入力できるなら、コマンド入力もできるのでは?と。
「エノンッ!今から瞑想する、周囲警戒!」
「め、瞑想!?わ、わかった!誰にも邪魔させないね!」
座り込み、ステータス画面に集中する。
エアーで指が動き出す。
傍から見たら、何しているか分からないだろうなぁ。
ガクン、と、長さんが止まる。
長さん、動かすよ!
「ウッス、マス・ター」
ヒューン、ゴゴゴゴゴゴゴゴンゴンゴンゴンゴンゴンッ!
再起動音が響き渡る。
軽く振動する周囲。
長さんの状況が、ステータス画面に表示される。
HP、ヒットポイントは、ほぼMAX?
黒いドラゴンの物理攻撃も、ブレス攻撃も無効!?王さま、凄いの作っている!
だけど、魔力が少ない。
短期決戦だ、長引けば長さんは魔力切れで動かなくなる!
頭部のアイセンサーが青からチカチカと点滅し、怒りの赤に変る。
ステータス画面でのコントローラーが、まるで、手元にあるかのように動き出す!
まず軽くパンチ。
ぽちっ、とP。
ひゅん。
長さんが動く。
やったああああああっ動いたっ!
反応いい!
でも鉄拳は、当たらない。
次、キック!
ぽちつ、とK。
ブン!巨大な脚が動く。勿論、擦りもしない。
では、右ストレート、に見せかけて!
フェイント!
溜め、左フック!
ばちこーんと、見事に当たる。
大きくよろめく黒いドラゴン。
明らかに動揺しているのが、見て取れる。
先程の動きと、ぜんぜん違うからだ。
よし、掴めた!間合いもよし!
いくぞおおおおおおおおおおおおおおおっ!
P-PK-PPK-PP-PK-PPPK-KK-KP-←←P-P-KK-KK-↓KG-↙KG-P-PK-P-↗KGPPK-P-K-PPK-KK-↗PKG-K-PPK-PPK-P-K-PPPK……
ボタンに連動し、およそ巨大ゴーレムとは思えない動きをする長さん。
長距離支援兵器とは?
P-K-P-K-PP-PPPK……怒りを込めてコマンド入力をする私。ダークエルフ、世界管理と言う名の支配、そこまでの時間と労力があるなら、世の中よくしろよ!悪くしてどうする!苦しめてどうする!あああ、腹立つ!怒り心頭!優勝劣敗でいいのか?それだけじゃないだろう!……P-K-P-K-PP-PPPK-K-P-K-PP-PP-PPPK!
ドオオオオン!唸る大地。
鱗を撒き散らし、ダウンする黒いドラゴン。
それでも起き上がり、ブレスを撒き散らし、向ってくる。
ならば、これで!
→↓↘P!
ドオオオオンッ
轟音と共に空中に吹飛ばされる黒いドラゴン。
そして大地に沈む。
傷だらけだった黒いドラゴン。
倒しても全然嬉しくない、悔しさと、怒りが込み上げる!
(でもコマンド入力は久々で萌えた!いや燃えた!)
「ゴブ!今だ!トドメを!ゴブゴブ!」
歴戦の北のゴブリン達が、倒れた黒いドラゴンを囲む。
群がるな!
ドオオン、と霊音が響く。
「ゴビッ!」
「ゴブッ!?」
私の居所を魔力感知したのか、北のゴブリン達が集まって来る。
「あの黒いドラゴンは、もう魔力還元する。トドメを刺すより、刺さっている槍や矢、剣を抜いてくれないか?」
「ゴブ?」
「あのままの姿で、死んでほしくない。私の我儘だ」
「ゴブゴブ、分かったゴブ、ホルダー阿騎。だが、危険と判断したら、トドメを刺すゴブ」
「お願いする」
魔力還元が始まる黒いドラゴン。
小さな光る粒がその身体から立ち上り始める。
黒いドラゴンの周りに集まる、北のゴブリン達。
「ゴブ、矢、槍、剣を抜くぞ、いいかゴブゴブ?」
黒いドラゴンは倒れたまま、微動だにしない。
(死に行くお前だ、痛みは感じないだろう、我ら主の命、武器を抜けとの仰せだ)
次々と抜かれていく槍、矢。
抜かれた武器はボロボロと崩れていく。
(これは……呪物か?よくもまぁ、こんな物、刺さったまま戦えたな?)
独眼がうっすらと開く。
あ、目が合った!
(もらった命、返してやる。ただし、記憶は貰う。この女、愛情の記憶が心地よい。憎悪も悲しみも全て頂く)
記憶?思い出を皆持っていくの?
(鈍いヤツだ、簡易転生をしてやる。呪物を抜いた礼だ……)
!
(……)
何を言っているの?
あとの声は聞き取れなかった。
黒いドラゴンは綺麗な魔石と、小さな女の子、そして龍の鱗を大量に残して、消えていった。
あ、長さんの動きが?
ガコン!
止まった!?
魔力が尽きた?活動限界だ。
フルパワーでの活動、それにここは契約外の土地、エネルギーの供給が自然回復だけだ。
長さんは跪き、そのまま停止する。
次々に装甲が開き、放熱を開始する。
ん?気がつくと、私が瞑想していた地面には魔法陣が形成されていた。
ああ、これでアクセスしていたのか。
周囲に北のゴブリン、学生さん、騎士達が集まり始める。
次回配達は 2023/03/09 朝7時頃の予定です。
サブタイトルは あ、試験 です。




